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検察審査会を国会に置き、国会議員をもって組織することを定める法案について

起訴独占主義と起訴便宜主義という言葉をご存じでしょうか?もしご存じでない方は、この機会に是非とも知っていただきたいと思います。

起訴独占主義(コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説)

刑事訴訟において,私人の起訴を認めず,国家機関,ことに検察官だけにその権限を認める制度 (刑事訴訟法 247) 。全国的に一体をなす検察官が訴追機関となることによって,起訴・不起訴の判断が公正かつ統一的なものになるという長所がある。

人が有罪であるか無罪であるかを裁く刑事裁判をおこすことができるのは検察官だけである、というのが起訴独占主義です。

起訴便宜主義(コトバンク デジタル大辞泉の解説)

検察官が事件を起訴するかどうかを判断する際に、訴追を必要としないときは不起訴にすることを認める原則。

刑事裁判をおこすかどうかは、検察官の裁量による、というのが起訴便宜主義です。

極端な例ですが、ある者による凶悪な犯罪が明らかであるとしても、検察官が刑事裁判をおこさなければ、その者は罪に問われなくてすむ、ということです。

先日、↓のような記事を書きました。

その際に、日本の検察制度については色々と問題があると指摘しました。日本の検察制度の問題は上記の起訴独占主義と起訴便宜主義がその背景にあると思います。

菅原前経済産業大臣が起訴猶予になった際に倉山満さんが書いていた記事を改めて読み直してみます。

菅原前経産大臣起訴猶予に思う 倉山満

検察は仮に犯罪の容疑が濃厚でも起訴をしない権限があるが(起訴便宜主義)、これでは検察が好き勝手にできてしまう。

この部分にこそ民主的統制が必要だが、検察審査会の機能を議会に持たせてはと思うのだが、今の安倍内閣は政権に持たせようとしている。準司法機関である検察を行政権である政権が統制するのは、権力分立の観点から問題だと思うが。

現在、検察審査会(※)は存在しているものの、国民の中からくじで選ばれたものから構成されていることもあり、あまり機能しているとはいいがたい状況であると思います。そこで、この機能を議会(国会)に持たせる、つまり、国民から選ばれた国会議員を検察審査会の構成員とする、というのは良い案ではないかと思いました。

先日、賭けマージャンをした黒川弘務氏は不起訴となったことがニュースとなりましたが、これを例とすると(ふさわしい例であるかどうかは置いておいて)、この不起訴に反対をする国会議員が検察審査会を構成することで、改めて検察官に起訴させる、ような感じです。

これについては法案作成を検討してみるのは面白いと思い、法制局に相談しました。

検察審査会とは 三島市

検察審査会とは、選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、一般の国民を代表して、検察官が被疑者(犯人と目される者)を裁判にかけなかったこと(不起訴処分)のよしあしを審査するのが主な仕事です。

検察審査員は、非常勤の国家公務員(裁判所職員)で、任期は6か月です。

この検察審査会の機能を国会に持たせる法案について、参議院法制局から回答をいただきましたので、公表させていただきます。本文内の(資料)についてはリンク先にあります。

検察審査会を国会に置き、国会議員をもって組織することについて

検察審査会を国会に置き、国会議員をもって組織することについて

1 現行の検察審査会法では、検察審査会による起訴相当又は不起訴不当の議決がなされた場合、検察官は当該議決において示された指摘・疑問を踏まえて再検討し、改めて公訴を提起し、又は不起訴処分をすることを法律上の義務としている。また、起訴相当の議決に係る事件について検察官が再度の不起訴処分をしたとき、又は一定期間内に公訴を提起しなかったときは、検察審査会は、改めて審査を行わなければならず、その審査において、改めて起訴相当と認めるときは、起訴議決によって指定弁護士が公訴を提起する制度も採用されている。

2 御依頼は、議院が日本国憲法第 62 条の国政調査権を行使して1のような審査を行うことを想定したものと考えられる。

○日本国憲法
第六十二条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

3 国政調査権については、これを「議院がその権能を有効かつ適切に行うことができるための手段として理解し、調査の及びうる範囲を、憲法によって議院または国会にあたえられた権能の範囲にかぎるものと解する」補充的権能説(補助的権能説)が学説上の通説となっている(資料1)。

4 この補充的権能説から、国政調査権の行使に際しては、「調査権が補助的権能である以上、調査目的は立法および予算審議、行政監督、議員の資格判定・懲罰・規則制定等の内部規律など、議院の憲法上の権能を実効的に行使するためのものでなければならぬし、調査対象・調査方法等についても権力分立原理と国民の権利・自由の側から制約が加えられる」(資料2)とされている。

5 検察権との関係については、「検察権は裁判と相互に密接な関連をもち司法権の独立に類する原理が要請されている」(資料2)、「検察権の行使は、行政権の行使一般とくらべて、相対的に高い程度の独立性が保障される必要がある」(資料3)とされており、具体的には、「起訴・不起訴について検察権の行使に政治的圧力を加えることが目的と考えられるような調査〔略〕などは、違法ないし不当とみるべ」きである(資料2)、「調査の目的の点で、起訴・不起訴について検察権の自主的行使に影響を及ぼす調査〔略〕はゆるされない」(資料3)とされている。なお、「調査権の発動は、国会の多数党によつて左右されることが多い。したがつて、たとえば、選挙違反事件などの関係で不当に反対党圧迫の弊害を誘発するおそれがある」(資料4)との指摘がある。

6 政府も、国政調査権は、「立法権、行政監督権、予算審議権、条約承認権等憲法によつて認められた国会の権限を行使するための補充的権限であるから、その限度においてこれを行使しうるもの」としており、「この権限が認められている趣旨及び三権分立の大原則から生ずる一定の限界が存するもの」としている(資料5答弁書の一及び二)。最高裁判所も補充的権能説を採っている(資料6)。

7 政府は、「議院の国政調査権は、二において述べたような権限〔補充的権限〕であるから、検察審査会の具体的事件に関する権限とは、おのずからその目的、行使の方法等において異なるものがあり、議院が国政調査権として検察審査会と同様の権限〔資料7〕を行使しうるものとは考えない」としている(資料5の答弁書の五)。

8 以上を踏まえると、検察審査会を国会に置き、国会議員をもって組織することについては、憲法上困難ではないか。

参議院法制局からいただいた回答では、検察審査会を国会に置き、国会議員をもって組織することについては、憲法上困難とのことです。

ただし、回答の最初にあるように、議院が日本国憲法第 62 条の国政調査権を行使して1のような審査を行うことを想定したものと考えられる、という前提にとらわれる必要があるのか、という疑問があります。

ひとまず、今回はこの参議院法制局の見解を公表するのみにとどめます。検察官による起訴独占主義と起訴便宜主義による問題を少しでも改善したいと考えています。

検察については、こういった本↓が勉強になると思います。

こちらの動画↓も参考になるかもしれません。

https://youtu.be/gQh1Tz-N6KQ

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