サイトアイコン 参議院議員 浜田聡のブログ

中国海軍の量産に対抗する条件――スピード、量、仕様凍結

今回は中国海軍の量産への警戒という話です。

YouTube動画を2つ紹介します。

要約は以下の通り。

了解です。いただいたスクリプトに基づく要約です。

概要

  • 対象は水上艦(潜水艦・補助艦・小型警備艇は除外)。中国海軍(PLAN)は新型艦の大量建造で主力艦だけでも約300隻規模となり、日本は質の高度化を進めつつも数で大きく劣る。
  • 有事想定では、中国は大型艦で艦隊防空・対艦打撃を行い、フリゲート・コルベット・ミサイル艇で層を厚くし、強力な揚陸艦群で上陸作戦を支援。日本はイージス艦中心の防空・対処、汎用護衛艦とFFMで対潜・対水上、輸送艦で機動展開。

中国海軍(PLAN)

  • 055型(巡洋艦相当):巨大船体に多数VLS、長射程対空・対艦・対潜ミサイルを運用。レーダー探知距離は米イージス超えの可能性。統合電気推進の後期型で将来兵器にも対応余地。Z-18ヘリを2機搭載。既に8隻運用、バッチ2も進行。
  • 052系駆逐艦
    • 052C:初の「中華イージス」。48セルの旧式VLS(コールドランチ)。
    • 052D:主力DDG。汎用(ホットランチ)VLSに刷新、64セル、レーダー強化。2014–22に26隻量産。以後は上位艦(055級)へシフトの見込み。
  • 054A/Bフリゲート:054Aは大量建造・艦隊の要。低空目標に強い対空ミサイルで052系と役割分担。新型054Bは約6000t級に大型化、統合マスト採用で実質DD級へ。
  • 056型コルベット:沿岸域用。短期に70隻超を建造(現役は絞り込み)。
  • 022型ミサイル艇:高速・ステルス性配慮のウェーブピアーサー船体。多数配備で接近阻止に寄与。
  • 揚陸戦力
    • 075型LHD:全通飛行甲板+ウェルドック。ヘリ多数運用。3隻就役、次世代076型(カタパルト装備の“軽空母的”運用)へ移行示唆。
    • 071型LPD:大量輸送に適し、ヘリ・車両・LCACを搭載。8隻就役+建造継続。
    • その他:072/073/074型など多数の輸送艦、世界最大級LCAC(ズブル級相当)も保有。台湾有事での迅速な上陸展開を想定。

海上自衛隊(JMSDF)

  • イージス艦(こんごう型/あたご型/まや型)
    • まや型:最大級の水上戦闘艦。ガスタービン+モーターのハイブリッド推進、CEC(共同交戦能力)で分散射撃が可能。
    • 敵基地攻撃能力整備でトマホーク搭載へ改修開始。イージス・アショア代替の**Aegisシステム搭載艦(ASEV)**2隻も建造予定(巡洋艦相当の扱いに)。
  • 汎用護衛艦
    • むらさめ/たかなみ:第2世代の基幹。たかなみはVLS統合・手砲大型化。
    • あきづき:イージス直衛の防空特化(固定式AESA×4面、32セル)。各護衛隊群に1隻配備。
    • あさひ:対潜強化・ハイブリッド推進。固定式AESAは集中配置だが、広域防空は控えめで自艦防空中心。
    • あさぎり:老朽化も需要増で延命してきたが、2027年度までに全隻除籍予定。
    • もがみ型FFM:2022年就役開始、現6隻。当初22隻計画→12隻に縮小し、新型FFMへ切替(5年で12隻、初号は2028年予定)。
  • ミサイル艇
    • はやぶさ型:現役最速級(ウォータージェット)。SSM-1B搭載。2032年度までに用途廃止見込み(FFM等に役割移管)。
  • 輸送・揚陸
    • おおすみ型LST:LCAC・戦車・車両の輸送。武装は最小限(ファランクス)。水陸機動団支援の改修あり。
    • 新設の海上輸送群に中小型輸送艦やLCAC増強を計画。
    • DDH(ひゅうが型/いずも型)は本動画では詳細割愛。

位置づけと含意(動画の主張)

  • 中国は量(多隻建造)+質(大型化・センサー/ミサイル近代化)を同時に進め、駆逐艦主力は052D、上位は055、随伴に054A/B・056・022で多層防空/対艦を形成。揚陸艦群は台湾・南西方面の上陸作戦能力を急拡大。
  • 日本は高度な防空・対潜能力で質を維持しつつ、トマホーク導入、ASEV、新型FFM、輸送力増強で穴を埋めるが、艦数の劣勢は大きい
  • 結論:抑止・対処には米国・台湾・豪州などとの連携強化が必須。日本単独では数的優位に立つ中国への対抗は難しい、という整理。

もうひとつの動画。

要約は以下の通り。

超要約

中国は南シナ海の「核抑止の聖域化」と第一・第二列島線の突破を同時に進め、遠洋海軍化(空母打撃群・強襲揚陸艦・大型駆逐艦の量産)を加速中。日本は遠隔離島での常続プレゼンスと補給・防空の前段を整え、まず自ら守る姿勢を示すことが同盟維持の前提――経済減速は中国の武力行使判断の“交差点”になり得る。

要点まとめ

1) 中国の海洋進出の現状

  • 「第一/第二列島線」を中国は“自国の進出を阻む線”と捉え、突破を国家目標化。
  • 南シナ海は中国にとって海上輸送路(エネルギー)の要。埋立・軍事拠点化(例:滑走路3000m、ミサイルシェルター、レーダー)で既成事実を積み上げ。
  • ただし、補給依存が大きく戦時維持は脆弱という弱点も。
  • フィリピン等が同じ土俵で競わず、沿岸・対艦ミサイルなどの「非対称戦」で対抗する選択肢。
  • セカンド・トーマス礁での圧力や大量の海上民兵投入は、米の介入判断を測る“閾値テスト”。

2) 南シナ海の戦略的意味=核抑止の“聖域”

  • 原潜を南シナ海に潜ませる「聖域化」で、米本土への二次報復能力を確保。
  • 新型SLBM(例:JL-3)で南シナ海からでも米本土を射程に収め、バスティオン化を強化。

3) 中国海軍の最新動向

  • 第二列島線外での空母活動を日本が初公表。南鳥島・沖ノ鳥島周辺での示威行動も。
  • 第3空母(カタパルト搭載)で艦載機運用効率が飛躍的に向上。J-35(ステルス)、KJ-600(艦載早期警戒機)などの運用が視野。
  • 076型などの強襲揚陸艦、055型大型駆逐艦の秘匿的建造も進む。年数隻規模の量産能力。
  • 目的は「米軍の介入抑止」と「米周辺への通常戦力投射力」獲得。もっとも空母は“金食い虫”で、維持費・人員負担は巨大。

4) 日本への含意(運用面)

  • 南鳥島・沖ノ鳥島の法的位置づけに中国が異議を唱えつつ、軍事力で“既成事実化”を図る動き。
  • 本州からのスクランブルは距離的に非効率。洋上補給・前進展開の基盤(艦艇活用、弾薬・燃料補給の即応態勢)を強化し、常続プレゼンスで抑止力を可視化すべき。
  • 同盟は「まず日本が守る」を示したうえで米の援軍を呼び込む構えが基本。

5) 台湾侵攻シミュレーションの示唆

  • 開戦様相:サイバー/情報戦 → 誘導兵器・ドローン・弾道ミサイル → 上陸。
  • 上陸に成功すれば短期決戦志向で“一気呵成”。米の出方次第で中国の閾値は上下。

6) 経済と戦争判断

  • 2027年目標の軍改革を掲げる一方、中国経済は減速。軍拡が伸びる一方で経済が鈍化する“交差点”が、対外行動を決断するリスク期になり得る(資源・国民耐性・封鎖耐久などが鍵)。

7) 習近平“失脚・健康不安”説

  • うわさレベルの紹介あり(確証なし)。政権内力学の変化が戦略判断に影響しうる、という文脈で触れられた。

重要メッセージ(日本の実務への落とし込み)

  • 離島・外縁域での前方補給・常続監視・即応展開を整えることが抑止の要。
  • 法理(EEZ・島嶼の地位)での反論だけでなく、物理的プレゼンスで「守る意思と能力」を示す必要。
  • 「非対称戦力」(沿岸ミサイル、機動分散、無人資産)の組合わせでコスト効率よく空隙を埋める。
  • 同盟作動のための最初の踏ん張りを日本自身が担う、という覚悟の共有が前提。

いずれの動画においても日本の防衛力を高めることの必要性を感じさせられます。

その上で、同盟国アメリカとの連携が重要なのは当然です。今回、そのアメリカの防衛上の懸念点を提示します。(今回の本題)

救国シンクタンクのレポートを紹介します。※このレポート内容が有意義と感じる方は救国シンクタンクの会員登録をしていただければと思います。

「自主独立のための選択肢」No.215  迷走するアメリカ海軍再建計画

要約は以下の通り。

3行で要点

  • 米海軍の増強が進まない理由は「産業空洞化」だけでなく、海軍側の度重なる設計変更・調達遅延・人材不足にある。
  • 具体例はイタリア設計を採用したコンステレーション級フリゲートで、初号艦は当初2026年→最大2029年へ大幅遅延
  • 中国は「十分性能×大量・低コスト」に傾注。米海軍の高性能志向が量で劣勢を拡大させかねず、日本は同盟国の弱点を直視すべき。

もう少し詳しく(やさしく)

  • 背景
    • 第一次トランプ政権期から米海軍再建を掲げたが、思うように進まず。
    • シアトル近郊にはキトサップ(SLBM搭載戦略原潜など、核の傘の中核)とエバレット(空母・駆逐艦母港)の2基地。現地専門家いわく、米海軍の意思決定には問題がある。
  • 事例:コンステレーション級(FFG-62)
    • 旧LCSの力不足を補う「中堅万能艦」。伊FREMM系の設計をベースに米国内建造、20隻配備計画
    • 仕様:VLS32セル、SeaRAM、NSM対艦、MH-60R/MQ-8C運用、イージスBL10など。
    • 2020年契約→設計確定後に米海軍が大幅な仕様変更を複数回要求。その度に設計や部材をやり直し。
    • 米造船所の部品調達の遅さ熟練工不足も重なり、工程が「年単位」で遅延。初号艦引き渡しは最大3年遅れ見込み。
    • 2023年時点の進捗が**計画35.5%に対し実績3.6%**という報告も。米海軍も公式に遅延を認めている。
  • 本質的な問題点
    • 高性能志向の設計いじりがコスト増・遅延を招く構造。
    • 実戦経験の希薄化(大規模海戦の不在)で、量と速度を優先すべき局面の判断が甘い。
    • 一方の中国は「安価で大量」を重視し、物量差が開くリスク。
  • 重要な示唆(日本向け)
    1. 同盟の限界認識:米の弱点(調達プロセスの硬直・人材不足・高性能偏重)を踏まえ、日米役割分担を現実的に設計。
    2. 量とスピード志向:日本自身の艦艇・無人機・弾薬を「十分性能×大量」で確保。設計凍結後の仕様変更抑制を徹底。
    3. 柔軟な調達:米国ですら伊設計を採用。日本も国産至上主義だけに拘らず、性能・納期・コストで最適解を選ぶ視点を強化。

まとめると――米海軍の停滞は工場の問題だけでなく“設計いじりと調達の病”。中国の量産圧力の前で、**いま必要なのは「ほどよい性能を早く大量に」**という発想転換であり、日本もその前提で備えるべき、という指摘です。

米国海軍の戦力増強策の課題に関して興味深い指摘です。

こういった情報は米国のシンクタンクでも同様の指摘がなされているようです。以下、参考資料。

要点に沿って、米シンクタンクや監督機関の“同趣旨の提言・分析”を挙げます。

  • CSIS:「同盟国(日本・韓国)の造船力を活用して米艦艇の量産を加速すべき」。また、コンステレーション級の3年遅延は米海軍の“要求追加(ゴールドプレート)”でFREMMとの共通性が85%→15%に低下したことが一因と明記。国際協力・モジュラリティ・共同生産の選択肢を具体検討すべきと提言。 (CSIS)
  • GAO(政府監査院):**設計未確定のまま建造開始=設計不安定→重量増→初号艦は2029年(契約比+36か月)**と公式認定。設計評価を「量でなく質」に改め、設計完了前は建造に入るな等を勧告。江崎氏の「設計いじりが遅延を招く」指摘と一致。 (政府監査局)
  • Heritage Foundation:**「新設計への後出し要求をやめる」「今すぐ発注を増やす」「設計確定前に建造するな」「海外MROを拡大」**など、遅延要因の根本を断つ改革を列挙。労働力・インフラ投資と併せ、安定した需要シグナルの発出を主張。 (The Heritage Foundation)
  • RAND:造船産業の空洞化を指摘し、「海軍が実質的に国内造船の唯一の顧客」という脆弱な産業構造を是正する政策の必要性を提言(産業基盤の再建を強調)。 (RAND Corporation)
  • CBO/CRS(議会機関):艦隊拡張は**「火力の分散をより多くの艦へ」**という方向性や、381隻+大規模無人艦の目標を示し、量と分散の重視を後押し。 (国税庁, sgp.fas.org)
  • USNI News(海軍協会)コンステレーション級は3年遅延、FREMMからの逸脱(共通性15%程度)、親設計の改変が遅延要因との当局者発言を報道。 (USNI News)
  • Hudson Institute人材不足・設備老朽化・需要の不安定を是正する立法・規制パッケージや投資の必要性を継続提言(「No Cheap Fixes」「産業基盤再建」)。 (hudson.org)
  • War on the Rocks / CNAS「精密×大量(attritable)」な無人システムをスケールで配備する方向性を主張。高性能少数より、**“十分性能×量・速度”**を優先せよという流れを後押し。 (War on the Rocks, Amazon Web Services, Inc.)

結論:江崎氏の論点――①“設計いじり”の抑制(仕様凍結)②量とスピードの最優先(十分性能×大量/無人活用)③同盟国との協業――は、米主要シンクタンクや監督機関の提言・分析と大筋で一致しています。米側でも同様の問題認識と処方箋が明確に示されています。 (CSIS, 政府監査局, The Heritage Foundation, RAND Corporation, 国税庁)

あと、参考までに、日本政府などもしっかりとした調査資料があります。

日本政府の“公式資料”で、中国海軍(人民解放軍海軍:PLAN)を扱っている代表的なものを、用途別に絞ってご紹介します。

年次の総覧(毎年アップデート)

  • 『防衛白書(令和7年版/2025)』
    日本周辺での中国軍(海・空)の活動や図表を網羅。直近(2024年度~25年春)の空母「遼寧」「山東」を含む動向、航行パターンなどがまとまっています。図表ページでは中国軍・中国海警の動向データも参照可能。 (防衛省, clearing.mod.go.jp)
  • 『外交青書(2025・2024)』外務省
    地域情勢の章で、中国軍の海空活動やロシアとの共同行動に対する評価・懸念を整理。政府としての外交面の位置づけを確認したいときに有用です。 (外務省)

常設の一次情報(随時更新)

  • 統合幕僚監部の「報道発表:中国海軍艦艇の動向」
    どの艦種が、いつ、どの海峡を、どの方向へ通過したか――写真・航跡図つきの“現場ログ”。日々の推移を追う最重要ソースです(例:ルーヤンⅢ級・ダカイ級の対馬海峡通過)。 (防衛省)

研究機関の詳細分析(公式機関によるレポート)

  • 防衛研究所(NIDS)『中国安全保障レポート(2025 ほか)』
    中国軍全体を俯瞰する年報シリーズ。年次テーマは広いですが、海軍の近代化・遠海展開・海外拠点化(ジブチ等)にも言及。※本文冒頭に「政府の公式見解ではない」との但し書きがありますが、防衛省付属の公的研究機関による継続的分析として定評があります。 (nids.mod.go.jp)

関連(海洋秩序・グレーゾーン動向)

  • 海上保安庁『海上保安レポート(2025)』/尖閣特設ページ
    主に中国海警の活動を中心に海上秩序の変化を分析。海軍そのものではありませんが、灰色地帯事態や周辺海域の圧力把握に不可欠です。 (海上保安庁)

上位戦略文書(位置づけ・方針)

  • 『国家安全保障戦略(2022年改定)』『国家防衛戦略』『防衛力整備計画』
    中国の軍事動向(海洋進出を含む)を日本の安全保障上の課題として明記。防衛力の方向性や能力整備(分散・持続性強化、無人アセット等)の根拠文書です。 (内閣官房, 首相官邸ホームページ, 防衛省)

最後に、防衛白書令和6年版のうち、中国海軍に焦点を当てた部分は以下の通り。

防衛白書(令和6〔2024〕年版)— 第I部 第3章 第2節「中国」→【2 軍事】

  • 図表 I-3-2-5「中国の主な海上戦力」
    近代的潜水艦・駆逐艦/フリゲート隻数の推移を並列で可視化。装備増強の“量的実相”を一望できます。p.73
  • (同ページ)空母「福建」パネル
    右側コラムに「福建」就役に関する解説。p.73
  • 図表 I-3-2-9「わが国周辺海空域における最近の中国軍の主な活動(イメージ)」
    日本周辺での艦隊行動・航路の“どこを通って何をしているか”が矢印で分かる地図。海軍運用の実像把握に最適。p.78
  • 図表 I-3-2-11「中国戦闘艦艇・空母の南西諸島および宗谷・津軽海峡周辺での活動公表回数」
    年度別の“公表回数”を棒グラフ化。トレンド把握に便利。本文中の図表参照指示が p.80 に明記(図表掲載は同ブロック)
  • 図表 I-3-2-13「中国戦闘艦艇の対馬海峡通過公表回数」
    海峡通過の回数推移(年度別)。p.81
  • 図表 I-3-2-14「中国軍機の対馬海峡通過公表回数」
    参考まで(空軍)ですが、海軍行動との相関を見る際に有用。p.81

上記は「PDF分割版:第I部 第3章 第2節 中国(R06010302.pdf)」のページ番号です。必要なら該当ページのスクショもあります(p.72–75, 78–82 など)。

実運用ログを当てるとき(補助資料)

  • 統合幕僚監部「報道発表資料(令和6年度 外国海軍艦艇の動向)」
    各トピック(「中国海軍艦艇の動向について」)に航跡図・型級・通峡方向などが掲載。時系列で“その日・その艦”を特定したい時に便利です。目次ページから個別発表へ飛べます。 (防衛省)

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