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茂木敏充衆議院議員 自民党総裁選会見 5つの新規政策 + 批判すべき点

自民党総裁選に出馬表明をした茂木敏充議員の会見を取り上げます。

昨年、2回の参議院本会議での首班指名では、2回とも「茂木敏充」に投票しました。

以下、会見の動画です。

要約は以下の通り。

要旨(ひとことで)

自民党は結党以来の危機にあり、自分が若手登用と大胆な経済・党改革、そして“連立拡大”で政治を前に進める——物価を上回る賃上げの定着と成長投資で、3~5年のマクロ目標を一気に達成する、という宣言。

1. 出馬の理由・危機認識

  • 参院・都議・衆院で連敗し「結党以来最大の危機」。会社に例えれば「業績急落で倒産寸前」。
  • 「2年で再生の道筋」をつける。結果責任を負い「逆風を正面から受け止める」。

2. 政権運営の方針(連立拡大)

  • 個別法案ごとに都度協力を求める運営から転換。
  • 外交安保・エネルギー・憲法など基本政策が一致する政党と新たな連立枠組みを追求。例として日本維新の会、国民民主党を名指し(相手次第であり決め打ちはせず)。
  • 自公体制は基本維持の上で“プラス”の拡大を想定。立憲を排除はしないが「基本政策一致」を重視。

3. 党改革・人事

  • 年功・当選回数主義をやめ、適材適所を徹底。若手・女性を大胆登用。
  • 小泉進次郎・小林史明らを例示(※象徴例であり特定確約ではない)。
  • 広報機能を「本部→党レベル」に格上げし、SNS/ニューメディア対応を強化。
  • 記者会見のオープン化に前向き(幹事長時代も非クラブ記者の参加を認めたと説明)。

4. 経済・物価対策(柱)

(1) 生活支援特別地方交付金(新設)

  • 「従来と一桁違う数兆円規模」を創設。地域の裁量で物価・生活支援を迅速実施。物価を上回る賃上げが定着するまでの時限措置。財源は「税収上振れ等」で当面賄えると説明。

(2) 価格連動の公共価格

  • 国・自治体の事業や保育等の公定価格を物価連動型へ。

(3) 投資主導の成長循環

  • 2,200兆円の家計金融資産、600兆円の企業内部留保を「貯蓄→投資」に。
  • 設備投資(ハード/ソフト)に即時一括償却を認め、投資を加速。
  • 成長産業(AI・半導体・データセンター・グリーン)を地方に集積し、大学・研究機関・スタートアップも近接配置。東京一極集中の是正と地域賃金格差の縮小を狙う。

(4) 労働移動・マッチング強化

  • ハローワークの抜本改革で求人・求職の最適マッチ。現場目線の働き方改革見直し。

(5) マクロ試算(自身の見立て)

  • 実質成長率:**+1.5%**程度の押し上げ
  • 名目賃金:年+3.5%3年で年収+50万円(平均年収500万円超へ)
  • 名目GDP:現610兆円→3年後670兆円、5年後700兆円超
  • 増収は家計支援・優先課題に再投入

5. 税・財政・社会保障

  • 消費税:食品の軽減税率を「8%→0%」に下げる案は比較対象として言及しつつ、減税より賃上げ定着で可処分所得を増やす路線を重視。
  • 基礎控除(“年収の壁”関連):段階的引上げに前向き。ただし7~8兆円規模の財源や高所得層(例:年収2,000万円超)への適用是非などを精査。
  • 財政規律:与党として次世代への責任を強調。
  • 社会保障:効率化の余地を徹底検証し保険料引下げへ。年齢区分より**「負担能力(ability to pay)」**重視へ移行(標準報酬月額の見直しを示唆)。
  • ガソリン税の暫定税率(25.1円):段階的に補助を積み増しつつ廃止へ。来年度税制改正への反映を目指す意向。
  • ジェネリック医薬品:市場1.7兆円に約190社が乱立業界再編で価格低下と供給安定を図る。
  • 政治資金:政策活動費は「廃止済み」。企業・団体献金は公開と透明性を前提に容認。個人献金拡大も課題。

6. 金融・日銀

  • デフレ脱却は近づくが需要主導でない点を課題視。
  • 異次元緩和の段階的正常化は基本方向。個別判断は日銀に委ねる。

7. エネルギー・GX

  • AI/半導体/データ需要で電力需要が急増
  • 安全最優先で原発の再稼働・新増設/建替えに前向き。再エネと組み合わせグリーントランスフォーメーションを推進。電源近接に産業集積という「世界の潮流」を踏まえる。

8. 外交・通商

  • 外交は**「力強さ×包容力」**。価値観は譲らず、グローバル・サウスにも寄り添う秩序形成。
  • 日米関税交渉:まず自動車関税の15%への引下げ合意を確実に履行。さらに下げる余地は経済情勢を見極め、トップ会談で判断。
  • 大阪・都構想:地方分散・防災バックアップの観点から考え方には理解を示し、具体案の提示を見た上で評価。

9. 社会・制度

  • 選択的夫婦別姓:家族の絆や戸籍制度を重視しつつ、世論・司法判断・通称拡大の効果を見極め、議論を深化。
  • 靖国参拝:英霊への敬意・追悼の思いを表明。参拝の是非・方法は就任後に「適切に判断」。
  • 人口減少:短期に止まらない現実を踏まえ、**労働生産性+1%**で労働力減少(年▲0.5%)を相殺可能と試算。中小・サービスのデジタル化で底上げ。外国人依存を極力増やさず対応策を整備。
  • 農政:消費者の安定価格と生産者の採算を両立。10~20年の長期一貫で政策のぶれを抑制。山間地等の多面的機能維持も支援。

10. 党内政治・足場

  • 前回総裁選は不本意な結果。過去1年、議員・地方・経済界・若者と意見交換を重ね、危機認識を強化。
  • 推薦人20人は「確保できる見通し」。
  • 若手・中堅との対話は日常的。重鎮とも距離を置くわけでなく知見は活用。

11. 記者との主な質疑ポイント(抜粋)

  • 物価対策:一律給付よりも「地域裁量の交付金」で機動的に。
  • 連立期限:できるだけ早く。
  • 消費税減税 vs 所得向上:後者を重視。
  • “年収の壁”178万円:段階的引上げに理解、財源・配分の精査前提。
  • 保守層・若年層離れ:支持回復に注力。
  • 政治とカネ:終わりなき改革。既存の是正結果を踏まえ再発防止へ。
  • 会見オープン化:前向き。
  • 人口対策:出生率政策は加速、同時に生産性向上で当面を乗り切る。

12. 位置づけ・特徴

  • 岸田路線を全否定はせず、重点の入れ替えでスピードと交渉力を前面に。
  • “連立拡大”を会見冒頭から打ち出したのが最大の差別化点。
  • 経済は投資加速×地方集積×マッチング改革で賃上げを「定着」させる設計。

このうち、私は5点を評価しつつ、昨年の総裁選で掲げた「増税ゼロ」を引っ込めたこと、交付金などバラマキが目立つことを批判的にとらえます。

以下は、茂木敏充氏の総裁選出馬会見を踏まえた注目すべき5つの政策・提案と、批判的に見るべき論点を整理したまとめです。


注目すべき5つのポイント

1. 設備投資の即時一括償却

  • 概要:企業のハード・ソフト両面の設備投資を「即時一括償却」できる税制優遇。
  • 狙い:企業の投資意欲を高め、生産性向上と賃上げにつなげる。
  • 評価:従来の加速償却をさらに強化する施策で、民間投資主導の成長戦略としてインパクトが大きい。

2. 原発の再稼働・新増設推進

  • 概要:安全性を大前提に、既存原発の再稼働だけでなく新増設にも前向きな方針を明示。
  • 狙い:AI・半導体・データセンターなど電力需要の急増に備え、安定供給とGX(グリーントランスフォーメーション)を両立。
  • 評価:自民党主流派でもここまで明確に「新増設」まで打ち出すのは踏み込みが強く、エネルギー政策の方向性を鮮明にした。

3. 社会保険料引き下げ

  • 概要:「年齢区分から負担能力へ」との考え方で保険料を見直し、保険料の引き下げを検討。
  • 狙い:子育て世代や低所得層など、生活が厳しい層の負担を軽減し、可処分所得を恒常的に押し上げる。
  • 評価:従来の「社会保障費の自然増抑制」路線とは逆方向で、新鮮かつ家計支援として注目度が高い。

4. 若手・女性の積極登用

  • 概要:当選回数に依存しない「真の適材適所」人事を掲げ、若手・女性リーダーを大胆に起用
  • 狙い:自民党内の年功序列・派閥中心人事を打破し、党の刷新を国民に示す。
  • 評価:実現すれば自民党の体質転換を象徴する一大テーマとなる。

5. 記者会見のオープン化

  • 概要:自民党幹部会見を、記者クラブ所属以外の記者やフリーランスも参加できる形で開く方針を明言。
  • 狙い:党運営・情報発信の透明性向上、閉鎖的との批判を受けてきた記者クラブ制度の慣行打破。
  • 評価:自民党の会見慣行を改める提案は珍しく、メディア対応の“開かれた政党”アピールとして新鮮。

批判的に見るべき論点

「増税ゼロ」公約の撤回

昨年の総裁選で茂木氏が掲げた**「増税ゼロ」**は、景気回復を優先する象徴的スローガンだったが、今回の会見では言及がなく、事実上の撤回と受け取れる。

  • 説明不足:政策転換の理由を具体的に示さず、唐突な印象。
  • 政策一貫性への疑問:財政運営の根幹方針を短期間で変えることは、党内外に不信を招く。
  • 選挙戦略的色彩:少数与党化した自民党内で連立拡大を模索する中、野党との協調を優先した現実的対応とも取れるが、有権者への説明責任は免れない。

財政支出の「ばらまき」色

地方への数兆円規模の生活支援特別地方交付金をはじめ、物価高対策や生活支援を地方自治体の裁量に委ねる大規模財政出動が目立った。

  • 構造改革に乏しい:単年度的な給付や補助金頼みで、成長力を高める恒久的政策は限定的。
  • 財源の裏付けが弱い:税収上振れで賄えるとしたが、景気変動次第で財政リスクが高まる可能性。
  • 過去の批判と重なる:自民党政権が繰り返してきた景気対策型「バラマキ」との違いが見えにくい。

総括

今回の会見では
「即時償却」「原発再稼働・新増設」「社会保険料引き下げ」「若手登用」「記者会見オープン化」
という5つの施策・提案が比較的新鮮で注目に値する。

しかし同時に、「増税ゼロ」公約撤回の説明不足と、地方交付金など大規模財政支出に依存する“ばらまき”体質が際立ち、財政規律と構造改革をどう両立させるのかという根本課題は依然として不透明である。
この点を明確にしない限り、政策の一貫性と持続可能性に対する疑問は残るだろう。

総裁選を通じて、日本国民に寄り添った政策議論が展開されることを期待します。

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