今回は何かと問題視される、特別会計について。
高橋洋一さんの動画を紹介します。
要約
1. 特別会計への誤解
- 一般会計88兆円のうち約50兆円が特別会計に流れており、「国会で審議されない」「不透明だ」とのネット上の意見があるが、これは誤り。
- 特別会計も一般会計と同様に国会で審議・決議されており、予算書も公開されている。
2. 特別会計の仕組みと性質
- 特別会計とは、用途が限定された会計で、代表例は年金特別会計や国債整理基金特別会計など。
- 一般会計から特別会計へ資金を移すのは、年金給付や国債償還など目的が明確な支出を管理しやすくするため。
- 特別会計は用途が固定されているため、むしろ資金の流れが分かりやすい。一般会計のように多目的で複雑ではない。
3. 「不透明」との批判に対する反論
- 特別会計の予算書は約1000ページ、一般会計も約1000ページ。両方合わせて約2000ページあり、10cmほどの厚さ。
- 分量が多く読むのが大変なだけであり、「不透明」とは言えない。読めば明確に把握できる。
- ネットで「特別会計は無法地帯」といった批判は、会計知識が不足した恥ずかしい意見である。
4. 財務省の立場と「埋蔵金」
- 特別会計は資金の残高(余剰)が把握しやすく、「埋蔵金」を探すのも簡単。
- 一般会計内でごちゃごちゃ使われるより、特別会計に資金を移す方が透明性は高い。
- ネット上で特別会計を「悪」と断じる意見は、結果的に財務省を楽にしているだけ。
5. AI批判
- AIが「特別会計は透明性が低い」とネットの意見を反映するのも同様に浅い理解であり、会計知識があれば簡単に否定できる。
6. まとめ
- 特別会計は国会審議を経ており、不透明でも無法地帯でもない。
- 用途が明確で資金管理も追いやすく、むしろ財政の透明性に寄与する。
- 問題は「読むか読まないか」であり、会計知識を持たずに「悪」と決めつける批判は的外れ。
ポイント
特別会計は「隠された闇」ではなく、制度として国会決議を経て透明に運営されている。批判する前に予算書(一般・特別計約2000ページ)を読むべき、というのが話者の主張である。
別の動画も紹介します。三橋貴明さんも、高橋洋一さんと概ね同意見です。
要約は以下の通り。
要旨(ひとことで)
「特別会計=闇」という決めつけは誤り。規模が大きく見えるのは“国債の借換”や“勘定間の付け替え”が膨らんでいるからで、実際に裁量的に使える部分はごく一部。中身は公開・国会審議済みで、問題があるなら具体箇所を特定せよ、という主張。
1) 「特別会計」は“特別”ではなく“別会計”
- 名称に惑わされがちだが、趣旨は用途別に管理する会計(例:社会保障、外為、財政投融資、地方交付税、公債関係など)。
- 社会保険料のように税以外の収入を一般会計に混ぜると見通しが悪くなるため、分けて処理している—という整理。
2) 規模が巨大に見える理由(「436兆円」の内訳観)
- 令和6年度ベースの説明として、歳出規模436兆円は大きく見えるが、
- **国債の借換・償還(会計上の付け替え)**が大半を占め、誰かの“実支出”ではない項目で数字が膨張。
- 社会保障給付や交付税、財政投融資繰入なども目的が固いフロー。
- このため、裁量的に「政策で増減しやすい」実質部分は約7.1兆円程度に過ぎない、という説明。
- 7.1兆円の主な中身:
- 雇用保険・労災の事業費、日本年金機構の運営費、エネルギー対策(備蓄・技術開発)、食料安定供給(米麦買入れ等)、空港整備、自動車安全対策、外貨準備の管理 等。
→ ここに**「闇」らしき不透明な使途は見当たらない**という立場。3) 「闇」論の実害と歴史的背景
- 国会審議を経て成立しており、資料も財務省HPですぐ見つかる。分厚くて読まれない→「不透明」と誤解されがち。
- 本当に問題があるなら、部局・事業・金額まで具体化して指摘すべき。総額だけで「400兆円の闇」は雑。
- 歴史的経緯:
- かつて道路特定財源(ガソリン税)が特別会計で約5兆円規模。これが公共事業規模を事実上決める要因に。
- 財務省は公共事業抑制のため、この特定財源を一般会計に取り込みたい思惑が強かった。
- 塩川正十郎・財務相の「おかゆ/すき焼き」比喩など、特別会計叩きの政治的レトリックが広がり、「特別会計=闇」イメージが形成。
- 結果、道路特定財源は一般会計化・暫定税率維持、道路投資は縮小する一方、国民はガソリン税負担を続けるというねじれが発生。
4) 天下り問題と“特別会計の闇”は別次元
- 省庁OBが所管分野の独法・機関へ再就職すること自体を一律に「闇」扱いするのは筋違い。
- 政策の知見を生かす配置は本来の使い道。
- 真に問題視すべきは財務官僚のメディア・金融・シンクタンクへの影響力といった政治・情報面の支配(番組内の主張)。
- いずれにせよ、予算は国会が承認。責任追及をするなら国会議員のチェック機能が論点。
5) 心理バイアスへの警鐘
- 認知的不協和:自説(「400兆の闇」など)が崩れると、都合の良い“闇エピソード”探しに走る。
- セメルヴェイス反射:正論を突きつけられた側が発信者を攻撃しがち。
- 結論を先に決めず、出典(財務省資料)を一次確認せよ、がメッセージ。
6) 結論と提言
- 「特別会計=闇」というフレーズは印象操作。
- 構造理解のポイント:
- 別会計化の合理性(用途別管理)。
- 総額膨張の主因は借換等の会計処理。
- 問題があるなら“具体の箱”と“金額”を示して検証。
- 漠然と叩くと、財務省が“特別会計の一般会計化”を進める口実になり、かえって監視が難しくなる可能性。
- まずは財務省公開資料で内訳を確認し、国会での精査・説明責任を具体論で求めるべき、という提案。
まとめの一言
「“400兆円の闇”というキャッチーな断罪ではなく、勘定ごとの内訳と会計処理の性質を読むことが健全な監視の第一歩。」
高橋洋一さん、三橋貴明さん、両者とも、公開資料をまず見ろ、という主張はまっとうなものと思います。
変な陰謀論に惑わされる前に、この公開資料の存在を念頭においてほしいものです。