今回は兵庫県知事騒動について。YouTuberの香椎なつさんがこれまでの経緯を説明している動画を共有します。
地方自治は民主主義の学校、と言われますが、その意味を実感できる学びの場と考えます。
要約は以下の通り。
この動画は、兵庫県の「文書問題」を
①発端(2021知事選)
②渡瀬県民局長の3月・4月文書
③百条委員会と渡瀬局長・竹内元県議の死
④議会とメディアの動き
⑤2024年知事選での逆転再選
⑥第3者委員会とオールドメディアの問題点という流れで整理し、「何が事実で、どこが印象操作か」を解説しています。
やや長いですが、重要ポイントをできるだけ落とさずにまとめます。
1. なぜ「兵庫の文書問題」は全国に関係あるのか
- 一見すると「兵庫県ローカルのニュース」だが、
実態は「議会と首長の対立」「各会派の背後団体と利害」「メディアと政治の攻防」が絡み合う、どこの自治体でも起こり得る構図だと指摘。- 兵庫で何が起きたかを理解すると、
自分の自治体で起こる(起こり得る)問題にどう向き合うべきかのヒントになる──という問題意識で解説が始まる。
2. 2021年 兵庫県知事選が「全ての出発点」
自民党分裂と「しがらみの構図」
- 60年続いた「副知事がそのまま知事に」という流れを断ち切り、
斎藤元彦氏が初当選。- 最大会派・自民党の中で11人が「増犯(造反)」し、
金澤元副知事ではなく斎藤氏を支持 → 自民が分裂。- 斎藤陣営は、「維新+造反した自民11人」の支援で当選。
その後、造反組の内部でも分裂
- 百条委員会委員長となる奥谷県議、現議長の山口県議など、
もともと斎藤知事を支えた側の一部が、後に「反斎藤」に転じる。- 奥谷県議は
- 同世代なのに知事にあまり頼られなかった不満
- 神戸選挙区の“年長自民県議”から「ほら見ろ、造反なんかするから」と責められた圧力
が反転のきっかけだったとされる。- 山口県議の地盤である「たつの市」は、
5期20年の井戸敏三・前知事の地元「揖保郡新宮町」を含むエリアで、
旧井戸体制と新体制との“地縁的な軋轢”も背景にあると解説。
3. 斎藤知事の就任直後の改革と、OB・官僚側の反発
外郭団体改革と「65歳超OB 56人一斉退職要請」
- 2021年8月に就任後、わずか4か月で「外郭団体をゼロベースで見直す」と宣言。
- 外郭団体に“雨下り”していた65歳超のOB56人に「年度末までに退職してほしい」と要請 → OBの怒りを買う。
- 井戸時代に「西播磨県民局」は重要ポストであり、局長職には井戸氏信頼の人物しか就かないと言われていた。
ここに後の渡瀬県民局長もいた、という文脈が伏線になる。
4. 3月文書・4月文書とは何か(文書問題の中核)
3月文書(3月12日配布)
- 渡瀬県民局長が、職務時間中に県政の「7つの疑惑」をまとめた文書を配布。
これが「3月文書」と呼ばれる。- しかしこの時点では「公益通報制度」は使っておらず、ただ配っただけの文書。
- 渡瀬氏は京大法学部卒で、県内の公益通報窓口の一つを担う立場であり、制度のルールを誰よりも知っていたはずだと指摘。
県側の対応と「公益通報探索問題」の争点
- 3月20日:斎藤知事が3月文書の存在を把握し、誰が書いたのか調査開始。
- 3月下旬:事情聴取を行ったところ、渡瀬氏本人が自ら認める。
- 3月27日:県は「調査が完了するまで退職は保留」と決定。
- 4月4日:渡瀬氏、初めて正式な内部通報(4月文書)を公益通報窓口経由で実施。
- 5月7日:県から渡瀬氏に「停職3か月の懲戒処分」。
- 7月7日:退職・懲戒などを経て渡瀬氏が自死。
動画の主張:
- メディアは「公益通報者を県が探索・事情聴取した」と批判しているが、
3月文書の時点では本人も「公益通報」と認識しておらず制度利用もしていない。- 4月4日以降の正式通報に対しては、異議申し立ての機会がいくらでもあったのに行っていない。
- よって「公益通報者探索禁止違反」というストーリーは、斎藤知事を貶めるための“印象操作だ”という立場。
5. 渡瀬県民局長の「素性」と処分理由
県の処分理由は4本柱だったと整理:
- 3月文書配布(今回の文書問題本体)
- 職員の個人情報への不正アクセス・不正利用
- 業務と無関係な職員の顔写真データを抜き取り、自宅PCに持ち帰って保存。
- 14年間で約200時間の「職務専念義務違反」
- 私用時間の積み重ねとされ、遺族も2025年に給与相当分62万5千円を県へ返還(訴訟を受けて)。
- 過去にも匿名怪文書を複数作成し職員を誹謗中傷していた
- 特定職員(原田職員局長)への長文ハラスメント文書など。
- これが少なくとも3回目で「常習」であったとされる。
動画側の整理:
- 「過去から怪文書をばらまき続けて人を傷つけてきた人物が、今回だけ“正義の公益通報者だ”と言っても説得力がない」
- 本人も“噂レベル”の話をOBなどから集めて書いており、根拠が乏しい。
- したがって彼の告発を“高潔な告発”として扱うのは無理がある、という論調。
6. 渡瀬氏の死と百条委員会
なぜ渡瀬氏は追い込まれたのか(動画の見立て)
- 渡瀬氏は百条委員会で証言する機会を与えられていたが、
彼の「陳述書」を見ると、7項目の疑惑ほぼ全てについて
「いつ誰から聞いたか覚えていない」「OBから聞いた」などと繰り返しており、
客観的根拠を示せない内容だった。- 本人が生きて百条委員会で証言すれば、
「根拠薄弱な怪文書」であることが露呈し、名誉毀損・業務妨害などの責任を問われかねない。- 動画は「だからこそ、議会と反斎藤勢にとって渡瀬氏の死は“都合が良かった”」と厳しく批判。
百条委員会設置までの政治工作
- 2024年6月13日:百条委員会設置を議会が決定。
- その背後に、以下のような動きがあったと紹介:
- 丸尾牧県議らがアンケートを独自実施 → パワハ・贈答品受領を訴える回答を根拠に「調査が必要だ」と主張。
- 立憲系の衆院議員・橋本慧悟氏が百条委設置の申し入れを行い、
立憲系組織や兵庫県民連合に圧力をかけたとされる。- 竹内元県議は2024年4月時点からジャーナリスト今西氏に「文書問題記事を書いてほしい」と依頼し続け、
情報提供を重ねていたことが記事から判明。- 動画の推測:
「橋本慧悟の背後には竹内元県議がいた。知事の首を取ることありきで百条委員会を動かした」とみている。
7. 竹内英明元県議の役割と問題点(動画の評価)
- 竹内氏は渡瀬氏の死後も、「パレードのキックバック疑惑」など一点突破で
斎藤知事の“首を取れる”案件を模索し続けていたと紹介。- 百条委員会での質疑中、
- 商工会連合会専務理事の名前を勝手に出し
- 「ゴルフクラブを渡した」「長期貸与と言い訳するはずだ」といった話を広める
→ しかし実際には専務理事は竹内氏と電話しておらず、後に竹内氏から「訂正はしない代わりに百条委員会に呼ばない」という“取引”をされたと証言。- 動画は、竹内氏の行動を
「正義ではなく、自己の欲望と政治的打算にもとづいたもので、他人に濡れ衣を着せる行為」と断じている。- 2024年11月18日、斎藤知事再選の翌日に議員辞職。
2025年1月19日に自死。- 一部メディアは「ネット中傷から家族を守るため辞職」などのストーリーを流したが、
動画は「精神的に追い込まれて薬も服用していたのは本人であり、自らの行動の意味を理解していた」とする証言も紹介。
8. 百条委員会・アンケート・「パワハラ認定」の問題点
百条委員会での“片寄った参考人選定”
- 3月文書の取り扱いが適切かどうかを聞くための参考人として、
1人目:奥山教授(ジャーナリスト寄り、法律資格なし、3月文書も公益通報だと主張)
2人目:山口明弁護士(同様に違法と強く主張)- 「反対側の見解の弁護士も呼ぼう」という提案が出たが、
多数派が反対し、3人目も「違法だ」とする立場の弁護士を呼んで終わり。
→ 動画は「反対意見を封殺する、中国共産党のようなやり方」と辛辣に批判。パワハラアンケートの設計・運用の問題
- パワハラを「目撃または経験」「聞いた」「噂で聞いた」など4区分で回答させ、
回答を単純に合算して「4割超がパワハラを見聞き」と報じられた。- しかし:
- 当事者と2次・3次情報が混在しており、距離感がまちまち。
- 匿名・複数回答が可能なシステムで、URLを知っていれば何度でも回答できた。
- にもかかわらず、「自分がパワハラ被害者だ」と名乗り出た人はゼロ。
- 第三者委員会は
「実害を訴える被害者0だが、第三者から見てパワハラと言われても仕方がない行為が10件あった」と整理。
これが“10件のパワハ認定”という結論。「パワハラ」と「公益通報」の関係(動画の解釈)
- 現行法では、パワハラやセクハラは基本的に
刑罰・行政罰に直結しない限り、公益通報の対象外(民事で解決すべき領域)。- よって、パワハラ認定=直ちに「公益通報者保護法違反」にはならない、という説明。
- 動画は
「アンチ勢は『パワハラがあった=公益通報者保護法違反』と喧伝しているが、それは法的に誤りだ」と強調。
9. 第三者委員会と「オールドメディア」の構造的問題
第三者委員会の「第三者性」への疑問
- 委員長・藤本氏は、告発対象の一つである故・伊木誠元理事長と、
六甲学院OB会などで長年の関係があった人物。- そうした経歴から「完全な“利害関係ゼロの第三者”とは言い難いのでは」と疑問視。
第三者委員会の制度そのもの
- そもそも「第三者委員会」は日本特有の制度で、
司法のような法的拘束力も独立性も保証されていない。- にもかかわらず、日本のメディアは
「第三者委員会の報告=最終的な真実」のように報じがち。
例:「斎藤知事の告発・逮捕は違法」などと断定的見出しをつける。- 動画はこれを「メディアが“私的な死刑宣告”を下すために使っている装置」とまで批判。
弁護士業界とメディアの“利権的タッグ”として第三者委員会を位置づける。
10. SNS vs オールドメディア、そして「奇跡の兵庫県知事選」
2024年11月17日:逆風下での再選
- 百条委員会・第三者委員会・メディアの集中砲火の中、
斎藤知事は議会の不信任決議を受け「自ら失職 → 出直し選挙」という最も厳しい道を選択。- 立花孝志氏の「2馬力選挙」(当選目的ではなく、情報発信と応援を目的とした立候補)なども加わり、
SNSやYouTubeで百条委員会の実態・県庁内の構図が広く知られていく。- 結果、メディアのネガティブキャンペーンを跳ね返す形で再選。
これは「メディアバッシングを受けた首長が再信を得た非常に稀なケース」と評価。「オールドメディア」という言葉の浸透
- この選挙を契機に、
テレビ・新聞など旧来のマスメディアを「オールドメディア」と呼ぶ言葉が定着し、
2025年の流行語大賞候補にも挙がるほどになった、と紹介。- 動画の総括:
- SNSの情報量と検証力が、既存メディアを上回りつつある。
- 兵庫ではたまたま有権者が踏ん張って結果を変えたが、
構造としては「メディアと一部政治勢力が気に入らない人物を消すのは簡単」という危うさが残る。
11. その後:PR会社の件・百条委員会少数派の“粛清”
- 選挙後も火種は続く:
- 知事選を手伝ったPR会社社長がネットに書いた“裏話”が公選法違反ではないかという攻撃。
- 百条委員会で比較的中立的だった岸口県議・松山県議が「除名」される動き。
特に松山氏は、百条委員会秘密会の情報を立花氏へ渡したと自ら明かしていた。- 彼らはその後「躍動の会」という会派を結成し、
議会内での“少数派・反主流派”として動き続けていると説明。
12. 指摘データ・内部人事・「クーデター」文言の扱い
- 渡瀬氏が残した「クーデター」「革命」などと書かれたメールについて:
- 第三者委員会報告は「単なるメモであり、具体的計画を示す資料ではない」として資料請求も公開もせず。
- 一方で片山元副知事は「クーデター計画を示すような実行計画ファイルもあった」と証言。
- こうした“食い違い”をめぐり、
動画は「都合の悪いデータに蓋をした」と第三者委員会側を批判。
13. 動画の結論:兵庫文書問題=「地方版・森友・加計」+構造批判
動画が一番伝えたいメッセージは大きく3つです。
- 兵庫の文書問題は、森友・加計問題と同じ手法で首長を潰そうとした事案
- 疑惑が1つ晴れるたびに別の疑惑を投げ続け、
世論を「なんとなく怪しい」に保つこと自体が目的。- 兵庫では有権者がそれを見抜いて逆転再選を選んだ「稀有なケース」。
- 百条委員会・第三者委員会・オールドメディアが連動すると、誰でも簡単に“社会的死刑”にされ得る
- 第三者委員会は司法でも独立機関でもないのに、
メディアが“最終判決”のように扱う構造が危険。- 「公益通報」「パワハラ認定」といった言葉が、法的意味から独り歩きして政治攻撃の道具になっている。
- これは兵庫だけの話ではなく、どこの自治体でも起こりうる
- 議会・首長・官僚・OB・メディア・市民団体・活動家…
こうしたプレイヤーの利害が絡む構図は全国共通。- 住民は、百条委員会や第三者委員会の報告を「鵜呑み」にせず、
誰が何の目的で動いているのかを常に問い直す必要がある──と結んでいます。
ざっくり言うと、
「兵庫の文書問題」は、
・怪文書常習者の“告発”
・議会多数派と一部メディアの政治的攻撃
・第三者委員会とオールドメディアの“断罪装置化”
を通じて、
しがらみの少ない改革派知事を失脚させようとしたが、
SNS世論と有権者の判断で辛うじて跳ね返したケースだ——というストーリーとしてまとめられています。
非常によくまとめられていると思います。
私にとってもいくつか興味深い着眼点がありました。

