今回は日本の外国人政策について。
どうあるべきか?はさておき、政権で進んでいる政策を把握することに主眼を置きます。
端的にまとめると、以下の通りです。
高市政権が、小野田紀美大臣を司令塔に据え、「外国人材受け入れありき」から「国民の安全と秩序ある共生を最優先する外国人政策」へ本気で転換し、不法滞在や保険料未納対策を省庁横断で一気に進め始めた話です。
2025年11月5日のインターネット番組、ニッポンジャーナルの切り抜き動画から。
要約は以下の通り。
この回は一言で言うと、
**「安倍政権以降の“受け入れ前提”の外国人政策を、高市政権が“国民の安全と秩序ある共生”重視へ本気でひっくり返した経緯を、官邸・法務省の資料を読み解きながら説明している番組」**です。
① 番組の全体像
- テーマは
- 高市政権の「外国人政策見直し」が何を意味するのか
- なぜ小野田紀美大臣が「司令塔」と言われるのか
- その背景に、安倍 → 石破 → 高市と続く10年ほどの政策の流れがどうあるのか
- 江崎道朗さんが、
- 過去の閣議決定・会議名称
- 法務省・官邸の文書
を踏まえながら、「今回の何が画期的なのか」を噛み砕いて解説しています。
② 安倍政権:出発点は「外国人材の受け入れ」一辺倒
- 平成30年(2018年) 安倍政権での関係閣僚会議発足
- 初めて本格的に「外国人をどう扱うか」を政府全体で議論する場として
「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」
が設置されました(名称は概ねこのような趣旨)。- ここでの前提はあくまで
**「人手不足だから、外国人“人材”を本格的に導入する」**こと。- 介護・農業・建設などでの特定技能制度など、
「どう受け入れるか」「どう現場で活用するか」が中心テーマでした。- 代表的な政府方針は、出入国在留管理庁の
「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」PDF
のような資料に整理されています。- しかし問題も拡大
- 外国人労働者の急増や観光客インバウンドによって、
- 現場でのトラブル
- 生活ルールの違反
- 地域住民のストレス
が各地で噴き出し、「このままでいいのか」という世論が高まっていきました。
③ 石破政権:秩序ある共生を掲げる「司令塔」だが、事務方レベル止まり
高市政権の前段として、石破政権の試みが紹介されます。
- 事務方主導の「外国人問題の司令塔」
- 石破政権は、「外国人との秩序ある共生社会の実現」を掲げた“司令塔”的な仕組みをつくりました。
- ただしこれは、
閣僚会議ではなく、入管など官僚サイド(事務方)が回す枠組みで、
政治主導とは言い難い段階でした。- 法務省の「論点整理」で自己批判
- 石破政権下の法務大臣・鈴木啓介氏の勉強会で出た
「外国人受入れに関する論点整理」文書では、
日本の外国人受入れについてその時々の課題に対する**“対処療法的”な受け入れ**であり、
受け入れるべき外国人の対象や規模を踏まえた
一貫した戦略がなかった
と、かなり率直に自己批判していると紹介されます。- こうした背景は、法務省・入管庁の資料
外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
にも反映されています。- 自民党内の積み上げ
- 自民党内には「外国人等に関する特別委員会」などがあり、
外国人政策に関する提言を着実に出してきており、
これらが高市政権の土台になっていると説明。
④ 高市政権:会議名そのものが示す「大転換」
ここからが、番組の核心です。
- 新しい会議名:人材から「秩序ある共生」へ
- 令和7年11月4日、高市総理は官邸で
「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議(第1回)」
を開催しました。- 会議の概要は官邸HPの
総理の動き(2025年11月4日・外国人関係閣僚会議)
に掲載されています。- さらに詳細は、会議専用ページ
「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」トップ
と、その資料1(PDF)
で確認できます。- 名称の違いが意味するもの
- 旧:
「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」
→ “人材”=経済的資源としての外国人をどう入れるか、が主眼。- 新:
「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」
→ “人材”の語を外し、「秩序ある共生社会」を前面に。江崎さんのポイント:
- 会議名称は政治の意思そのものであり、
「人材受入れ前提」から
「秩序ある共生社会づくり」が主役に変わった、と強調。- 「国民と我が国で生活する外国人」のための政策へ
- 資料1には、
会議の目的として一定の専門性・技能を有する外国人等の受入れ並びに、
国民及び我が国で生活する外国人にとって安全・安心な、秩序ある共生社会の実現
と書かれています。- ここで、
- これまでは企業側の論理(人手不足解消)が前面
- 今回は**「国民の立場」から外国人政策を組み立て直す姿勢**が明示
- 江崎さんは、
「国民と日本で暮らす外国人双方の安全・安心」という書きぶりを、
正面から掲げたのは高市政権が初めて
と評価しています。
⑤ 総理指示の中身:不法滞在・保険料未納・不動産取引まで一気にカバー
- 内閣総理大臣指示という「本気モード」
- 第1回会議では、高市総理から各大臣宛てに
「外国人との秩序ある共生社会の実現について(内閣総理大臣指示)」
が出されています。- ここで高市総理は、
- 人口減少・人手不足で外国人材が必要な分野があること
- インバウンド観光も重要だということ
を認めたうえで、一部外国人の違法行為やルール逸脱により、
国民に不安・不公平感が生じている
と明記し、
「排外主義とは一線を画しつつ、違法行為には厳正に対処する」という基本方針を示しています。- 具体的な指示事項(番組で強調された点)指示文の中で、特に番組が取り上げたのは次のような項目です:
- 不法滞在者対策(いわゆる“不法滞在ゼロプラン”)の強力推進
→ 法務省・入管庁に対し、不法残留・不法就労への厳格対応を指示。- 在留資格・帰化審査の厳格化
→ 納税・保険料納付等の情報も活用し、ルールを守らないケースへの抑制を図る。- 保険料未納対策と制度の適正利用
→ 「保険料は払わず、給付だけ受ける」ような不公平ケースを是正。- 難民申請制度の悪用対策
→ 事実上の“長期滞在の抜け道”となっているケースの是正を検討。- 外国人によるマンション・土地取引の実態把握とルール整備
→ 安全保障や地域社会への影響も含めて検討。これらを、
来年1月までに各省庁は徹底してデータを揃え、
その上で必要な見直し案をまとめよ
と総理が期限付きで指示している点を、番組は「かなりの本気度」と評価しています。
⑥ 省庁縦割りの壁と、関係閣僚会議+小野田紀美大臣の役割
- なぜ総理主導の閣僚会議が必須なのか番組では、外国人政策の“縦割り”構造が解説されます。
- 出入国管理 → 法務省
- 健康保険料・医療 → 厚生労働省 + 地方自治体
- 住宅・土地・インフラ → 国土交通省
- 治安・警備 → 警察庁・国家公安委員会
そのため、
- 法務省が自治体や厚労省に「保険料未納の外国人にこうしろ」と言っても、
「あなたにそんな権限はない」
となってしまう。→ だからこそ、総理が「関係閣僚会議」という“横串”の場で、すべての大臣を束ねる必要があると説明。
- 小野田紀美大臣=「外国人政策の司令塔」
- 高市政権では、小野田紀美大臣が
**この関係閣僚会議を実務面で仕切る「司令塔」**の役割を担っていると紹介。- 番組のトーンは、
- 小野田氏が「ルールは守る人・守らない人で差をつけるべき」という基本感覚を持っている
- 現場感覚に根ざした調整役として期待されている
という、かなり好意的な評価です。
⑦ 高市政権の政権運営:官邸と党の“一体感”
- 岸田政権時代の政調会長経験をフル活用
- 高市総理は、岸田政権で政調会長を務めており、その時から
外国人政策を含むさまざまな政策パッケージを“仕込み”として作っていた、と江崎さんは解説。- 今回のスピード感ある政策ラッシュは、
「政調会長時代に準備していたものを、総理になって一気に表に出している」
という側面があると指摘されます。- 小林鷹之政調会長らの“必死のフォロー”
- 自民党側では、小林鷹之政調会長と、その特別補佐である議員(番組中では鈴木氏)が、
高市総理のスピードに必死に追いつこうとしている、と裏話も披露。- ある閣僚の声として、
「この政権は一体感が強い。石破政権・岸田政権とは雰囲気が全然違う」
という印象が紹介され、
官邸と党が「ワンチーム」で動いている政権として描かれます。- 一方で、総理の体調への懸念も
- 高市総理はほとんど休みを取っておらず、
「どこかで倒れないか、本気で心配だ」
というコメントもあり、
強力なリーダーシップの裏側にあるリスクも示唆されています。
⑧ メディア・党内からの批判と、その“逆効果”
- メディアの「はしゃぎ過ぎ」批判
- 一部メディアでは、
- 「笑顔が多すぎる」
- 「もっとビシッとした態度を」
など、スタイル面の批判が出ているが、- 出演者は
「政策の中身と結果で評価すべきだ」
と冷静に受け止めています。- 石破前総理の高市批判が“防波堤”に?
- 石破前総理が高市総理を公然と批判したことで、
自民党内のある議員が「自分も高市批判をすると“石破派と同類”に見られてしまうので、かえって批判しづらい」
と感じている、というエピソードも紹介。- 結果として、
石破氏の批判が、皮肉にも高市総理への直接的な党内批判を減らす“バリア”として機能している
という見方も語られます。
⑨ まとめ:今回の会議・方針の意味
番組のメッセージを整理すると、こんな感じです。
- 過去10年ほど、政府の外国人政策は
「外国人“人材”をどう受け入れて活用するか」が主軸だった。- しかし、生活ルール違反や不法滞在、保険料未納、土地取引など、
国民側の不安と不公平感が限界に近づいている。そこで高市政権は、
- 会議名称を
「外国人材の受入れ」から
「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現」へ変え、- 資料1と
総理指示で
- 国民と日本で暮らす外国人双方の安全・安心
- 不法滞在・保険料未納・不動産取引などの課題
を、省庁横断で一気に見直すことを明示し、- 小野田紀美大臣を司令塔とする「関係閣僚会議」で、
縦割りを超えた本格的な外国人政策の再設計をスタートさせた。──この「軸足の移動」と「政治主導の仕組み」が、
今回の外国人政策見直しの最大のポイントだ、というのが動画の詳しめの要約になります。
というわけで、高市政権での外国人政策の推進にはかなり期待したいところです。
ここで、以前紹介した原英史さんが提唱する外国人政策(外国人基本法を作れ!)を取り上げます。
今回の高市政権での外国人政策と、原英史さんの外国人政策を比較分析し、高市政権での外国人政策に足りない部分に焦点を当てます。先に結論を提示すると以下の通り。
「治安・制度面では高市政権はかなり原案に近づいているが、
『外国人基本法レベルの戦略』『賃金・生産性を軸にした選別受け入れ』はまだこれから」
以下、詳細解説。
ざっくり言うと、
高市政権は「秩序ある共生」「ルール厳格化」「司令塔づくり」はかなり原案に近づいたが、
原英史さんが言う「外国人基本法レベルの国家戦略」と「高付加価値人材への絞り込み・賃金戦略」は、まだこれから…という整理になります。
1. 原英史さんの提案をざっくり分解すると
※衆院法務委員会での参考人意見+それを整理したnote記事から抜粋・要約しています。(note(ノート))
原案の柱(実質5本)
- 「外国人に選ばれる国」の前に、日本が外国人を選ぶ視点が必要
- 貢献度の高い外国人と、犯罪・制度悪用などを行う外国人を区別し、日本の側が選ぶ発想を明示すべき。
- これまでのなし崩し的な移民受け入れを反省
- 「移民政策はとらない」と言いつつ、技能実習・留学生アルバイトなどで
実質的には低技能の外国人労働力を大量に受け入れてきた、という認識。(note(ノート))- 技能実習制度など「安価な労働力」依存の是正
- 一部業界が賃上げ・生産性向上の代わりに、安価な外国人労働に依存。
- 劣悪な労働環境・失踪・犯罪・日本人賃金の低迷を招いた。
- 対策は「名称変更」ではなく、低賃金企業には制度を使わせないなど、賃金水準を条件にすべき。(note(ノート))
- 「外国人基本法」の制定
- 個別制度の小手先改正の前に、
- 何のために外国人を受け入れるのか(「人手不足解消」ではなく「日本を豊かにすること」)
- どの分野・どの技能レベル・どの国から・どの規模で受け入れるか
を定める国家戦略+基本法が必要。(note(ノート))- 受け入れ行政体制の強化・省庁横断の司令塔
- 入管の人員不足・審査遅延、難民認定対応などを改善。
- 省庁をまたいで戦略をつくり実行する体制(入管・警察・労基署などの連携)を整備すべき。(note(ノート))
2. 高市政権(小野田大臣ライン)の外国人政策の骨格
2-1. 新しい関係閣僚会議と司令塔
- 「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」(安倍・菅・岸田期)を
**「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」**へ改組。(内閣府)
- “人材”という言葉を外し、「秩序ある共生」を前面に。
- 議長:官房長官、
副議長:法務大臣+外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣(小野田紀美)。(内閣府)首相(高市総理)の第1回会議での指示(2025年11月4日)(首相官邸ホームページ)
- 既存ルールの遵守・各種制度の適正化
- 土地取得等を含む国土利用・管理の在り方の検討
- 2026年1月をめどに、「総合的対応策」を改定し、基本的考え方と取組方針を示す
さらに小野田大臣には、実務の司令塔として各省を束ねる役割が付与。(内閣府)
2-2. 具体的に焦点を当てる3つの問題(FNNの整理)
FNNの記事では、高市総理→小野田大臣への具体指示として、主に3領域が挙げられています。(FNN)
- 不法滞在・「経営・管理」ビザ悪用など出入国管理
- 観光客のマナー違反・オーバーツーリズム
- 外国人による投資目的の不動産保有・民泊化など
加えて:
- 省庁縦割り(法務省・国交省・農水省など)の弊害を、
小野田大臣をセンターに情報一本化+統一方針で是正する構図。(FNN)
3. 原案と比べて「カバーできているところ」
(A) 行政体制・司令塔づくり(原案⑥「受入行政体制」)
ほぼ原案どおりカバー
- 省庁横断の関係閣僚会議を最上位に据えたこと。(首相官邸ホームページ)
- 「外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣」を新設し、
入管・観光・不動産・治安などバラバラだった案件を一つのテーブルに集約。(内閣府)- 2026年1月までに「総合的対応策」を改定し、基本的考え方と方向性を示すとした点は、
原さんの言う「パッチワークから脱却し、戦略を定めよ」という方向性と一致。(note(ノート))→ 原案⑤「受入行政体制の強化」「省庁横断の戦略策定」は、形式面ではかなり実現しつつあります。
(B) ルール違反・治安・制度悪用への対応(原案②③の一部)
- 高市総理は、第1回会議で
「違法行為やルール逸脱に国民が不安・不公平を感じている」「排外主義とは一線を画しつつ毅然と対応」と明言。(首相官邸ホームページ)- 関係閣僚への指示の1本目は**「既存ルールの遵守・各種制度の適正化」**であり、
原さんが問題視する
- 不法就労
- 技能実習・留学生アルバイトの悪用
- 社会保障・保険制度の悪用
といった「ルールを守らない受け入れ」の是正と方向性は重なります。(note(ノート))→ 「治安・制度悪用は看過せず、ルールを厳格に」という点は、かなりカバーされています。
(C) 「国民とまじめな外国人のための政策」というフレーミング
- 首相発言では、
「国民」と「ルールを守って暮らす外国人」の双方の安全・安心を守る、
排外主義とは異なる路線を明示。(首相官邸ホームページ)- これは原さんの
「来てほしい外国人」と「来てほしくない外国人」を区別する
という発想とかなり近い。→ 「日本側の価値基準で線を引く」という点では、原案①にかなり寄せてきていると言えます。
4. 「部分的にカバーしているが、原案ほど踏み込んでいないところ」
(D) 「外国人を選ぶ」具体的な選別基準
- 原さん:
- 質の高い外国人材を選び抜き、
- どの分野・技能レベル・国から・どの程度の規模で受け入れるか*
を戦略的に決めるべき、と主張。(note(ノート))- 高市政権:
- 会議の名称変更や首相発言で「秩序ある共生」「国民とまじめな外国人のため」が前面。(首相官邸ホームページ)
- ただし、どの技能レベル・どの国から・何万人規模までといった具体の「選別ルール」は、
まだ「総合的対応策」の改定前で、文書としては出ていない。→ 「選ぶ」という価値観はにじみ出ているが、
**選別基準・受け入れ規模を明示する段階には至っておらず、原案①④に対しては“半分カバー”**くらい。(E) 技能実習・育成就労と賃金戦略
- 原さん:
- 技能実習制度は「安価な労働力」として悪用され、日本全体の賃金低迷を招いた。
- たとえば「地域平均より一定割合高い賃金を払う企業にしか制度を使わせない」といった賃金条件によるフィルタリングを主張。(note(ノート))
- 高市政権:
- 今回の「秩序ある共生」会議は、
- 不法滞在・ビザ悪用
- オーバーツーリズム
- 土地取引
が表の3テーマで、技能実習・育成就労の詳細は**別ルート(入管法・特定技能制度見直し)**で進行中。(FNN)- 高市政権下で、それらと今回の枠組みがどう接続されるかは「総合的対応策」改定を見ないと不明。
→ 「制度悪用を許さない」「ルール厳格化」という方向では一致するものの、
賃金水準を制度利用条件にするといった、原案レベルの踏み込みはまだ見えない状態です。(F) データ整備・実態把握
- 原さん:
- 在留資格審査の遅延や現場の混乱を踏まえ、
入管体制の人員増強・デジタル化・審査迅速化を要請。(note(ノート))- 高市政権:
- 高市総理は各閣僚に対し、
「来年1月をめどに総合的対応策を改定するため、実態把握・データ整理を急げ」と指示。(首相官邸ホームページ)- ただし、入管や労基署の人員増やKPIのような具体的数値目標は、まだ公表されていない。
→ 戦略策定の前提としてのデータ整備という意味では方向としてはカバーしているが、
原案⑤のような行政体制の定量的強化策までは“これから”という段階です。
5. 「まだカバーできていない/これからの課題」
(G) 「外国人基本法」そのもの
- 原さんの中核提案は、
「外国人基本法」を国会で制定し、外国人政策を憲法下の体系に位置づけること。(note(ノート))- 高市政権の現時点の動きは、
- 閣議決定ベースの「総合的対応策」の改定
- 関係閣僚会議+小野田大臣の司令塔化
に止まっており、
「基本法を出す」という政府方針はまだ示されていません。(首相官邸ホームページ)→ ここは完全に未カバーで、原案との最大のギャップです。
(H) 目的を「日本を豊かにすること」と法律レベルで明記すること
- 原さん:
- 目的は「人手不足解消」ではなく、
**「日本を豊かにする(高生産性・高賃金経済への転換)」**とすべき。(note(ノート))- 高市政権:
- 首相発言では、
「人手不足の中で外国人材を必要とする分野がある」「インバウンドの重要性」も率直に認めつつ、
ルール違反に伴う国民の不安解消・秩序ある共生に主眼。(首相官邸ホームページ)- しかし、「外国人受け入れの究極目的=日本を高付加価値経済へ」という経済戦略の言語化は、まだ見えません。
→ 「目的規定」を法律レベルで明文化するという意味では、原案④は未カバーです。
(I) 外交・安保と連動した「重点国」戦略
- 原さん:
- 外交・安全保障の観点から、
人的交流を強化すべき国から重点的に受け入れるべきと提案。(note(ノート))- 高市政権:
- 現時点の文書・報道では、
国別の優先順位(同盟国・準同盟国・安全保障上リスクの高い国など)を整理して
受け入れ枠を差配する構想は明示されていません。(首相官邸ホームページ)→ 外交・安保視点からの「どの国からどのくらい受け入れるか」という設計は、まだ手つかずに近いと思われます。
(J) 「安価な労働力依存」そのものへのメス
- 原さんは、賃金抑制・日本の貧困化を招く
「安価な外国人労働力への構造依存」を断ち切ることを強調。(note(ノート))- 高市政権の現段階では、
- 不法滞在・ビザ悪用・観光マナー・土地取得といった「見えやすい問題」にまず絞っており、
- 労働市場全体の賃金構造と外国人受け入れの関係にメスを入れる政策は、まだ表に出ていません。(FNN)
→ 「安価な労働力による賃金抑制」という構造問題の是正は、今のところ未カバーと言ってよい状況です。
6. まとめ(ざっくり整理)
高市政権で「かなりカバーできているところ」
- 省庁横断の司令塔(関係閣僚会議+小野田大臣)
- ルール遵守・制度悪用の是正(不法滞在・ビザ悪用・土地問題など)
- 「国民とルールを守る外国人のため」という基本スタンス
「方向性は一致するが、踏み込みが足りないところ」
- 外国人を「選ぶ」具体基準(技能・賃金・送り出し国・人数目標など)
- 技能実習・育成就労と賃金戦略の統合
- 入管・労基署などの体制強化の定量的なコミット
「まだ手つかず/今後の課題」
- 外国人基本法そのものの制定方針
- 目的を「日本を豊かにすること」とした最上位の目的規定
- 外交・安保と連動した重点国・重点分野の設計
- 安価な労働力依存による賃金抑制構造への本格的なメス
高市政権での外国人政策推進に期待しつつ、さらなる改善(基本法制定や金持ち外国人を歓迎)についても私なりに尽力していきたいと思います。

