今回は(も)私が政策立案でお世話になっている救国シンクタンク(チャンネルくらら)の動画から。
まず、動画のメッセージは以下の通り。
「『金利上昇=危機』『トリプル安=日本売り』というマスコミの煽りに惑わされず、これはデフレ脱却と成長期待に伴う“正常な金利の戻り”であり、本気の減税と成長政策でむしろ後押しすべき局面だ」ということ、これが一番伝えたいポイントです。
ということで、当該動画です。
要約は以下の通り。
動画全体の流れを整理しつつ、ポイントごとにまとめます。
1.米国マーケットとFRBの利下げ観測
- サンクスギビング明けで材料は少なかったが、米株は5日続伸。
背景には「12月FOMCでの利下げ観測がかなり強まっている」ことがある。- ウィリアムズNY連銀総裁が
- 12月会合での利下げを否定せず
- 「利下げもあり得る」趣旨の発言
→ これを受けて「FRB執行部(パウエル含む)は利下げに傾いているのでは」と市場が見始めた。- 村上氏自身は、以前から一貫して
「12月利下げだろう」というスタンスで、今もその見方は変えていない。
- ただし論点は「12月に1回下げたあと、どこまで利下げするのか」という点。
- 市場は政策金利3%程度までの利下げを折り込みたがっているが、
- 村上氏は
- 米経済はそこまで悪くならずに途中で持ち直す
- 現実的には3.5%あたりで下げ止まりと予想
→ 現在の市場は「利下げを織り込みすぎ」と見ている。
2.FRB議長交代観測とパウエル辞任の噂
- ブルームバーグが「ハセット氏が次期FRB議長有力」との観測記事。
- 米国ではブルームバーグの信頼性は高いので、一定の内部情報はありそう。
- しかし他メディアは追随しておらず、「トランプはまだ迷っているのでは」と村上氏は見る。
- 村上氏の評価:
- 誰が議長になっても、基本路線は大きく変わらない。
- 独立性は維持され、トランプの“言いなり”になるような極端な話にはならない。
- SNS上で出ている「パウエルが任期途中で辞任するのでは」という噂については、
- 来年に交代することは既定路線なので「単なるタイミングの問題」。
- パウエルはメンタルも強く、自ら責任をまっとうするタイプであり、
途中辞任の可能性は低いという見立て。
3.日本金利の上昇と日銀の利上げタイミング
- 2年物国債利回りが1%台に乗り、リーマンショック前以来17年半ぶりの水準に。
これが「日銀利上げが近い」と見られる一因になっている。- 日銀の利上げ時期について:
- 12月か1月か、マーケットでは見方が割れている。
- 村上氏の基本シナリオは
→ 「1月利上げ」の可能性が高い
- 展望レポートと同時に、インフレが2%に定着しつつあるとの判断を示しつつ利上げするのが、
政策の整合性としては最も自然だと考える。- ただし、上田総裁のロジック次第では12月に利上げする可能性もゼロではないと見る。
- 村上氏のスタンス:
- 現状、急いで利上げする必要はない。
- 日本経済はまだ十分に加熱しておらず、もっと景気が良くなってから利上げでも遅くないという考え。
4.「金利上昇=危機」「トリプル安」報道はミスリード
- メディアは「40年ぶりの金利水準」「何十年ぶりの水準」などと煽るが、
村上氏の説明は以下の通り:
- 2000年代前半でも10年金利2%前後は普通にあった。
- 1990年代後半〜2000年前後にも2%程度の長期金利を経験している。
- **インフレ率が2%を超える局面では、金利が上がるのは“当たり前”**であり、
危機的状況ではなく「正常化」の一過程にすぎない。- いわゆる**「トリプル安」報道(株安・債券安・円安が同時進行)**についても、
- 一瞬そう見えたタイミングを切り取って大騒ぎしているだけで、
- 実際には「日本株はむしろ上がっている局面の方が多い」と指摘。
- スポーツ紙レベルの見出し狙いの記事に近く、
高市政権を叩きたいメディアの“クリック稼ぎ”に過ぎないと批判。- 「高市政権の財政政策への懸念で金利が上がっている」という論調にも反論:
- むしろ市場が
「この政権の政策で日本経済が完全復活するかもしれない」
と期待すれば、自然に金利は上がる。- 危機ではなく「成長期待で金利上昇」している側面が大きいと見る。
5.日本の金融環境の評価
- 現在の長期金利水準は2%以下であり、
- これは過去のデフレ期でも経験しているレベル。
- よって、今もなお金融環境は十分に緩和的だと評価。
- ただし村上氏は、
- ここ数年の日本の実体経済は強いとは言えず、景気加熱には程遠い。
- したがって、日銀があわてて利上げする必要はなく、
もっと経済が“ガンガンに加熱”するくらいまで持っていく余地があると主張。
6.補正予算・財政政策・減税への評価
- 高市政権の補正予算では、国債発行が約11.6兆円増える見通し。
- これに対して「バラマキだ」という批判もあれば、「もっとやれ」という市場の声もある。
- 村上氏の評価:
- 現在の対策規模は「岸田政権と大差ないレベル」。
- 2兆円規模の補正程度では、マクロ経済的には何も変わらないに等しい。
- 真の路線転換には
- 所得税中心の本格的な減税
- 予定されている各種増税メニューの「全キャンセル」
が必要だと指摘。- つまり、
- 高市首相や経済閣僚の“言葉や人事”からは路線転換の意欲は感じられるが、
- 本当の勝負は来年度本予算と、そこでの税制見直し・減税規模で決まる
という見立て。- ここで家計部門に十分な規模の減税を実施できれば、
「高市政権の経済運営は大丈夫」と評価できると述べる。
7.円安・金利批判と「誰が騒いでいるのか」
- 足元の円安や金利上昇については、
- 批判しているのは主に立憲民主党と共産党(村上氏はまとめて「立憲共産党」と表現)、
- それを後押しする左派メディアや一部官僚、
- 彼らの論調を鵜呑みにしている一部市場関係者に過ぎないと指摘。
- 世論調査を見る限り、
- 高市政権の支持に大きな問題は出ておらず、
- 「賢い大人はこの手の騒ぎをあまり相手にしていない」状況だと解説。
8.2025年の総括と今後の日本経済の課題
- 今年を振り返ると:
- 株価は高く、為替も最終的には極端な円安にはならず、
金融資産市場としては良い年だったと評価。- しかし、
- 日本経済が「完全復活」と言えるほど成長率は上がっていない。
- もっと景気を“過熱気味”に持っていき、
人手不足が顕在化し、誰もが働きたいところで働ける状態を目指すべきと提言。- そのような状況をつくることができれば、
- 高市政権は自然と長期政権になるだろうし、
- 高市首相もその方向性は理解しているはずだと、村上氏は期待を示して締めくくっている。
ざっくりまとめると、
「金利上昇や一瞬の“トリプル安”を危機として煽るメディアの見出しはミスリードであり、日米ともに“正常化に向かう金利”と“まだ物足りない財政・減税”をどう組み合わせるかが本質」
というのが、この回の一貫したメッセージです。
参考までに、危機感をあおるトリプル安の記事の具体例を紹介します(by生成AI)
はい、まさに村上さんが問題視していたタイプの記事が、ここ最近かなり出ています。
「典型例」をいくつか挙げて整理しますね(どれも“彼が特定していたこの記事だ”と断定はできませんが、論調はドンピシャです)。
① ブルームバーグ
タイトル例:
日本市場を襲うトリプル安、高市政権の経済対策コストに警戒感高まる (Bloomberg.com)
ポイント
- 株・国債・円が同時に売られた局面を「トリプル安」と強調。
- 高市政権の21.3兆円規模の経済対策を「コロナ後最大」とし、
そこから「中長期的な財政悪化への不安」「日銀の利上げ遅れへの懸念」といった**“財政・金融リスク”ストーリー**に直結させている。(Bloomberg.com)- 円が独歩安になっていることを強く取り上げ、「日本の当局の発言には市場が鈍感」「円がおもちゃのように扱われている」といったコメントを引用。(Bloomberg.com)
👉 村上さんの批判ポイントに即して言えば、
「一時的な値動き+補正予算」を、そのまま
**『日本売り』『市場の警鐘』『危機前夜』**の物語に組み立てている典型例。
② ダイヤモンド・オンライン
タイトル:
高市「21.3兆円」補正予算で進む円安・国債下落・株安の“トリプル安”、今後の見通しが最も暗い市場は? (ダイヤモンド・オンライン)
ポイント
- 見出しからして
- 「円安・国債下落・株安のトリプル安」
- 「最も暗い市場はどこか」
という形で危機感を前面に出す構成。- 本文では
- 21.3兆円の経済対策・17.7兆円の補正予算歳出
- そこから「財政ポジション悪化懸念」「インフレ懸念」を理由に
円売り・長期金利上昇を説明。- 「一時的に円・JGB・日本株がすべて売られるトリプル安が観測され、
市場の不安が大きくなりつつある」と描写。(ダイヤモンド・オンライン)👉 村上さんの立場から見ると、
「デフレ脱却で金利が少し戻るのは自然」という視点が抜け落ちて、
ほぼ“財政悪化=危機”の図式だけが強調されている記事になります。
③ マネックス証券「マネクリ」吉田恒氏コラム
タイトル:
「日本売り」の様相になった「高市円安」 (マネクリ | マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア)
ポイント
- 「金利差でも株高でも説明できなくなった高市円安を説明できそうなのは、
日本の長期金利上昇と債券価格下落だ」とし、
ここから**「悪い金利上昇」→「トリプル安」→「日本売り」**へと話を展開。(マネクリ | マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア)- 「責任ある積極財政」への疑念が高まり、
長期金利上昇=日本売り=高市円安、という構図を強く印象付けている。(マネクリ | マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア)👉 これは村上さんの批判対象をほぼそのまま具現化した記事で、
「長期金利の上昇」を“成長期待の正常化”ではなく、
“財政不安=日本売り”として一方向に解釈している代表例と言えます。
④ ロイター コラム
タイトル:
コラム:財政拡張と円安は「日本売り」の予兆か=内田稔氏 (Reuters Japan)
ポイント
- 高市政権の21.3兆円経済対策と17.7兆円補正予算に言及し、
その週に株式・国債・円のトリプル安が観測されたと説明。(Reuters Japan)- 「このトリプル安を財政悪化に対する警鐘とみなす報道が目立った」と指摘しつつ、
著者自身はデータを用いて「必ずしも財政悪化だけが原因ではない」と冷静に分析している。(Reuters Japan)👉 この記事自体はむしろ冷静派ですが、
文中で「トリプル安=財政悪化の警鐘」とマスコミの典型的な受け止め方を紹介しているので、
村上さんが言う「煽り」と同じ空気感を可視化してくれているコラムです。
⑤ 海外メディア(FTなど)も同じトーン
- **FT(Financial Times)**は、
日本の長期金利が2008年以来の高水準になったことを、
「高市政権の大規模補正予算への懸念」「債務持続可能性への不安」「市場の“タカイチ・トレード”」
といった文脈で報じています。(フィナンシャル・タイムズ)- ロイターのニュース記事でも、
「英国トラス政権のショック」と比較しながら、
高市首相が“同じ轍は踏まない”と説明する場面を報じており、
そもそも比較対象として**“トラス・ショック”を持ち出すことで危機感を醸成する構図**になっています。(Reuters)
村上さんの批判との関係を整理すると…
村上さんが動画で言っていたのは、ざっくり言うと:
- 「何十年ぶりの金利水準」「トリプル安」「日本売り」
といった言葉を前面に出し、- 金利上昇=そのまま「財政危機・政権への警鐘」といった
単線的なストーリーに落とし込む報道が多い、- しかし実際には
- デフレ脱却・インフレ率2%定着の過程で、
金利が少し上がるのはむしろ“正常化”であって当然- 1990〜2000年代にも2%前後の長期金利は普通にあった
- 現在の水準は「危機レベル」ではない
という「もう一つの現実」がほとんど説明されていない、という問題意識です。上で挙げた記事群は、
- 「トリプル安」「日本売り」「財政悪化の警鐘」といったラベルを多用し、
- 金利上昇=危機シグナル、という印象を強く与えている
という意味で、村上さんの言う「マスコミが煽っている金利上昇報道」の代表例として位置づけられると思います。
最新の関連記事をざっと追えるように、代表的なニュースをまとめておきます:
長々と書いてきましたが、私としても次のメッセージを残しておきたいと思います。
金利上昇そのものは“危機”ではなくデフレ脱却の正常化である。そしてここでやるべき本丸は、家計に効く本格的な減税(特に所得税)と、増税メニューの全キャンセルだ!

