今回は(も)私が政策立案でお世話になっている救国シンクタンク(チャンネルくらら)のライブ配信を紹介します。
先にポイントを列挙します。
- 中露の共同軍事行動(爆撃機飛行)+中国のレーダー照射は「連携を誇示して見せる」意図が強い。日本は挑発に乗らず冷静に、誰向け(主に米国向け)かを見極める。
- 「同盟・協商=仲良し」ではない。中露は相互利用で一枚岩とは限らず、言葉に惑わされない。
- 領空侵犯=即撃墜は素人論。重要なのは、普通の国は撃墜も可能な法整備を用意し、やるかは状況判断。日本は制度が古く現場に無理を押し付けがち。
- 橋下徹氏の議論は「国際社会に裁判官がいる」前提になりがちで危うい。国際法は**裁判より力関係・手続(NOTAM等)**が重要。
- 台湾有事は日本と連動しやすい。中国は成功必須で苦しいため、日米が初期から関与する形(変数増)を示すことが抑止になる。
- 増税110番:防衛財源(法人税・たばこ税)に加え、(スクリプト内速報として)防衛目的の所得税増税を2027年1月開始方針の話。
- 宅配の「置き配原則+手渡し追加料金」は、税というより規制が絡む値上げで、何でも増税扱いは慎重に。
- 国家情報局(情報組織)は作るだけでなく、人材育成が鍵で時間と政権のエネルギーが要る。
要約は以下の通り。
1) 冒頭:配信開始・出演者
- 音声や画面のトラブルを確認しつつスタート。視聴者に「聞こえるか」確認、チャンネル登録・高評価・X拡散(ハッシュタグ)を促す。
- 出演:所長(倉山氏)、研究員(小川氏)、司会。渡瀬氏は海外出張で欠席。
2) テーマ①:中国のレーダー照射+中露共同軍事活動
小川氏の見解(要点)
- レーダー照射後に、中国・ロシアの爆撃機が 沖縄~宮古海峡を通過し太平洋へ、その後 **北東(東京方面の延長線)**へ飛行したという流れ。
- 経路は 2017年の中国単独飛行と似ている点が報道されている。
- ただし、「中露が完全に今後も一枚岩」という見方には懐疑的。
- 中国は仲間が減り、ロシアに頼る面はあるが、目標が一致し続けるとは限らない。
- 重要なのは “中露が連携しているように見せたい”意図。日本は挑発に乗らず冷静に対応すべき。
倉山氏の補足(同盟・協商の本質)
- 「中露協商(=同盟みたいなもの)」に過剰反応する人が多いが、同盟は“仲良し”ではない。
- 歴史例(例:三国同盟/三国協商、織田徳川同盟)を引き、
- 同盟は 守らせる意思と能力があって初めて成立
- 同盟維持には 膨大な労力が必要
- 中露は「正式同盟」というより 相互利用の関係で、言葉だけ増える(戦略的パートナーシップ等)ことに惑わされるな、という主張。
- 日米同盟も「紙切れが勝手に守ってくれる」わけではなく、実行させる力関係・運用が重要、という問題提起。
司会側の補足
- 中露の行動は「誰に見せているか」=米国への示威の側面が大きいのでは、という整理。
- 日本は慌てず、国内世論が煽られないことが重要、という流れ。
3) テーマ②:橋下徹氏の発言(領空侵犯・撃墜論など)をどう見るか
小川氏のスタンス
- 橋下氏は国内法の専門家としては優秀だが、テレビコメンテーター的発言は「知恵袋」的に見える時がある。
- ただし動機は「自衛隊に必要な法整備を」との親切心にも見えるので、論点を正しく入れ直せば建設的とも評価。
「領空侵犯=すぐ撃墜」への反論(倉山氏中心)
- いきなり撃墜する国は稀で、米国も気球の件で「落とす場所・条件」を見て実施した。
- 重要なのは、普通の国は
- 撃墜も可能な法制度を用意した上で
- やる/やらないは状況判断
- 日本は「撃墜するな」と縛りつつ「現場で臨機応変にやれ」と言いがちで、これは無理筋。
- 自衛隊法の枠組みが 古い時代(第1世代戦闘機の頃)前提で、現代のミサイルやレーダー環境に合わない、という指摘。
4) テーマ③:「弾劾証拠」発言と“国際社会に裁判官はいない”問題
司会の説明(弾劾証拠とは)
- 裁判で証言の信用性を落として、証拠価値を崩す材料(矛盾する過去発言など)。
倉山氏・小川氏の核心
- 橋下氏の議論は「国際社会に裁判官がいて、裁判のように決着する」前提が強く、そこがズレている。
- 国内法の癖として「上位権力(裁判官・統治権)」を想定しがちだが、国際社会は違う。
“通告した/してない”の実務論(NOTAMなど)
- 軍事訓練は本来 NOTAM(航空情報)等の手続きに乗って初めて「通告」と言える。
- 手続きに乗っていないなら「内緒でやってるのと同じ」。
- 「中国が通告したと言っている」を鵜呑みにする危険、という指摘。
- 国際法は「人情・実力の世界に近い」比喩も用い、法律用語で相手を説得して止まる世界ではないという主張。
5) 「合憲自衛隊」:軍事司法・専門性の必要
- 憲法上も条件付きで軍法会議的仕組みは作り得るが、問題は 裁判官が軍事・軍法・国際法を分からないこと。
- 軍事の専門判断を扱える「軍事審判所」的な場や、裁判所に 専門委員を入れるなどの制度論が議論される。
- 例:戦場医療のトリアージ
- 平時は重症優先だが、戦場では「助かる人を早く戻して戦力維持」が合理的
- 現行の平時法体系だと誤解され、起訴・有罪になりかねない
- それでは国防を担う人が萎縮する、という危機感。
6) テーマ④:台湾有事—日本周辺との連動、抑止の考え方
小川氏の整理
- 中国が「短時間で台湾を取る」計画を作ろうとしても、現実には
- 米軍の介入
- 日本(南西諸島)の存在
を考慮せざるを得ず、戦域は広がりやすい。- 台湾は **縦深防衛(深い防衛)**や地下施設を整備しており、短期で全面占領は難しく、時間がかかる可能性。
- 上陸作戦は最難関で、ロシアの失敗例から中国も学んでいるはず。
倉山氏の抑止観(「変数を増やす」)
- 攻める側は「必ず成功」しなければならず、成功確率が下がるだけで計画が苦しくなる。
- 高市総理の強い発言が、中国側に「日本・米国を初期段階から計算せざるを得ない」状況=変数増大を作り、抑止に資する、という趣旨の議論。
視聴者質問への回答
- 「核で津波」:技術的に可能性はゼロではないが、そもそも目的・コスト・リスクが合わない。最悪だけ並べてもシミュレーションにならない。
- 「山に引き込む」:台湾の地形・都市化から、全面制圧は時間がかかる。1か月で全部は取れない、という見立て。
7) テーマ⑤:増税110番(税・負担増の話題)
(A) 防衛財源の特別措置法(法人税・たばこ税)
- 今年の通常国会で成立した枠組みとして言及。来年4/1施行待ちという位置づけで紹介。
- 途中で“速報”として
- 防衛財源の所得税増税開始を2027年1月にする方針
- 26年度の税制改正大綱に盛り込む
という情報が入った、という流れ。(B) 東日本大震災関連の「政府系株式会社」的枠組みへの疑念
- 「株式会社 東日本大震災事業者再生支援機構」の話題。
- 「天下りの温床のような政府系組織が増えていないか」という問題提起。
(C) 宅配の「置き配原則+手渡し追加料金」問題は“増税”か?
- 国交省の標準運送約款見直し(宅配条件)を「増税では?」という声に対し、
- これは税ではなく、運送契約の条件変更(料金体系)であり、国交省の認可制度が絡む
- 「規制が値上げを誘発している」とは言えても、何でも増税と呼ぶのは慎重に
という結論に寄る。- 渡瀬氏(昼のZoomでの見解として)「規制による値上げ」論が紹介されつつ、最終判断は視聴者に委ねる流れ。
(D) ガソリン減税/年収の壁178万円
- ガソリン減税(“決まった”という言い方)と、年収の壁178万円の引上げ決着を「良いニュース」と評価。
- 一方で、防衛増税や日銀利上げが重なると政権運営が厳しくなる、という懸念も語られる。
8) 国家情報局(情報組織)・政権運営の論点
- 「国家情報局を作りたい」という話題に触れ、
- 組織を作るのは必要条件
- 人材を育て充実させるのが十分条件(時間とエネルギーが要る)
という整理。- 2013年のNSC(国家安全保障会議)に言及しつつ、作戦と情報は両輪で、情報組織整備が遅れている、という問題意識が語られる。
9) 終盤:告知・次回予定
- 皇室系図(皇室図)の普及、冊子配布、月報、書籍「合憲自衛隊」の宣伝。
- セミナー告知:1月25日(日)、会場はいつもと違う(神田神保町付近)。テーマはリーダーシップ論。
- 次回ライブ:12月25日 17:30開始。
増税に関する部分をあらためてまとめます。
- 防衛増税(“防衛特別所得税”)への強い警戒
- 2026年度の税制改正大綱に、防衛目的の所得税増税を盛り込むという報道(速報)を受けて、
「結局、増税に進むのか」「(増税回避を期待していた側は)負けた形だ」と批判的に言及。- 既に成立済みの防衛財源法(防衛法人税・たばこ税)に加えて、所得税にも拡大していく流れを問題視。
- 「防衛力強化財源確保法」(防衛法人税・たばこ税)を“防衛増税”として整理
- “防衛力の抜本的強化のための財源確保”を名目にした特別措置法は、実質的に防衛増税の法律だと位置づけ。
- 「来年4月施行を待つだけ」という文脈で、増税が既定路線化している点を問題にしている。
- 「何でも増税扱い」を戒めつつ、“規制による値上げ”も論点化
- 国交省の標準運送約款見直し(置き配を通常、手渡しは追加料金)については、
すぐに「増税だ!」と騒ぐのは逆効果だ、と慎重姿勢。- ただし、規制(認可制度)を通じた実質負担増という見方は残し、「増税と同じ効果を持ち得る」との整理も紹介。
- (まとめのトーン)“増税しない方が経済が回る”という問題意識
- 増税を避ければ民間に残るお金が増え、結果として税収も伸び得る、という趣旨で
**「本当は“増税なしで景気が湧く日本”を見たかった」**という残念さを表明。
高市政権、評価できる点は多いですが、それはこれまでの政権との比較の上での話です。増税傾向である点は国民側の監視が極めて重要です。

