今回は楽待チャンネルのウクライナ現地に関する動画から。
私の事務所にもあいさつにお越しいただいたことのある岡部芳彦教授が出演しています。
お招きありがとうございました!兵庫県との繋がりも深く、非常に興味深い意見交換で、また勉強になりました。手に持つのは伝統工芸師の下川貴士さん制作の #浜田聡 さんモデルの博多人形です。 https://t.co/wmsJDMYdwm
— 岡部芳彦 OKABE YOSHIHIKO Окабе Йошіхіко (@UKYoshiOk) July 3, 2023
今朝は「楽待チャンネル」の収録。高橋彩さんのMCで、小泉悠先生と4月のウクライナ訪問を中心に対談。小泉先生にお会いするのは6日ぶりで3週連続。再来週も会う予定です。 pic.twitter.com/AGXuBbGh6g
— 岡部芳彦 OKABE YOSHIHIKO Окабе Йошіхіко (@UKYoshiOk) June 8, 2026
興味深かったポイントを中心に紹介します。
行政DXがお年寄りにも普及した(賄賂が不要になったのが理由の一つ)のは興味深いです。
この動画(前編)の対談の中で、小泉氏と岡部氏のリアルな現地体験から浮かび上がった、日本が有事や災害時の教訓として捉えるべきポイントを3つの視点に強調してまとめました。
1. 「窓口サービス」を残したまま利便性で移行させるDX
日本でデジタル化を進める際、よく「スマートフォンを使えないお年寄りはどうするんだ」という議論になり、結果として停滞してしまう傾向があります。
しかしウクライナ政府は、「従来の対面窓口サービスは一切廃止せず、残したまま」にしました。その上で、徹底的に便利なデジタルサービスを作ったところ、「そっちの方がはるかに楽だ」とお年寄り自身が自発的にスマホアプリへと流れていったそうです。
弱者を切り捨てず、かつスピード感を落とさないこのアプローチは、日本のデジタル庁や行政にとっても非常に大きな教訓と言えます。
2. 「不便や不正の解消」がテクノロジーの順応を加速させる
ウクライナで高齢者を含めた全世代にこれほど早くDX(政府アプリ「Diia」)が浸透した背景には、「旧ソ連時代から続く、窓口業務の恐ろしいほどの非効率さや、賄賂(お食)の要求から解放される」という明確なメリットがあったからです,。
デジタル化をすれば、不機嫌な役人の顔を見る必要も、手続きを早くしてもらうための小銭(賄賂)を要求されることもありません。
日本がデジタル化を普及させる上でも、単に「国が管理しやすくなるから」ではなく、国民が日々感じている「窓口で待たされるストレス」や「面倒な手続き」という具体的な痛みをダイレクトに解消する設計になっているかが重要であることを示しています。
3. 有事・災害時でも「日常と社会を維持する」ための避難インフラ
動画内では、ホテルの地下駐車場を改造した快適なシェルターの様子が語られています。そこにはWi-Fiが通り、ウォーターサーバーやコーヒー、子供向けのおもちゃまで完備されており、避難中もパソコンで仕事のメールを返すことができます,。
空襲警報が長引いて丸一晩出られないような状況でも、ある程度まともに過ごせる環境がなければ、人間は疲れ果てて社会を維持できなくなります,。
小泉氏はこれを受け、「日本も南西諸島などの避難(島嶼部の避難)をどうするんだという話と非常に二重写しになる」と危機感を示しています。単に「命からがら逃げ込む場所」ではなく、「避難しながらでも日常の経済や生活をストップさせないインフラ」を平時からどれだけ想定できているかが、国のレジリエンス(回復力・耐久力)に直結するという重要な教訓です。
一歩踏み込んだ視点(洋白の喪失)
行政のデジタル化は「徴兵令状」などがスマートフォンにダイレクトに届くシステムにも繋がっており、かつて「家にいなければバックくれたと言い訳できた」ような、良くも悪くも存在した「社会のゆとり・ごまかし(洋白)」が消えることも意味しています,。テクノロジーによる効率化がもたらす「徹底的な管理社会」への変化も、有事のリアルとして私たちが知っておくべき側面です。
ちなみに、日本人がウクライナに入国することは不可能ではない、とのことですが…。
結論から言うと、手続き上の「入国制度」としては、現在も日本人がウクライナに入国することは可能です。動画内で岡部氏も「行くのはもう普通に、人の行き来はあります。飛行機で行けないというだけの話」と言及していた通り、ウクライナ側が日本人に対して国境を封鎖しているわけではありません。
ただし、日本のパスポートを保持する一般の日本人が実際に渡航しようとする場合、以下の法的・安全上の厳しい現実があります。
1. 外務省による最高「レベル4:退避勧告」
日本の外務省は、ウクライナ全土に対して一貫して危険情報「レベル4:退避してください。渡航は止めてください(退避勧告)」を発出し続けています [1.1.1]。
いかなる目的(観光、私的な視察、ボランティア等)であれ渡航中止を強く求めており、現地の在ウクライナ日本国大使館も通常の領事サービス(パスポートの更新や各種証明書発行など)を停止しているため、トラブルに巻き込まれても国による保護や救済は原則受けられません [1.1.2], [1.1.5]。
2. 空路の完全閉鎖と陸路による制限
ウクライナ国内は領空が完全に閉鎖されているため、飛行機での直行はできません。
入国する場合は、一度ポーランドやスロバキア、ルーマニアなどの周辺国へ飛び、そこから動画の対談にもあったように国際列車や車を使って陸路で国境を越える必要があります,。周辺国の国境検問所は稼働していますが、戦時体制下のため身分証(パスポート)のチェックや所持品の検査、入国目的の確認などは非常に厳格に行われます。
3. 戦時下の法規制(戒厳令と外出禁止令)
ウクライナ国内では現在も戒厳令が敷かれており、主要都市(キーウなど)では夜間の外出禁止令が毎日適用されています [1.1.2]。また、軍事施設や変電所、インフラ施設などをスマートフォンのカメラで撮影する行為はスパイ活動と疑われて拘束されるリスクが非常に高く、厳しく制限されています [1.1.2]。
⚠️ 一般渡航についての補足
動画に出てくる研究者(小泉氏ら)や政府関係者、報道機関などは、現地の治安機関や受け入れ先(大学・政府省庁等)と綿密な連絡を取り、安全な移動ルートや避難場所(シェルター)を確保した上で、特例的な目的(公務や学術調査)として渡航しています。個人による一般的な渡航は、現地に不必要な混乱や負担を与えるリスクもあるため、厳に慎むべき状態が続いています。
ウクライナにおけるDXの急速な普及は、単なる「最先端技術の導入」だけではなく、「窓口の不便や不正の解消」という国民の強いニーズに応えた結果であり、日本の行政デジタル化を進める上でも極めて本質的な教訓を示しています。また、避難シェルターにおける日常維持のインフラ整備は、我が国の島嶼部(とうしょぶ)や大規模災害時の避難計画をアップデートする上で、非常に重要な「二重写し」の課題であると痛感させられます。
有事や災害への備え、そして真に国民の利便性を最優先した行政改革について、国会に戻って提言できるよう、日々の活動に尽力していきたいと思います。
一般の方々の渡航は外務省の「退避勧告(レベル4)」により厳に慎むべき状況ですが、こうした貴重な現地視察の報告や知見から学び、我が国のレジリエンス(耐久力)向上へと活かしていくことが、今を生きる私たち政治家の責務です。

