スポンサーリンク

日本の解雇規制の問題は解雇のルールが明確でないこと→金銭解決制度は解決策のひとつ

今、自民党総裁選と立憲民主党の代表選が話題です。

前者において、争点のひとつになりそうな政策として、解雇規制見直し、があります。

※本来は立憲民主党において大いに争点になってほしいのですが…。労働組合が主たる支持団体なのですから。

日本の解雇規制は厳しくない⁉

以前、中央大学の江口匡太教授の意見を取り上げました↑。

とりあえず、日本の解雇規制は厳しくない、というのは分かりました。

では、何が問題なのか、その解決のためにどうすればいいのか?

制度・規制改革学会の提言が自分には腑に落ちました。

端的にまとめると、次の2点です。

・現状の問題:解雇のルールが明確でない
(→特に中小企業では恣意的解雇横行)

・ルールを明確にする方法のひとつとして金銭解決制度

2024年9月9日:「解雇の金銭解決制度は労使双方にとって利益」を発表(制度・規制改革学会)

解雇の金銭解決制度は労使双方にとっての利益  制度・規制改革学会有志

自民党の総裁選での争点のひとつが、生産性の向上と解雇の金銭解決制度の導
入である。経済の生産性向上には、低生産性分野から高生産性分野への労働移動が必要だが、それを妨げる大きな要因のひとつが、企業内で十分に活用されていない人材の存在である。
雇用契約については、他の民事契約と異なり、雇用終了のコストについて明確なルールが存在しておらず、労働市場の円滑な機能が損なわれている。このため、ドイツ等の欧州諸国での様々な形態の解雇の金銭解決制度を、日本にも速やかに導入すべきである。
日本の現行法でも,不当な解雇の場合は、労働者は企業に対して不法行為に基
づく損害賠償請求ができる。しかし、解雇のルールが明確でないため、不公正な労働市場が生まれている。まず、訴訟で争う力のある労働者を抱える大企業では、解雇に過度に抑制的になり易く、労働市場の健全な流動性が損なわれている。一方、中小企業等では、恣意的な解雇も横行しており、労働者の利益が損なわれている。
このため企業から特定の労働者に対して、一定の補償金を支払うことで雇用を終了させる手段を制度化することで、解雇紛争解決のためのルールを明確化し、労働者間の不公正を解消すべきである。企業からの金銭解決の申し立てには「解雇を容易にする」という批判がある。しかし、解雇の際の補償金の水準が十分に高ければ、むしろ企業に対して解雇を抑制する効果もある。
欧州では、差別的な解雇以外の解雇には、金銭解決のルールが導入されている
場合が多い。日本でも、個別労使紛争についての労働委員会等のあっせんや労働審判では、すでに解雇の金銭解決がなされている。民事裁判でも、個々の労働者の月収や勤続年数等に比例した解雇補償金額の水準を、予め公的に定めることができれば、労働者と企業の双方にとって、解雇紛争解決についての予見可能性を高め、その円滑な解決と紛争の事前防止に役立てられる。
現在、厚労省の研究会では、解雇無効判決の場合、労働者が希望する場合に限定し、解雇の金銭解決を可能にする方式を検討している。しかし、それでは経営側からみて、十分な金銭補償の下でも、問題のある労働者を解雇できない現状の解決にはならない。これを労使双方から申し立てられる方式にするべきである。
個別紛争について金銭補償での解決は、借地借家法での立ち退き料、離婚の際
の慰謝料、交通事故等の補償金等について、すでに一定の基準が存在している。個別解雇紛争についても、明確な金銭補償の水準が定められれば、とくにわずかの補償金しか得られない、多くの労働者にとっては大きな利益となろう。

池田信夫さんの提言↓も金銭解決です。

X上の次のポストが印象的でした。

クビの専門家です。「解雇規制緩和」と聞いて、もしかしたら「社長の一存で簡単にクビを切られる!」と心配している人がいるかもしれませんが、「解雇を受け入れる代わりに、労働者が金銭を受け取る『金銭解決制度』導入を検討」ってハナシですからね。解雇の金銭解決制度、私は大いに賛成です。

意外に思われるかもしれませんが、現在我が国では、解雇を金銭解決できる制度が存在しません。なので、会社から不当解雇された人が裁判で争う際には、いくら会社に愛想を尽かしていて復職したくなくても、「解雇は無効だから復職したい」と主張するしかないんですね。会社側としても一旦解雇した人物を復職させる気はなく、解雇の撤回もしたくない。ではどうするかといえば、お互いにとってあまり意味のない「復職」をテーマに裁判し、その妥協点として「退職する代わりに解決金を獲得する」という方向に持っていくしかないんです。実に不毛ですよね。

「解雇の金銭解決」を制度として正式に導入できれば、そんなムダなやりとりをしなくても済みます。しかも、わざわざイチから制度構築する必要もありません。理論上は、現行の労働契約法16条に追加で「解雇に際し、使用者が対象労働者の賃金●ヵ月分以上に相当する金銭を支払った際は、その解雇は客観的な合理性を有し、社会通念上相当であるとみなす」といった一文を入れるだけでいいんですから。

だいたい「日本は解雇規制が厳しい」なんて言われてますけど、これは「解雇を規制する法律がガチガチに固められていて、解雇したら即ペナルティが課せられる」といった意味じゃありません。「解雇自体はできるが、もしそれが裁判になった場合、解雇無効と判断されるケースが多いため、実質的には解雇が困難」という表現がより正確でしょう。

なので、裁判すれば労働者が有利なのは間違いないんですが、そもそも裁判するにも相当の弁護士費用と肉体的&精神的エネルギーが必要なので、まず裁判にまで至りません(ちなみに令和3年の1年間では、クビにまつわる労働局・労基署の相談件数が約3万3000件あったものの、そこから実際に裁判に至ったのは1000件程度です)。しかも、裁判にはかなりの時間を要するので、結局判決にまで至らず、和解で終わることも多いです。

解雇の金銭解決制度を導入できれば、そこで要する余計な時間と弁護士費用と肉体的&精神的エネルギーを全部省略してサッサと「解決金」に変えることができるので、実は労働者側にも企業側にもメリットのある制度なんですよね。不当解雇裁判が減って食えなくなる一部の弁護士さんとかは大反対すると思いますけど。

・金銭解決制度導入により無駄がなくなる

・弁護士は仕事が減るので反対する

というのが興味深いと思いました。

ということで、今後の自民党総裁選での議論の進展に注目したいと思います。

立憲民主党の代表選でも議論がされることをわずかながらも期待しています。

↓もしよろしければ応援クリックお願いします。
人気ブログランキング

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

コメント

  1. 4-YouMe より:

    建設的な議論になってよかったです。

    本来は、直ぐにここまでの話へ発展させる意図はなかったのだろうと思いますが、極端に理解力が欠如しているジュニア君のおかげで、思いがけず現実的になり盛り上がっています。このお話は、一般の自民党員さんたちでも、以前からしっかりと問題意識を持ってきた方は少ないでしょうから、焦点にするつもりではなかったはずです。

    一定以上のレベルのリスキリングを行い成功できる人は、多く見積もっても1割はいないと思います。そして、0.1%程度の秀才だけが集まる中で、後の9割の人のことを調査して個人のためにも社会のためにもなるように制度設定して納得を得ることは、難問だろうと思います。

    それでも、お願いします。とりあえず定年まで頭を下げて入れば生活に困らない・・というのも不健康です。金銭解雇などが正常に行われ、ひとりひとりが役に立ち、世界が良くなるのを実感するのは幸せなことだと思います。