今回はJPYCについて。
まず、JPYCについての私の理解
・ブロックチェーンの仕組みによる通貨
・ただし、ビットコインやイーサリアムと違い、価格変動少なく1JPYC=1円
・JPYC社の収益方法がユニーク:ユーザーが日本円をJPYCに交換すると、JPYCはその資金を主に日本の短期国債の購入に充てる。つまり、JPYC社にはその金利収入が入ってくる。
今回、次の報道がありました。
PayPayに強力な対抗馬? 日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を金融庁が認可、今秋始動 https://t.co/PtzOomgIpl
— CNET Japan (@cnet_japan) August 19, 2025
記事内容の要約は以下。
なにが決まった?
JPYCが8月18日に**資金決済法37条の「資金移動業者」(第二種)**として登録。これにより、**1JPYC=1円で償還可能な“円建てステーブルコイン(電子決済手段)”**を日本で初めて発行できる体制に。今秋に発行・償還サービス開始予定。(JPYC株式会社, あたらしい経済, CoinDesk Japan)
- JPYC(新トークン)の中身
裏付けは円(預貯金・日本国債)で100%保全し、いつでも等価で円に戻せる設計。対応チェーンはEthereum/Avalanche/Polygonを予定。発行・償還手数料は原則ゼロで、ユーザー負担は各チェーンのガス代のみ。(JPYC株式会社, あたらしい経済)- 収益モデル
受け入れた円を短期国債等で運用する利息が主な収益源。世界のステーブルコイン発行体(例:USDT等)と同様のモデルで、発行残高の拡大に比例して収益が伸びる構図。記事では1兆円×年0.5% ≒ 年50億円の試算例を提示。(あたらしい経済)- PayPay/Suica等との違い(法制度と使い勝手)
既存の電子マネー(前払式支払手段)は加盟店管理義務などの枠組みで運用されるのに対し、JPYCは電子決済手段×資金移動業としてブロックチェーン上でウォレット間の自由な移転が可能。ガス代のみで即時・低コスト送金がしやすいのが利点。(金融庁)- マネロン対策・セキュリティ
改正法に基づく電子決済手段の規制のもと、不正時の凍結・停止などガバナンス機能を備える前提で運用。事業者側の監視・通報や体制整備が求められる。(金融庁, e-Gov 法令検索)- 現時点の制約と今後
JPYCは第二種資金移動業のため、1件あたり送金上限は100万円(第一種は上限なし)。将来的には第一種取得や制度運用の成熟で、B2Bの高額決済や越境決済への展開を狙う方針。(財務局)—
ひとことで言うと、「ブロックチェーン版・償還可能な“円”」を、法制度に乗せてJPYCが今秋から実装。低コスト即時送金×国債運用モデルで普及を狙い、当面は小口決済や事業者間送金から広がり、将来は第一種化で大口・越境へ――という見取り図です。(JPYC株式会社, CoinDesk Japan)
今回の件で、どういうことが起こり得るのか?私なりの見解です。
本日報道JPYC承認について
考えられるメリット:
①国際送金が低コスト・高速化で企業競争力UP
②DeFi(=分散型金融=中央銀行なしの金融サービス、ブロックチェーンで運用)拡大で新産業・雇用創出
③円の国際需要増で通貨地位強化。経済成長&地位向上期待!
3年前の国会質疑が懐かしいです。 https://t.co/Lmkajv2O9G
— 浜田 聡 前参議院議員 NHKから国民を守る党💉💉💉 YouTubeやブログは毎日発信 (@satoshi_hamada) August 17, 2025
2022年、参議院財政金融委員会で資金決済法の質疑があった際に、岡部社長からの相談内容を踏まえて質問をさせていただきました。
JPYCについて参議院財政金融委員会で質疑がありました。
浜田先生ありがとうございます!
皆様も是非ご覧ください。浜田聡の質問 参議院 財政金融委員会 2022年06月03日 DCJPYとJPYC、国防費の増額、国内の規制の数、所得制限、等 https://t.co/eQ5xydWikB @YouTubeより
— 岡部典孝 JPYC代表取締役 (@noritaka_okabe) June 3, 2022
以下、参考までに2年前にJPYC社の岡部典孝社長が出演した番組です。
JPYC社の岡部社長が出演している番組です。
動画の要約は以下。
要約(かみくだき版)
- 何がニュース?
改正資金決済法が6月1日に施行。日本でも円建てステーブルコイン(法定通貨と1:1で連動・償還可能)の国内発行が解禁された。- ステーブルコインとは
ブロックチェーン上で発行され、法定通貨(円・ドル等)に価値を連動させたコイン。
広義:1円=1コインを目指すもの全般。
狭義(今回の法の想定):「電子決済手段」としていつでも円に戻せる設計のもの。- ポイント/○○Payとの違い
取引が即時で、プログラム(スマートコントラクト)で自動化しやすい。加盟店網を経由せず発行体で1円償還が前提→手数料を圧縮しやすい。ブロックチェーン上の取引は公開され分析可能(匿名性は限定的)。- 法改正で何が変わる?
これまで事実上不可だった「円に完全償還できるコインの発行」が、銀行や資金移動業などのライセンス事業者なら可能に。
併せてAML/CFT対策や盗難時の凍結・停止機能などのガバナンスが前提。- JPYC(岡部氏)の現状と方針
既存のJPYCはプリペイド型(円に直接戻せない)で約17.8億円発行。
新制度下では償還可能な“真の”円建てステーブルコインを別に発行する準備。
収益は準備資産(主に国債)の利息や、決済の薄利多売で狙う。送金手数料は極小化方針。- 期待される効果
企業間・国際送金の手数料大幅削減と即時化、為替コストの低下。
海外大手と共通規格でつながれば、**低コスト両替(例:0.1%)**や即時送金も視野。
地方銀行が地域内デジタル決済インフラとして発行→地域経済のDXに活用。- リスクと対策(議論の焦点)
- 不正利用・マネロン:パネル側(ひろゆき氏ら)は「仮想通貨は悪用されやすい」と懸念。
→ 岡部氏:凍結・停止機能を標準装備、AIで異常検知、100%資産保全などで対処。- セキュリティ/鍵紛失・誤送金:銀行のような最終救済が難しいのでは?
→ 岡部氏:**マルチシグ(複数承認)**等の運用でリスク低減。- コストと採算:送金手数料を下げると事業は成り立つのか?
→ 国債利息+決済拡大でカバーする構想。ただしAMLコストは高いのが現実。- 銀行/CBDCとの関係:当面はスタートアップ先行、将来銀行参入も。デジタル円(CBDC)が出れば最大の競合。
- 個人利用の意味は?
低金利の預金と比べ直接の旨味は薄いとの指摘も。決済・送金インフラとしての価値が中心で、まずは小口・特定用途から広がる見立て。- 総括
日本でも償還可能な円建てステーブルコインが合法化され、実装・実証フェーズへ。
利便性(即時・低コスト)と安全性(AML/凍結・ガバナンス)の両立が鍵。
B2B/越境送金・地域通貨的ユースケースから普及し、規模拡大とともに銀行・CBDCとの役割分担が問われる。
参考までに、上記動画と今回の認可についての関係は以下の通り。
要点だけつなぎます。
- 今回の「認可」の中身
JPYCは2025年8月18日に**資金決済法第37条の「資金移動業者」(第二種)**として登録(関東財務局長 第00099号)。これにより、円と1:1で償還可能な“電子決済手段(=円建てステーブルコイン)”を自社発行できる立場を正式に得ました。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES, あたらしい経済, note(ノート))- 動画のポイントとの関係
動画で触れていた改正資金決済法は「ステーブルコイン=電子決済手段」を銀行・資金移動業者・信託会社などが発行できる枠組みを整えたもの。JPYCの登録はその枠組みを実際に使う“第一号”の具体例です。(金融庁, レッジャーインサイト)- 何ができるようになる?(従来JPYCとの違い)
以前のJPYCはプリペイド型(広義のステーブル)で円に直接戻せない設計でしたが、今回の登録により**新しいJPYCは“いつでも円に償還可能”な狭義のステーブルコイン(電子決済手段)として発行・償還が可能に。裏付け資産は円(預貯金・国債)**で保全し、1JPYC=1円の等価交換を前提とします。(JPYC株式会社, プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES)- 今後の提供見込み(会社発表ベース)
JPYCは発行・償還サービスを秋ごろ開始する計画で、Ethereum / Avalanche / Polygonでの発行を想定と公表しています。(あたらしい経済)ひとことで言えば、動画で説明されていた新制度の“本命ユースケース”が、JPYCの登録で実装段階に入った、という位置づけです。
現状、私個人がJPYCを購入して使う機会はなさそうです。海外送金の機会がほとんどないので。
ですが、JPYCが発展することで日本社会が発展することには期待しています。
結論から言うと――**条件付きで“好影響が出やすい”**です。広がり方しだいで、プラス効果は確かに見込めますが、制度面・実装面の前提を満たさないと伸び悩みます。
期待できるプラス効果
- 決済コストの低下と即時化
JPYCは「電子決済手段」として発行・償還が可能になり、ブロックチェーン上での即時・低コスト送金を前提に設計されています。B2B送金や越境決済の摩擦が減れば、企業の資金回転が良くなりやすいです。制度が“決済”ユースケースを想定して整備された点は追い風です。 (CoinDesk Japan, 金融庁, Reuters)- 中小事業者の手数料圧縮→投資余力
既存の前払式(加盟店管理が必要)と異なり、資金移動業型の電子決済手段はウォレット間移転の自由度が高い設計。これが広がれば、決済手数料の圧縮余地が拡大し、中小店舗の収益改善・価格転嫁の抑制に寄与し得ます。 (金融庁)- 国際送金・輸出入の効率化
海外との即時決済が進めば、為替・送金コストの逓減が期待できます(相互運用の進展が条件)。世界的にもステーブルコインは「速く安い取引」を押し上げています。 (Reuters)- 安全資産(JGB)を裏付とする設計→制度順守の担保
円・国債などで100%保全し、いつでも等価償還可能――という設計がユーザー保護・信頼に寄与します(発行体の適切な運用が前提)。 (CoinDesk Japan)参考:JPYCは第二種資金移動業の登録で発行・償還を表明(今秋開始予定)。初期はEthereum/Avalanche/Polygon対応と報じられています。 (JPYC株式会社, CoinDesk Japan)
ただし、マクロに効かせる“条件”
- 上限の壁(第二種=1件あたり100万円)
本格的なB2B大口決済には不向き。第一種への移行や制度運用の成熟が広がりの“鍵”です。 (財務局, 金融庁)- 受け入れ先(加盟店・会計/税務連携)の整備
ウォレットが自由でも、実店舗・EC・会計システムが対応しなければ回らない。UX/KYC/会計処理の滑らかさが普及のボトルネックになり得ます。(一般論)- AML/CFT・セキュリティ対応の継続コスト
凍結・停止等のガバナンスは制度要件ですが、実務コストは重い。軽すぎる運用は信頼を損ね、重すぎる運用は利便性を損ねます。バランスが重要です。 (金融庁)- 銀行預金からのシフトと金融仲介への影響
発行残高が大きく伸びると、預金の一部がJPYC裏付資産(預貯金・JGB)へ移る可能性があり、銀行の貸出余力や金利環境への影響は設計次第。プラス/マイナス両睨みが必要(一般論)。ネットで話題の「国債金利への好影響」について
JPYC側は、発行残高の拡大で国債保有が増え金利抑制に寄与し得るという趣旨を示しています。ただし、実際にイールドを動かすほどのマクロ効果になるかは“発行規模”次第で、短期に断言はできません(現時点では“事業者の見解”の域)。 (千葉テレビ)
まとめ
- ミクロ(事業者・ユーザー)では:手数料圧縮・即時化・越境の容易化など明確な効率化メリットがあり、経済活動を下支えしやすい。 (Reuters)
- マクロ(日本経済全体)では:第一種化・相互運用・受け入れ網・AML運用の“4点セット”を満たして発行残高が十分に拡大すれば、プラス効果が可視化していく余地は大きい――ただし条件付き、という評価が妥当です。 (財務局, CoinDesk Japan, 金融庁)