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地政学 ランドパワー vs シーパワー 

今回は地政学に関して。

教訓としては、地政学で述べられるランドパワー(大陸大国)、シーパワー(海洋大国)の両者には注目する必要があるのでは?ということです。

地政学者、奥山真司さんのポスト。

米海大のペイン教授による「アメリカよ、海洋大国であれ」とするエッセイがフォーリン・アフェアーズ誌に掲載。

大陸大国になると周辺国との領土争いから「帝国的過剰拡大」に陥りやすく、結果的に自滅すると同時に国際システムまで不安定にすると分析。

興味深いのは、トランプ政権が大陸大国になろうとしていると述べている点。

古典地政学の用語を使わずに地政学的な大戦略論を展開する典型的なエッセイとしても注目。

https://www.foreignaffairs.com/united-states/land-or-sea-paine

紹介リンクの冒頭無料部分のみ共有。

By Land or by Sea
Continental Power, Maritime Power, and the Fight for a New World Order
S. C. M. Paine
September/October 2025 Published on August 19, 2025

Great-power competition once again defines international relations. But the exact contours of today’s contest remain the subject of debate. Some observers emphasize ideological precedents from the Cold War. Others focus on changing military balances. Still others highlight leaders and their choices. In truth, modern conflicts over the international system flow from a long-standing, if unrecognized, disagreement over the sources of power and prosperity. The dispute originates from geography, and it has produced two antithetical global outlooks: one continental and the other maritime.

和訳が以下です。

大国間の競争が再び国際関係を特徴づけている。しかし、今日の競争の正確な輪郭は依然として議論の的となっている。冷戦時代のイデオロギー的先例を重視する論者もいれば、軍事バランスの変化に注目する論者もいる。さらに、指導者とその選択に注目する論者もいる。実のところ、国際システムをめぐる現代の紛争は、力と繁栄の源泉をめぐる、長年にわたる、たとえ認識されていなくても、意見の相違から生じている。この論争は地理的な問題に端を発し、大陸主義と海洋主義という、相反する二つの世界観を生み出してきた。

というわけで、以下では地政学に関する奥山真司さん解説の動画2本(+その要約)を紹介します。

動画の要約は以下。

かみ砕き要約(動画「地政学入門」)

3行まとめ

  • 地政学は「地理(地形・ルート・拠点)」で国際政治の動きを読む見方。
  • 世界史は大きく「ランドパワー(陸) vs シーパワー(海)」のせめぎ合いとして捉えられる。
  • ルート(海峡・河川・北極海)と水資源は経済と軍事の両面で“武器化”され、今日の安全保障リスクの核心になっている。

本編の要点

  • 地政学とは:国際政治を戦略的・地理的制約から読む方法論。怪しげに見られがちだが、悪用を防ぐためにも知っておく価値があるという立場。
  • ランドパワー vs シーパワー
    • ランド:ロシア・中国・(歴史的に)ドイツなど。内陸重視で治安維持や領土一体性に強い関心。
    • シー:英国・米国・日本など。海軍力と交易で外に展開。
    • 日本は地理は海洋国家だが、歴史的に内向き=ランド的側面も持つ。
  • ハートランド/リムランド(マッキンダー)
    • ハートランド=ユーラシア中核(ロシア中部など)。
    • リムランド=沿岸帯。貿易・人口・産業が集まり衝突が起きやすい。
  • ウクライナ戦争の位置づけ
    • ハートランド側(ロシア)がリムランド(ウクライナ)へ進出。
    • NATOは海洋勢力+リムランド諸国の連合としてロシアを二重封じ込めしてきた歴史的機能。
    • ロシアにとってウクライナは外洋へ出る“最初の踏み石”で、地政学的に死活的重要。
  • ロシアの拡張ルート観
    • 伝統ルート=バルト海・黒海(ボスポラス経由)・中央〜南アジア方面など。
    • 北極海航路は温暖化で重要性が上昇。外へ出る道=逆に外から入られる道でもあり、支配・遮断を重視。
  • 中国の一帯一路
    • 陸路はランド国家同士の警戒・摩擦で難度高。
    • 海路は港湾拠点づくりで比較的前進。
    • 国家の性格は基本ランドだが、海へのアクセス(マラッカ海峡の脆弱性)克服を模索。
  • 水の“武器化”
    • 河川は交易路=軍事進攻路の両面(デュアルユース)。
    • チベット高原はアジア大河の水源。上流国のダム建設(例:メコン上流)で下流国の水量が変動し、政治問題化。
    • 欧州は国際協定で摩擦を抑制してきたが、東南アジアでは枠組みが弱く緊張が生じやすい。
    • 中国国内は南北の水偏在が大きく、大規模な南水北調など“水”を国家戦略として扱う。
  • 日本の水源・森林買収問題
    • リスク評価は意見分かれるが、将来的な水不足リスクや規制の緩さを踏まえ、一定の管理・統治の強化は必要との指摘。
  • チョークポイントのリスク
    • バブ・エル・マンデブ、マラッカ海峡などで通航が阻害されると物流費・物価に直結。
    • 北極海・“北回り”航路の地政学的価値が上がる一方、そこを誰が管理するかが争点。

示唆(日本向け)

  • “ルート(海峡・河川・港)”と“拠点(基地・港湾・補給地)”、そして“水資源”の三位一体管理が安全保障・経済安保の核心。
  • 法制度(外資規制・水源保全・重要港湾管理)と同盟/連携(シーレーン防護、インド太平洋協力)の同時強化が肝要。

上記と同じチャンネルでの後編動画を紹介します。

要約は以下の通り。

かみ砕き要約(動画「ルートが世界を変える/拠点で世界をコントロール」)

3行まとめ

  • 交易や軍の“通り道”(海峡・運河・航路・陸路)が変わると、世界の秩序と経済が動く。
  • 海のボトルネック(チョークポイント)と新航路(北極海など)は、価格・供給網・安全保障に直結。
  • 覇権は「点(基地)と同盟のネットワーク」で維持される。米国は海洋拠点+同盟で成功、中国はランド性が強く拠点作りが難航。

1) ルートが世界を変える

  • 海運シフトの歴史:大航海時代以降、陸路中心→海運中心へ。通れなくなると世界経済に即ダメージ。
  • チョークポイント:マラッカ海峡/台湾海峡/ホルムズ海峡/バブ・エル・マンデブ/スエズ運河。
    • 近年はバブ・エル・マンデブ周辺の攻撃で通航が大幅減→保険料高騰・アフリカ南回り増加→運賃上昇・物価に波及。
    • 具体例:欧州の部材や食品の遅配・値上がり(家具、靴底部材など)も発生。
  • パナマ運河の地政戦略:マハンが重視。米国の海洋大国化の鍵として建設・管理。大量輸送の効率が桁違い。

2) 新しい/迂回ルート

  • 北極海航路:氷減少期に通行可能。距離・燃料・通行料の面で約3割短縮のメリット。
    • ただしウクライナ戦争後、西側は政治的に利用を忌避。中国は活用志向。
  • 南米横断ルート:ブラジル内陸~チリ太平洋岸を結ぶ道路整備(パラグアイが中核)。
    • 雨期の寸断解消へ舗装・排水路整備が進展。アジア向け農畜産物流の大動脈化が期待。
    • パラグアイは台湾と国交を持つ数少ない国で、対中関係でも地政的に注目。

3) 拠点で世界をコントロール(米・中の対比)

  • 米国のやり方
    • モンロー主義→地域覇権確立→パナマ運河→世界展開。
    • **「点(海空軍基地)」+「同盟ネットワーク」**でシーレーンの自由を守る(航行の自由作戦など)。
    • 英国の海洋覇権モデルを継承(ディエゴガルシア、横須賀ほか)。
  • 中国のやり方と限界
    • ハンバントタ(スリランカ)、グワダル(パキスタン)等で拠点化を試みるが、**ランド的発想(線を引く/面で囲う)**や債務依存で反発を招きやすい。
    • マラッカ・ジレンマへの恐怖:封鎖リスクを回避すべくミャンマーやパキスタン側ルート、クラ運河構想などを模索(実現は難航)。
    • 台湾の戦略価値:確保できれば太平洋深海域への潜水艦展開が容易になり、Cパワー化の“切り札”になり得る。

4) ランド×シーの両立は難しい

  • 歴史的に両立は内部対立・予算争奪で破綻しがち(日本・独は失敗、仏は部分的)。
  • 米国は海洋寄りに軸足を移し成功した一方、内陸長期介入(ベトナム・アフガン・イラク)は失敗例。
  • 中国も内陸課題(新疆・チベット・印中国境)に引き戻されやすい。印との連携などで中国の注意を内陸へ向けさせる発想は有効。

5) ニュースを読むコツ(実務ヒント)

  • リムランド(ユーラシア沿岸帯)での出来事を連動して見る:中東・ウクライナ・台湾は同一回路上の現象。
  • 供給網・価格波及を常にセットで把握:通行妨害→保険料↑→運賃↑→輸入価格・CPIに波及。
  • 日本の要所:マラッカ~スエズの安定、北極海の政治・保険動向、南米新ルートの整備状況、国内港湾・基地・同盟の運用。

—以上です。

地球儀をイメージしながら政治をかんがえていきたいものです。

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