今回は(も)私が政策立案でお世話になっている救国シンクタンク(チャンネルくらら)の動画から。
要約は以下の通り。
元陸上自衛隊陸将の小川清史氏が、緊迫する中東情勢とそれが東アジアに及ぼす地政学的リスク、そして日本の防衛体制の課題について、軍事のプロの視点から踏み込んで解説した内容をさらに詳細にまとめます。
1. 米軍の「2003年以来」の最大展開と攻撃の現実味
空前の軍事圧力: 現在、米軍は2003年のイラク戦争以来と言われる規模で戦力を中東に集結させています。空母2隻体制(リンカーン、ルーズベルト)に加えて3隻目の派遣も視野に入っており、B-2ステルス爆撃機やF-35、F-22といった最高水準の航空戦力が展開しています。
「恫喝」の先の限定攻撃: 小川氏は、現時点での米軍の動きは「本格的な全面戦争」というよりは、交渉を有利に進めるための「恫喝(強力な軍事圧力)」であると分析します。しかし、トランプ大統領の気質や過去の行動を鑑みると、外交が不調に終わった場合には、躊躇なく「限定的な軍事攻撃」に踏み切る可能性が高いと見ています。
ミサイル増産施設へのピンポイント攻撃: 攻撃の標的については、核施設よりも「弾道ミサイルの増産拠点や基地」が優先されると予測しています。その理由は、イランのミサイル能力がイスラエルや米軍の防空システムを突破する「飽和攻撃」のレベルに達することを、米国は死活的な脅威と見なしているためです[00:04:32]。
2. イラン指導部の心理とエネルギー安全保障の検証
最高指導者ハメネイ師の合理性: ハメネイ師が地下に潜伏し、権限を息子に移譲し始めているとの報道に対し、小川氏はこれを「独裁者特有の冷静で計算高い行動」と評価します。無謀な心中を図るのではなく、体制維持のために自己の安全を最優先する性質は、米国側からすれば行動予測が立てやすく、むしろ抑制が効きやすい面もあると指摘しています。
ホルムズ海峡封鎖の実態: 海峡が封鎖された際の影響については、冷静な対応を求めています。長期の封鎖は他の中東諸国の利益も損なうため、封鎖が継続できたとしても数日から数週間が限界です。日本には240日分の石油備蓄があり、一時的な供給遮断でパニックに陥る必要はないと断言しています。
3. 世界の「多正面作戦」と日本の重い責任
米国の負担とアジアの空白: 現在の米国は、ウクライナ、イスラエル、ベネズエラ、そしてイランという「多正面」での対応を強いられています。米国としては中東へのリソースを削りたがっており、その分、東アジア(特に台湾・尖閣周辺)における抑止力の維持を、最も信頼できる同盟国である日本に委ねようとする圧力が強まっています。
「火の粉を外で止める」防衛への転換: 台湾有事は尖閣諸島と直結しており、中国が台湾を掌握すれば、石垣島周辺までが中国の領土扱いになりかねません。小川氏は、自分の領土が攻撃されるのを待つ「専守防衛」の従来の解釈から脱却し、事態が悪化する前に領土外で紛争を止める「抑止力」の強化こそが、日本にとって最大の国益であると主張しています。
4. 自衛隊の法的位置づけに関する抜本的提言
ポジティブリストからの脱却: 現在の自衛隊は「警察権限」の延長として、法律に書かれたことしかできない「ポジティブリスト方式」で運用されています。小川氏はこの法体系が、米軍との共同作戦や高度な軍事行動の障害になっていると指摘します。
軍事組織としての再定義: 憲法9条に自衛隊を明記するだけの議論を不十分とし、自衛権を根拠とした「軍事組織としての法体系(ネガティブリスト方式:国際法に反しない限り自由に行動できる体系)」への刷新を提言しています。これは数年かかる憲法改正を待たずとも、政治家の強い決断による「自衛隊法改正」で早期に実現可能であると強く訴えています。
この解説は、中東の火種がどのように日本の安全保障と法整備に直結しているかを解き明かしたもので、非常に密度の高い内容となっています。
重要ポイントに注目。
小川清史氏(元陸上自衛隊陸将)という、実際に自衛隊の運用を司ってきたトップエリートならではの視点には、既存の大手メディアや新聞ではなかなか触れられない「軍事のリアリズム」が凝縮されています。
特に以下の3点は、専門家ならではの極めて鋭いポイントです。
1. 「独裁者は逃げ回るからこそ読みやすい」というリアリズム
既存メディアでは、独裁者を「何をするかわからない狂気的な存在」として描きがちですが、小川氏は正反対の評価をしています。
ポイント: ハメネイ師が地下に潜り、息子に権限を移譲し始めているという「保身」の動きを、小川氏は**「極めて理性的で計算高い行動」**と捉えています。
深掘り: 死を恐れず突っ込んでくる殉教者よりも、自分の命と体制の存続を最優先する独裁者の方が、軍事的な「損得勘定」が働くため、行動予測が容易であり、抑止も効きやすいという、実戦指揮官ならではの「敵」への向き合い方が示されています。
2. 憲法明記よりも「ポジティブリスト」の解消が急務であること
日本の大手メディアでは「憲法9条に自衛隊を書き込むか否か」という神学論争ばかりが報じられますが、小川氏はそこに一石を投じています。
ポイント: 自衛隊を憲法に書くだけでは現場の役には立たず、「警察予備隊以来の警察法的な法体系」を「軍事組織の法体系」に作り変えることこそが本質であると断言しています。
深掘り:
既存メディアが言えない点: 自衛隊は現在「法律に書いてあること以外はやってはいけない(ポジティブリスト)」という警察と同じ縛りで動いています。しかし、世界の軍隊は「国際法で禁止されていないことは何でもできる(ネガティブリスト)」のが常識です。
この「警察の延長」としての法体系こそが、有事の際に米軍との共同作戦を著しく制限し、自衛官を法的に危険に晒しているという現場の危機感を、政治家への提言としてぶつけています。
3. 「火の粉が降りかかる前に外で止める」という積極抑止
メディアの「専守防衛」の議論は、日本列島が戦場になることを前提としがちですが、小川氏はその「外」での防衛を強調しています。
ポイント: 台湾有事は尖閣有事そのものであり、日本が「自分の土地がやられてから反撃する」のでは外交の失敗である。
深掘り: 存立危機事態を適用し、米軍や台湾と協力して**「日本の領土外で紛争を止める(=火の粉を外で払う)」**ことが、結果として最も日本国内の被害を抑え、早期に紛争を終結させる唯一の道であると語っています。これは「戦争に巻き込まれる」という表現を好む既存メディアの論調に対する、軍事的なカウンター(対論)になっています。
このように、小川氏は「法的な建前(憲法論争)」よりも「運用の合理性(どうすれば戦わずに済むか、戦うならどう被害を最小にするか)」という極めて実務的な視点で語っています。
自衛隊を警察の延長から、国際標準の軍隊へ、とすることが重要なのだと思います。