今回はアルメニアとアゼルバイジャンです。
アゼルバイジャンはカスピ海と接して位置しており、その西にアルメニアがあります。西にトルコ、南にイランがあることを押さえておきます。
アゼルバイジャン領内にナゴルノカラバフという飛び地?があり、ここはアルメニア系住民がおり、領土問題となっています。
また、アルメニア南方にもナヒチェバンというアゼルバイジャンの飛び地があります。
ロシアのオベルチュク副首相は15日、米国の仲介で長年の対立から和平に前進したアゼルバイジャン・アルメニア関係を巡り、アルメニア領を経由してアゼルバイジャンの本土と飛び地ナヒチュバン自治共和国を結ぶ物流ルート「トランプ回廊」の創設を支持すると表明した。 https://t.co/zAWYHIceDO pic.twitter.com/lv9NzbyKto
— akazukin7777 (@akazukin7777) August 18, 2025
ラチン回廊の位置をチェックしておきます。
記事中の図をお借りして、第三次ナゴルノカラバフ(アルツァフ共和国)紛争における、アゼルバイジャン軍の目標を推定します。
①ラチン回廊制圧によるアルメニア・アルツァフ共和国間の連絡の遮断
②ナゴルノカラバフの首都ステパナケルトの制圧およびアルツァフ共和国の解体… https://t.co/xYas5ccfmd pic.twitter.com/A3YXUkIHNw— MASA(航空宇宙・軍事) (@masa_0083) September 19, 2023
動画の要約は以下。
以下をコンパクトに要約します。
概要
- テーマ:ナゴルノ・カラバフを巡るアルメニアとアゼルバイジャンの紛争史と、2023年9月の軍事行動の背景・帰結。
- 結論:ロシアの影響力低下とトルコの支援を背景に、アゼルバイジャンが短期作戦で同地域を実効支配。アルメニア系住民は10万人超が避難し、人道危機が発生。
歴史的経緯(超要点)
- 旧ソ連下でアルメニア人多数居住のナゴルノ・カラバフは、スターリン裁定でアゼルバイジャン領の自治州に。
- 1991~94年の第1次戦争:アルメニア側が優位に立ち、同地域と周辺を実効支配。ロシア仲介で停戦。
- 支持構図:アゼルバイジャンはトルコが後ろ盾。アルメニアはロシアと同盟だが、ロシアは基本的に仲介者姿勢。アルメニア・ディアスポラが欧米に影響力。
近年の推移
- 2020年(第2次):トルコ支援を受けたアゼルバイジャンが挽回し、支配地を大幅に奪還。ロシア平和維持部隊が展開、ラチン回廊(アルメニアと同地域を結ぶ唯一の陸路)を維持する枠組みへ。
- 2022年以降:ロシアのウクライナ侵攻で存在感が低下。
2022年末からアゼルバイジャンがラチン回廊を封鎖し、同地域は物資不足の人道危機に。2023年9月の軍事行動と結果
- アゼルバイジャンが「対テロ作戦」として電撃的攻勢(約48時間でアルメニア系武装組織を無力化)。
- ロシア平和維持部隊も有効に機能せず、アルメニア本国も支援不能。
- 住民の大量避難:9月末までに10万人超(推計人口約12万人) がアルメニアへ脱出。
- アゼル政府は権利保護を表明するも、相互不信と憎悪の連鎖で安全な共存は困難との見立て。
含意
- 勢力図:ロシアの影響力後退、トルコとアゼルの相対的台頭。
- 人道・安保:民族対立の固定化と難民問題が長期化するリスク。
- 外交:形式的停戦よりも実効支配の既成事実化が進んだ局面。
今回、アメリカがアルメニアとアゼルバイジャンの仲介をしました。
米仲介で和平向け宣言署名 - アゼルバイジャンとアルメニアhttps://t.co/kVT1Wa7PAF
— 共同通信公式 (@kyodo_official) August 8, 2025
救国シンクタンクのレポートを紹介します。
救国シンクタンク注目ニュース 2025/08/07~2025/08/13
このニュース解説は本文全て上記リンクで読むことができます。
ポイントの一つが、アゼルバイジャンの本土と南部の飛び地ナヒチェバンを結ぶザンゲズール回廊です。
#アルメニア のパシニャン首相は9日、前日に米ホワイトハウスで交わした隣国 #アゼルバイジャン との和平合意について、合意内容に含まれている「ザンゲズール回廊」計画が実現すれば、「アルメニアと #イラン を結ぶ鉄道網が実現する」として意義を強調しました。 pic.twitter.com/6wyTCWcQXR
— ParsToday Japanese (@ParsTodayja) August 9, 2025
このザンゲズール回廊の南に、イランを通るアラス回廊もあります。
制裁下のイランにおける国際輸送回廊構築と近隣外交の課題:パキスタンとアゼルバイジャン共和国との関係に焦点を合わせて(公益財団法人・中東調査会)
以下、要約。
以下を“かみ砕き版”でまとめます。
一言で
米国(トランプ大統領)仲介で和平宣言。核心は、アゼル本土–飛び地ナヒチェヴァン–トルコを結ぶ「ザンゲズール回廊(TRIPP/通称トランプ・ブリッジ)」の実現。
→ ただしイランとロシアの反応次第で実効性は不透明。何が起きた?
- 2025年8月8日、アゼルバイジャンとアルメニアが米仲介で和平に向けた宣言に署名。
- 背景には、2024年末のアゼル機撃墜や2025年6月の在露アゼル人逮捕でロシア—アゼル関係が悪化し、ロシア仲介の線が消えたことがある。
合意の“肝”
- TRIPP(トランプ・ルート)/トランプ・ブリッジ:
アルメニア南部(スユニク)を通る**「ザンゲズール回廊(アルメニア側呼称:スニク道路)」をアゼルの実質管理下に置き、
アゼル本土⇄ナヒチェヴァン⇄トルコを陸続きで直結**させる構想。なぜイランが強く反発?
- 国内アゼル系(人口の約3割)への刺激を警戒(アゼルの民族主義高揚の波及懸念)。
- 回廊開通で、アルメニア経由の通商ルートが脇道化し、経済打撃。
- さらに、メグリ周辺に新国際空港計画があり、アゼルはイスラエルと友好関係→イスラエル機運用の可能性はイランの安保上の脅威。
代替案としての「アラス回廊」
- 2023年、アルメニアを迂回しイランを通る「アラス回廊」案をアゼルが提示。
- 同年12月、アラス川沿いの国境陸橋が開通するなど一部インフラは始動。
- それでも今回の合意はザンゲズール回廊を再び軸に。
米国の狙い(見立て)
- 露—アゼル関係の冷却、イランを巡る局面(テキストでは米による核施設攻撃後の“事実上の無力化”を前提視)を踏まえ、
イスラエル—イラン紛争の「戦後処理」の一環として和平を今進める好機と判断。ここからの焦点
- 実装の可否は当事国以上に:ロシア・イランの出方に左右。
- 実務課題:回廊の主権・管轄(警備・通行権)設計、第三国(トルコ・イラン・イスラエル)関与の線引き。
- 地域秩序:アゼル—トルコの陸路接続が定着すれば、南コーカサスの力学が大きく再編。
最後に、参考までにアルメニア・アゼルバイジャンと日本との関係概要は以下。
ざっくり言うと――どちらの国とも日本は友好・実務中心の関係で、和平の動きも日本は歓迎しています。以下ポイントだけ押さえます。
アゼルバイジャン × 日本
- 外交:1992年に国交樹立。日本大使館はバクー(2000年開設)、アゼルバイジャン大使館は東京(2005年開設)。日本は2025年8月9日の和平に向けた共同宣言を歓迎と表明。(外務省)
- 安全・連携:2025年6月、日本人のイランからの退避で受けた支援に対し、日本外相がアゼルバイジャン側へ感謝状。(外務省)
- 経済・エネルギー:日本企業(INPEX、伊藤忠など)がACG油田とBTC原油パイプラインの権益を保有。最新の公開情報では ACG:INPEX 9.31%、伊藤忠 3.65%;BTC:INPEX 2.50%、伊藤忠 3.40%。(bp global)
2023年の対日貿易は、日本→アゼルバイジャン 826億円、アゼルバイジャン→日本 182億円。(外務省)- 制度整備・交流:日・アゼルバイジャンの新租税条約は2023年8月4日に発効。2025年は大阪・関西万博のアゼルバイジャン・ナショナルデー関連行事にも日本側政務官が出席。(外務省)
アルメニア × 日本
- 外交:1992年に国交樹立。日本大使館はエレバン(2015年開設)、アルメニア大使館は東京(2010年開設)。日本は2025年8月9日の和平に向けた共同宣言を歓迎。(外務省)
- 経済・制度:日・アルメニア租税条約を2024年12月26日に署名済み(投資・往来の基盤づくり)。2024年の対日貿易は、日本→アルメニア 341億円、アルメニア→日本 666億円。(外務省)
- 開発・人道支援:2025年2月、日本×UNICEFでナゴルノ・カラバフ避難民等の子どものメンタルヘルス支援(約300万人規模のサービス到達目標)の交換公文を締結。1月にはJICAがACBA銀行へ5,000万ドルの融資(農業・中小企業の資金アクセス改善、避難民受け入れ地域も対象)。
全体像(いまの関係)
- 日本は南コーカサスの安定を重視し、和平プロセスを支持。ビジネス面はエネルギー案件でアゼルバイジャンがやや厚め、開発・人道・金融支援はアルメニアでの案件が目立つ、というバランスです。(外務省)