今回は(も)私が政策立案でお世話になっている救国シンクタンク(チャンネルくらら)のライブ配信を取り上げます。
重要な議論が盛沢山でした。まずポイントをまとめます。
- 安全保障:国を守るなら、まず国力を削ぐ増税を止めろ。
- 防衛費:金額より「中身」と即効性で強化せよ。
- 中国対応:主敵は中国、だから経済基盤を弱める政策は自殺行為。
- 核議論:封じずに、現実の代替策まで含めて議論せよ。
- オフレコ:漏れる前提の癒着装置は廃止せよ。
- 記者クラブ:特権と情報統制の温床、解体が筋。
- 情報保全:情緒ではなく法(スパイ防止等)で守れ。
- 外国人政策:人数上限と責任分担を決めずに拡大するな。
- 人権整理:国民固有の権利と普遍的人権を混同するな。
- 経済財政:減税の顔で時間差増税を仕込むな。
- 解散総選挙:争点は結局「減税か増税か」だ。
- 皇室論点:決められない野党は制度設計の主導権を失う。
要約は以下の通り。
全体構図(この回で一貫している軸)
- 「高支持率=政策が順調」とは限らず、分野ごとに 期待/様子見/懸念 の温度差がはっきりしてきた、という問題提起。
- 特に安全保障では「やるべきこと」と「やってはいけないこと(国力を削ぐ手段)」が混線しており、そこを切り分ける議論が中心。
- 外国人政策・メディア構造・経済財政(増税路線)まで、“国家の土台(国力)” をどう守るか、という一本の線でつながっている。
1) 安全保障:補正予算は評価、しかし「防衛増税」は国力を削ぐ(0:31〜)
補正予算の中身(司会の整理)
- 防衛省が補正で約8,472億円を計上。
- 隊員処遇改善、施設更新、弾薬・装備の前倒し、基地インフラ等、「今すぐ動く安全保障」を優先している点は評価、という流れ。
倉山氏:『合憲自衛隊』の狙い=憲法9条を変えなくても“今できる最大”をやれ
- 「憲法9条を変えないと何もできない」という思考停止を批判。
- 9条改正が明日実現するわけではない以上、現行憲法の枠内で自衛隊を実効的に運用できるようにする(ネガティブリスト化など)という方向性。
- そのために 法案(新自衛隊法)まで作って提示していることを活動報告として強調。
倉山氏:防衛力強化/防衛費増/防衛増税を「ごっちゃ」にするな
- ここが番組の主張の核の一つ。
- 防衛力強化(目的)と、防衛費増(手段の一部)と、防衛増税(財源手段)を同列に扱うのは飛躍。
- 「増税で国力が落ちたら、そもそも防衛の前提が崩れる」という論理で、増税を強く否定。
渡瀬氏:主敵は中国。対中競争で“税で自国を弱らせる”のは矛盾
- 安全保障の相手は基本的に中国、という前提整理。
- 法人税を例に「中国より不利な条件で日本企業に頑張れと言うのか」という問題提起。
- 法人税増税は賃金や経済全体にも波及し、軍事力を支える経済基盤を損ねると指摘。
- 結論として、防衛増税は「安全保障をやろうとして土台を自分で崩している」=大きな減点。
「前政権が決めたから」論への反論
- 「前政権決定だから変えられない」は、選挙や総裁選の意味を失わせる言い訳だ、という趣旨で強く批判。
- ただし番組内では、暴力肯定(“第二の山上”など)方向の発言は明確に否定し、「暴力による政治を否定」を強調して一度ブレーキを踏んでいる。
小川氏(元陸将):防衛費増の必要性は認めつつ、増税は不要という立て付け
- 中国の軍事費拡大(長期で大幅増)に対し、日本が横ばいだったことを踏まえ、防衛費の増額自体は必要と説明。
- 国産化や戦略文書改定の前倒し等、政権の一部動きは評価。
- ただし財源として増税が必要かは別問題で、「増税は必要ない」と明言。
- 政権基盤が脆弱でバーター的に飲み込まれた可能性、という“好意的解釈”も示す。
2) 核発言:議論を封じ、政争・情報操作に利用する構図への批判(12:22〜)
倉山氏:核は「必要性を議論できない国」になっている
- オフレコで「核保有すべき」との認識が出たなら、本来はそこで止めずに
- ではどう担保するのか(核シェルター/拡大抑止の確実化/NATO的議論 等)
- 核で脅されても屈するのか
のように次の政策議論に進むべきだ、という整理。- ところが現実は「発言を政権打倒の材料にする」方向に流れ、建設的議論が起きないことを問題視。
メディア・周辺反応への見方
- 中国・北朝鮮などが騒ぐこと自体が“情報戦に乗っている”可能性、という見立てが語られる。
- さらに「被団協が抗議するなら、中国や北朝鮮の核にも同じ基準で向けるべきでは」という趣旨の批判も出る(要は“日本だけ叩く形”への違和感)。
3) オフレコ/記者クラブ:癒着・統制の装置になっている(13:14〜19:04)
“オフレコ”の本来目的 vs 現実
- 本来は記者に基礎知識を与える趣旨、という説明がある一方で、
- 現実には漏れる/抜かれる=「もはや制度として成り立っていない」との批判。
渡瀬氏:オフレコ懇談は特権であり、記者の勉強不足を温存する
- 記者が自分で勉強して質問すべきで、特別扱いで教える必要はない。
- オフレコの内容を漏らすなら、なおさら制度として破綻している。
- だから 記者クラブも含めて廃止した方がいい、という強い結論。
小川氏:スパイ防止法など、法制度で情報管理のルールを作れ
- ルール不在で「足の引っ張り合い」になるのがまずい。
- 情報を守るための制度(スパイ防止法等)整備の必要性を示す。
4) 外国人政策:提言の一部が動き始めたが、最終的に“受入れの上限と責任分担”が曖昧(20:01〜)
司会の問題提起(数字の枠組み)
- 外国人が10年で約1.7倍、直近は年10%超ペース、という問題意識。
- 育成就労制度で受入れ人数を初めて明確化。
- OECD平均(人口比10%)への接近が早まる可能性があるのに、国として「移民国家になるのか」の根本議論が薄い、という指摘。
柳ヶ瀬氏・倉山氏:7つの提言を持ち込み、うち複数が政策化に近づいた
- 維新の共同代表への提言(7項目)を提示したと報告。
- 例として
- 帰化要件の厳格化(年数の逆転問題の是正など)
- 日本語要件の追加(コミュニケーション重視)
- 退去強制事由への犯罪類型追加
などが語られ、提言後に政府・与党方針に反映され始めたという認識。受入れ規模の見方
- 「3年で123万人」という話題について、実態は“毎年の増分としては約40万人程度を想定しているのでは”という読み(ここは番組内の理解)。
- ただし3年後以降や、他の在留資格(ビザ)を含めた全体設計は未確定で、1月の取りまとめが山場という整理。
小川氏:先行国は「財政収支にプラスか」などエビデンスで線引き議論をしている
- 学歴・所得階層などで、移民が財政に与える影響を分析して政策判断する例を紹介。
- 日本も治安・社会保障を含め、エビデンス型の制度設計が必要だという方向。
5) 人権と国民の権利:混同が政策迷走を招く(29:08〜)
倉山氏の整理(ここは論点提示が強い)
- 日本の“人権”は憲法3章の「国民の権利」と重なる部分が大きいが、完全に同一ではない。
- 外国人に無条件で認めてよい権利(例:内心の自由)と、
国民固有で認めてはならない権利(例:選挙権・被選挙権)、
中間領域(公務就任等の扱い)
を区別すべき、という主張。- 生存権(生活を成り立たせる権利)も含め、「日本で人間らしく生活できないなら帰国」という考え方が出され、コスト論とも結びつく。
企業の責任分担(国にコスト転嫁していないか)
- 「人手不足だから入れろ」という企業要請に対し、
受入れ・教育・社会統合などの費用を国に転嫁して利益だけ取っていないか、
という問題提起。- 災害対応で自治体が備えず自衛隊に“丸投げ”する構図に似ている、という比喩も出る。
6) 反グローバリズム論:叫ぶだけでは弱体化し、結局屈服する(34:12〜)
- 反グローバリズムを掲げても、各国が弱いままだと国際資本や現実の波に勝てず、結局屈服する、という見方。
- ベトナム等を例に、「反グローバリズム的に見えても資本主義が浸透している」現実を指摘。
- 結論としては、外に背を向けるより “グローバル環境で勝ち抜ける国家・国民の強化” が必要、という方向に着地。
7) 経済財政:減税を掲げつつ“時間差増税”を仕込む構造への強い警戒(37:30〜)
司会:減税政党が並びつつ、増税路線が固まりつつある
- 103万円の壁見直し等の“減税効果”がある一方で、
- 増税のラインナップが同時進行している矛盾を提示。
渡瀬氏:増税は経済を痛める。個別利害でなく「増税全体」を止めろ
- 金融所得課税、法人税、所得税、たばこ税…など、各層に刺さる増税が並ぶ局面。
- 「自分に関係ある税だけ反対」では連帯が起きず、結局やられる、という警告。
- ガソリン税なども「後で財源探し」=時間差増税の疑い。
- 「減税なのか増税なのか、政策の正体をはっきりさせろ」という主張。
倉山氏:防衛増税の本質=高支持率・株高・利上げ・増税で“既得権に都合が良い”構図
- (表現は抑えつつ)国民経済を豊かにして国を強くする方向より、「やってる感」で長期安定し得る危うさを示唆。
- 安全保障優先で多少の増税を飲んだ可能性、という評価も述べる。
柳ヶ瀬氏:経済成長なくして安全保障なし。今は増税ターンではない
- 需要が弱い局面での増税・利上げは明らかに不適切、という認識。
- 政権がやりたいことが多く、経済が犠牲になっていないかを発信し続ける必要がある、という着地。
8) 解散総選挙:争点は「減税 vs 増税」になり得る(終盤)
- 倉山氏:解散の理由は時に些末で、予想自体が難しいとしつつ、
制度論として「衆参同日選挙を3年に1回の慣例に」など、政治の安定性・責任の明確化を提案。- 渡瀬氏:今解散すれば争点は減税・増税反対になる。
その“状態を維持すること”が、追加増税の抑止として重要、という戦略的な見方。- 柳ヶ瀬氏:安全保障・外国人政策に一定の目処をつけた上で解散を、という優先順位。
さらに「消費税減税(消費税解散)」をやってほしいという提案。
9) 「皇室速報」:立憲の対応次第で、与党が強行採決に傾く可能性という見立て
- 立憲側が意見集約できないなら、与党内で「強行採決でもよい」空気が強まる、という話。
- 立憲が求めた案(女性皇族の扱い等)も、交渉停滞で“目減り”しかねない、という危機感を示す語り。
10) まとめ(番組の結論に近いもの)
- 安全保障は「防衛費の中身」「今すぐ動く投資」は評価しつつ、防衛増税は国力を削ぐので逆効果という立て付けが一貫。
- 核や情報の議論を封じ、メディア癒着(オフレコ・記者クラブ)で政治を歪める構造を変えるべき、という問題意識。
- 外国人政策は提言が一部動き始めたが、受入れ規模・権利義務・コスト負担(企業と国)の設計が未完成で、1月が山場。
- 経済財政は、減税と見せつつ時間差増税を積む構図を警戒し、解散の争点も「減税 vs 増税」になり得る、という見通し。
高市政権は「高支持率=政策が順調」とは限らず、分野ごとに 期待/様子見/懸念 の温度差がはっきりしてきた。したがって是々非々が重要という原点にかえるべし、を今一度心にとどめたいと思います。