今回は日銀当座預金の付利について。
一般の方にとっては難しいと思うので、理解のための工夫をしています。
日銀当座預金(にちぎん とうざよきん)の**付利(ふり)**とは、
**「銀行が日本銀行に預けているお金に、日本銀行が“利息”をつけてあげること」**です。
中学生向けに超ざっくり言うと:
- 銀行は、毎日の支払いミスが起きないように、日銀に「銀行用の口座」を持ってお金を置いています(これが日銀当座預金)。
- 日銀がその残高に利息をつけるのが付利。
- 付利の利率を上げ下げすると、銀行は
**「日銀に置いておく(安全に利息ももらえる)」**か
**「企業や人に貸す(貸した利息を取りにいく)」**か
の判断が変わり、結果として世の中の金利やお金の動きに影響します。一言でまとめると:
付利=「日銀が銀行の“日銀口座残高”に利息を払う仕組み」
上念司さんの動画での、元日銀審議委員の安達誠司さんによる説明。
要約は以下の通り。※中学生でもわかるように、を目指しています。
1. まず動画の問題提起(噂の正体)
動画は、世間にある次の噂を検証するところから始まります。
「日銀当座預金に利息をつける(付利)=銀行への補助金だ」
「このせいで利上げ(金融正常化)が進まない」
上念さんがこの噂をネタっぽく提示しつつ、元日銀審議委員の安達さんに「本当は何のための制度なのか」を聞いて“答え合わせ”する、という構成です。安達さんの結論は最初から一貫していて、
「銀行が得するように見える面はあるが、制度の目的は補助金ではなく、金利をコントロールし、市場の混乱を防ぐため」
という方向に話が進みます。
2. 国債は誰が出す? 日銀は誰から買う?
ここを中学生向けにすると、動画の土台はこうです。
- 国債を出すのは 国(政府)。国が「お金を借ります」という約束の紙が国債。
- 国債はまず市場(銀行や投資家)に売られて世の中に出回る。
- 日銀は(原則として)国から直接買うのではなく、すでに市場に出回っている国債を 銀行などから買う。
ここが動画の「日銀が銀行から国債を買った」の意味です。
3. 日銀が国債を大量に買うと、何が起きる?
安達さんが説明する“裏側の仕組み”は次のとおりです。
- 日銀が銀行から国債を買う
- 代金は現金手渡しではなく、銀行が日銀に持つ口座(=日銀当座預金)に振り込まれる
- だから、日銀が国債をたくさん買えば買うほど、銀行の 日銀当座預金の残高が増える
動画では「国債購入の裏側に当座預金が積み上がる」という言い方で説明しています。
4. 日銀当座預金には2種類ある(ここが重要)
銀行の「日銀の口座残高」には2つの層がある、と整理します。
- 法定準備:法律で「最低これだけは置きなさい」と決まっている分(必須)
- 超過準備:それ以上に余って積み上がった分(余り)
今はこの 超過準備が巨大になっている、というのが動画の前提です。
5. 余りすぎると何が困る?(短期金利が動かない)
昔は、銀行が「日銀口座の残高が足りない!」となると、銀行同士で短期にお金を借り合うので、短期金利が動きやすかった。日銀はそこを利用して政策金利を誘導していた、という説明が出ます。
ところが今は超過準備が大量にあるため、
- 多少“足りなくなりそう”でも、余っているお金で埋められてしまう
- すると銀行同士でお金を奪い合う状況になりにくい
- 結果として、短期金利が ゼロ近くに張りつきやすい
動画の趣旨は「余りが巨大だと、昔の仕組みのままでは短期金利をうまく動かせない」という点です。
6. 「じゃあ余りを減らせば?」が危ない理由(国債ドカ売り問題)
そこで出る素朴な疑問が「余った分(超過準備)を減らせば昔に戻るのでは?」です。
安達さんは、理屈としてはそれも一案だが、今の規模では危険だと言います。超過準備を減らすには
- 日銀が持っている国債を市場に売って
- お金を回収する必要がある
しかしそれを急にやると
- 市場に国債があふれる
- 国債は“余る”と値段が下がる
- 国債の値段が下がると金利は上がる(逆に動く)
- しかも大量に売れば 金利が急騰して市場が大混乱になりうる
だから「国債を大量に売って出口」は現実的ではない、という流れになります。
7. そこで付利の出番(この動画の核心)
ここが動画の中心メッセージです。
- 余り(超過準備)が巨大でも、短期金利をコントロールできるようにする必要がある
- そのための道具が 付利(日銀当座預金に利息をつけること)
付利をつけると
- 銀行は「日銀口座に置いたままでも利息がつく」ので、わざわざ短期市場で無理に貸し出して安売り競争しにくくなる
- 余ったお金が短期市場に一気に流れて、金利をゼロに貼り付け続ける動きが弱まる
- その結果、日銀が狙う政策金利へ誘導しやすくなる
動画ではこれを「余ったお金を日銀口座に釘付けにしておく」と表現します。
つまり安達さんの説明は、
「付利は銀行を儲けさせるためというより、巨大な余りがある世界でも、金利をコントロールして出口の混乱を避けるための仕組み」
ということです。
8. 福井総裁・白川総裁・植田総裁の話(動画内の位置づけ)
動画では歴代総裁の名前も出ます。ポイントは次の通りです。
- 福井総裁(2006年頃)
量的緩和を解除したとき、当座預金を短期間で大きく減らした例がある。しかし当時と今では規模が全然違い、今同じことをやるのは現実的ではない、という文脈で出てきます。- 白川総裁
付利という考え方(仕組み)は白川時代に考えられた、という話が出て、
「植田総裁になって突然できた制度」ではない、という説明につながります。- 植田総裁
上念さん側の話題として「植田総裁は利上げに前のめりだ」と言われることがあるが、安達さんはむしろ慎重に見える、と評価します。
記者会見の発言が切り取られて市場が過剰反応しやすい、というニュアンスも語られます。
9. 終盤の注意喚起(投資家にも関係する)
後半では、
- 「利上げ=即引き締め」「利上げ=暴落確定」と単純に思い込む人が多い
- 金利には“中立金利”のような考え方があり、利上げしてもまだ緩和的な場合がある
といった話題が出ます(ただし詳細は難しいので有料側で、という流れ)。そして「煽りを真に受けて早く手じまいして損した人もいる」という話で、過剰反応への注意にもつなげています。
10. 最後に、動画の結論を中学生向けに一文
この動画はこう言いたい回です。
付利は銀行への補助金というより、日銀が国債をたくさん買って増えすぎた“銀行の日銀口座のお金”をうまく管理して、短期金利を動かせるようにし、国債を大量に売って金利が急騰するような大混乱を避けるための仕組みだ。
動画内で述べられていた「出口」について。
出口ってなに?
この話での 「出口(でぐち)」 は、
日銀が続けてきた“特別にゆるい金融政策”を、ふつうの状態に戻していくこと
(=“通常モードに戻すこと”)です。
そもそも、なぜ「特別モード」になったの?
景気が弱くて物価が上がらないときに、日銀は経済を助けるために
- 金利をすごく低くする(お金を借りやすくする)
- 国債をたくさん買う(市場にお金を増やす)
などをしてきました。これが「特別モード」です。
出口でやること(何が変わるの?)
出口では、だいたい次の方向に動きます。
- 金利を少しずつ上げる(低すぎる状態から戻す)
- 国債を買う量を減らす/買うのをやめる(お金を増やしすぎない)
- (場合によっては)国債を売ったりして、お金の“余り”を減らす
つまり、
「助けすぎ」を少しずつ弱める作業が出口です。
なぜ「出口」が必要になることがあるの?
特別モードを長く続けすぎると、
- 物価が上がりすぎる(インフレが強くなる)
- 低金利が当たり前になり、ムリな借金や投資が増えやすい
- あとで一気に直そうとして「急ブレーキ」になり、混乱しやすい
こういう問題が出ることがあるからです。
でも、出口は「急にやると危ない」
上念司さんの動画の文脈だと、ここが重要です。
日銀が国債をたくさん買った結果、銀行の日銀口座(=日銀当座預金)に
お金の“余り”が大量にたまった。これを急に減らそうとして日銀が国債を大量に売ると、
- 国債が市場にあふれる
- 国債の値段が下がる
- 金利が急に上がって大混乱
になり得る。
だから出口は、
やるとしても、ゆっくり・慎重にが大事、という話になります。
たとえ(中学生向け)
- 景気が弱いとき:日銀は「自転車の補助輪」を強めに付けて倒れないようにする
- 出口:補助輪を 少しずつ外して ふつうに走れるようにする
- いきなり外すと転ぶ(市場が混乱)ので、ゆっくり外す
通貨発行権が政府のみの時代とは異なり、現在は様々な暗号資産ができつつあります。これらを含めての金融政策の今後には不安と期待が混じっています。
とりあえず、私個人としてはこつこつ勉強していこうと思います。