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日本版・香港人権民主主義法を検討するにあたって参議院法制局に論点整理をしてもらいました その2

今回は昨日の記事の続きです。

昨年、米国で香港人権民主主義法が成立しました。この法律の日本版を作ってみてはどうかと思い、参議院法制局に相談していました。

日本版・香港人権民主主義法を検討中

米国での法律ではどういうことが書かれていたのかについて、再度その一部を掲載します。

国会図書館作成資料→【アメリカ】2019年香港人権民主主義法(PDF)

第3条 政策の表明

・米国は、香港の継続的な存続力、繁栄、安定に強い関心を持つ。
民主化の支援は米国外交の基本原則であり、当然に、香港に対する米国の政策にも該当する。
・香港の人々の人権は、米国にとっても重大事であり、香港における米国の利益にも直接関係し、香港の継続的な経済発展の基礎となる。
・香港の中国からの自治は、香港が米国の法律において中国とは別の取扱いとなっていることを正当化できるほどに、十分に維持されなければならない。
・香港の高度の自治、香港の人々の基本的権利と自由を支援する。香港の行政長官や全議員の普通選挙などを求める、香港の人々の民主化運動を支援する。
・中国政府には、過度の介入をせず、香港の人々による香港の高度の自治を認めるよう求める。
・英国、オーストラリア、カナダ、日本、韓国を含む同盟国と、香港の民主化と人権の推進のために調整して行動する。

法の重要な目的として「香港の民主化の支援」が挙げられると思います。

先日、参議院法制局から日本版 香港人権民主主義法を作るにあたっての論点整理をしていただき、資料を作ってもらいました。以下に紹介します。

200501香港に関係する施策に関する立法措置について(PDF)

少し分量があるので、2回に分けて紹介します。今回は後半部分です。

ポイントを3点あげると(2020/5/6 一部訂正)

・香港情勢について日本政府による国会への報告
・香港人権弾圧時に中国本国弾圧を行った者への経済制裁の可能性
香港人権弾圧時に、弾圧をした者に対してビザの発給拒否 香港市民の反政府活動を理由としてのビザ発給拒否の禁止

でしょうか。この辺りは色々と調整可能と思います。

香港に関係する施策に関する立法措置について
〔米国2019年香港人権民主主義法関係〕

三 立法措置の枠組み

1 基本理念・基本方針基本理念についての規定を置き、政府は、基本理念に基づいて施策の基本方針を定めるものとする。(基本理念・基本方針には、我が国の立場や施策の基本的事項等を定めることとなる。)

※ 米国2019年香港人権民主主義法においては、これに相当するものとして政策の表明の規定が置かれている。

[参考] 現在の我が国の立場
我が国は、香港が「一国二制度」の下における「高度な自治」や法の支配をめぐる問題をいかに処理するかは、香港自身の発展にとって、また中国の将来、さらには我が国を含むアジア太平洋地域の安定と繁栄にとって極めて重要であると認識しており、香港が今後とも「一国二制度」の下で自由で開かれた体制を維持し、発展させていくことを強く期待している。
〔出典〕 外務省ウェブサイト「香港基礎データ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/hongkong/data.html

2 国会への報告等政府は、国会に、政府が講じた施策等について報告し、これを公表するものとする。

※ 米国2019年香港人権民主主義法においては、議会への報告について規定が置かれている。

[論点] 政府から議会への報告の趣旨をどう考えるか。報告事項や報告時期について、その趣旨を踏まえて検討する必要がある。

3 施策の実施政府は、1の基本理念・基本方針に基づき、必要な施策を講ずるものとする。
※ 米国2019年香港人権民主主義法においては、香港での人権侵害に従事した者に対して経済制裁措置を行うこと、その者に対してビザの発給を拒否すること及び香港における政治犯罪を理由としたビザの発給拒否をしないこと等について規定が置かれているが、我が国の関係する現行の枠組みは次のとおりである。

(1) 経済制裁措置

他国の個人又は団体に対する経済制裁措置については、外国為替及び外国貿易法第16 条等に定めるところにより行われる。

[論点]  経済制裁措置の要件の見直しを検討する場合、「対外取引が自由に行われることを基本とし、対外取引に対し必要最小限の管理又は調整を行う」との外国為替及び外国貿易法の目的(同法第1条)との関係で、合理的に説明できる要件を設定できるか。

(2) ビザの発給

ビザの発給については主権国家の自由裁量行為に属すると考えられている。ビザの発給の要件については、ビザの原則的発給基準において、出入国管理及び難民認定法第5条第1項各号に掲げる上陸拒否事由に該当しないこと等とされているようである。政治犯罪により刑に処せられた者については、当該理由は上陸拒否事由に該当しないこととされている(出入国管理及び難民認定法第5条第1項 第4号ただし書)。

[論点] どのような場合にビザを発給しないこととするかといった具体的な運用基準を明確にすることを検討する場合、ビザの発給については主権国家の自由裁量行為に属し、ビザは外交上、機微な部分にかかわることもあるため、その運用基準は不公表となっていることを踏まえて適当かとの議論があり得る。

四 各議院の意思の表明

各議院は、議院としての意思の表明を行うのであれば、決議によってきたところであり、香港に関係する事象についても同様の対応が考えられる。

※ 米国2019年香港人権民主主義法においては、連邦議会の意思の表明についての条文が置かれている。

この法律を制定する際に考慮すべき現行法制度として前回の記事では憲法と日中平和友好条約を挙げましたが、今回は

・外国為替及び外国貿易法(外為法)
・出入国管理及び難民認定法

を挙げます。それぞれ、参考までに該当条文を下に紹介しておきます。

まずは外為法です。

○ 外国為替及び外国貿易法(昭和 24 年法律第 228 号)

(目的) 第一条 この法律は、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし、対外取引に対し必要最小限の管理又は調整を行うことにより、対外取引の正常な発展並びに我が国又は国際社会の平和及び安全の 維持を期し、もつて国際収支の均衡及び通貨の安定を図るとともに我が国 経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(支払等) 第十六条主務大臣は、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき又は第十条第一項の 閣議決定〔我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるときになされる対応措置についての決定〕が行われたときは、当該支払等が、これらと同一の見地から許可又は承認を受ける義務を課した取引又は行為に係る支払等である場合を除き、政令で定めるところにより、本邦から外国へ向けた支払をしようとする居住者若しくは非居住者又は非居住者との間で支払等をしようとする居住者に対し、当該支払又は支払等について、許可を受ける義務を課することができる。

2~5 〔略〕

そして出入国管理及び難民認定法です。

○ 出入国管理及び難民認定法(昭和 26 年政令第 319 号)

(上陸の拒否) 第五条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することがで きない。

一~三 〔略〕

四 日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しく は禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治 犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない。

五~十三 〔略〕

十四 前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は 公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

2 〔略〕

今後どこまで進めることができるか分かりませんが、準備だけしておこうと思います。

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