今回は11月17日(月)のインターネット番組ニッポンジャーナルの内容を紹介します。
まずは切り抜き動画から。
要約は以下の通り。
この回で江崎道朗さんと松原実穂子さんが話しているポイントを、流れに沿って少し細かめに整理します。
1.「高市発言」は妥当だが、中国の反発は織り込み不足
- 江崎さんは、高市総理(高市さん)の今回の「台湾有事は存立危機事態になり得る」との趣旨の答弁自体は、極めて妥当だと評価。
- しかし同時に、
- 中国(北京)がどこまでエスカレートして反発してくるか
- それをどこまで事前に織り込んでいたのか
については「かなり疑問がある」と指摘。- 「政治家としては、このくらい中国が騒ぐのは折り込み済みでないといけない」としつつ、今回の日本側のインテリジェンス・分析とハレーション対策(副作用への備え)は不十分だったのではないかと問題提起。
2.中国の狙い:高市政権の「安全保障路線」を潰す宣伝戦
- 江崎さんは「今回の中国の“高市叩き”は、高市発言そのものが出発点ではない」と見る。
- 高市総理は、台湾有事も含めて、日本の安全保障体制(インテリジェンス、憲法、安保政策)を抜本的に立て直そうとしてきた。
- 中国側は「いずれ高市政権と全面対決する」ことを前提にしており、今回の発言をきっかけとして利用しただけだという理解。
- 北京の目的:
- 「高市のやっている安全保障強化は危ない」と国内に刷り込む。
- 親中派、経済界、与野党の“穏健派”を「反・高市」へ誘導する。
- その結果、高市政権の支持基盤を国内で孤立させていく。
- つまりこれは、高度な情報戦・宣伝戦であり、日本国内の揺らぎや分断を増幅して、「高市つぶし」を図っているという構図。
3.日本国内の問題:安保政策の「中途半端さ」と台湾位置づけの曖昧さ
(1)日本の対台湾・安保政策の基本ライン
江崎さんが整理した日本政府の立場は、おおむね次の4本柱:
- 台湾海峡の平和的解決を支持
- 「平和的解決を支持する」とは言うが、「非平和的なら支持しない」とまでは明確に言っていない。
- 力による一方的な現状変更に反対
- 第2次安倍政権以降、ウクライナなども踏まえ「力による現状変更は認めない」という立場を明示。
- 自衛隊の武力行使は限定
- 「日本の存立が本当に脅かされ、他に適当な手段がない場合」に限って武力行使ができるという従来の原則。
- 平和安全法制(2015年)
- 「日本と密接な関係にある他国」への武力攻撃により、日本国民の生命・権利に明白な危険がある場合は『存立危機事態』として武力行使が可能。
(2)最大の曖昧さ:この「他国」に台湾が入るのか?
- 法律上は「他国」としか書かれていない。
- 第2次安倍政権当時、台湾を「国」と認めていない外交上の事情もあり、「台湾を想定した」とは明言していない。
- 本音としては「関係のある地域」と書きたかったが、中国やアメリカとの関係もあり、あえて「他国」としたという経緯がある。
- 実際には「他国」の念頭は主に米軍(アメリカ)である、というのが江崎さんの見立て。
- 今回、高市総理が言ったのはあくまで:
- 「台湾に侵攻した中国軍と戦う」と言ったのではない。
- 「台湾有事で米軍が行動し、その米軍に対して攻撃があった場合、それは存立危機事態に該当する可能性がある」と述べただけ。
- にもかかわらず、反高市メディアは「中国と戦争するつもりだ」とレッテル貼りしている、と江崎さんは批判。
4.台湾有事の現実と日本の法制のギャップ
- 実際に台湾危機が起きれば:
- 南シナ海・東シナ海のシーレーンは大きく混乱。
- 半導体を含む台湾経済が崩れ、世界金融にも大打撃。
- 石垣島・宮古島・与那国島などはミサイル射程内に入り、住民が直接危険にさらされる。
- それほど事態が切迫しても、それだけで自動的に「存立危機事態」と認定できる仕組みになっているかというと、現行の平和安全法制では不十分だと江崎さんは指摘。
- さらにアメリカの期待は、
- 「日本は米軍を支援するだけでなく、“共に戦う”姿勢を示してほしい」というところにある。
- しかし現行法制だと、
- 日本は米軍を後方支援するが、一緒に戦わない可能性もある。
- それではアメリカは納得せず、日米同盟に亀裂が入りかねない。
- この**「法制の中途半端さ」と「日米同盟の期待とのギャップ」**をどう親めるのかが、安倍政権以降ずっと先送りされてきた課題であり、高市総理はそこに正面から踏み込もうとしている、という位置づけ。
5.日本の戦略選択:一緒に戦うのか、ポーランド型で支えるのか
- 江崎さん自身の考え:
- 日本の自衛官が米軍と肩を並べて、数年単位で本格戦闘を続けられるだけの人的・能力的リソースがあるのか、かなり疑問。
- 台湾有事が1週間で終わるならともかく、3〜4年続くような長期戦になった場合、日本の「優秀なコマンド」を維持できるかは相当厳しい。
- そのため、日本には大きく2つの選択肢があると整理:
- 米軍と共に戦闘にコミットする道
- ポーランド方式
→ ウクライナ戦争におけるポーランドのように、
- 戦闘行為自体には関与しない。
- しかし経済・外交・インフラ復旧・難民受け入れなどを通じて、台湾を全面的に支える役割を担う。
- 江崎さんは、後者(ポーランド型支援)を基本にすべきではないかという個人的見解を提示。
- いずれにせよ、
- 「どちらの戦略を選ぶのか」
- 「それに合わせてどんな法制度・装備・体制を整えるのか」
を、日本として早急に決めなければならないと強調。
6.中国の「高市つぶし」と、足りない日本側インテリジェンス
- 中国側は、
- 安倍政権期の平和安全法制の矛盾・不備を熟知したうえで、
- そこを突いて高市政権の踏み込みを封じに来ている、という高度な情報戦を展開中。
- これに対し日本側は、
- 「立民がバカだ」「マスコミが酷い」と感情的に批判しても状況は改善しない。
- 必要なのは、「台湾有事の際に日本は何をするのか」という国家戦略と準備そのものを詰めること。
- 江崎さんは、高市総理を支えるべきインテリジェンス機能が弱く、
- 中国がここまでエスカレーションしてくることを十分に織り込んでいなかった、
- その意味で「分析もハレーション対策も不十分」と厳しく指摘。
7.松原実穂子さんの視点:インテリジェンスと文化理解の重要性
- 松原さんは、今回の問題を通じてあらためて、
- 「インテリジェンス(情報)」と「文化理解」の重要性を強調。
- ポイント:
- 国際政治では「想定外」が起こり得る前提で、多様なシナリオを準備しなければならない。
- そのシナリオ作成の要となるのがインテリジェンス。
- 相手国(特に中国)の文化的背景や思考パターンは、日本人とは大きく異なりうる。
- 言語だけでなく文化も含めて深く理解した分析者が、政策決定者に的確な情報を提供する体制が必要。
- その文脈で、松原さんは自らも関わる「自民インテリジェンス戦略本部」のような組織の重要性を強調。
- 高市総理が進めるインテリジェンス強化路線は、まさに台湾危機に備えるうえで不可欠であると評価している。
8.まとめ:今、問われているのは「高市個人」ではなく、日本の国家戦略
- 江崎さんの総括:
- 今回の騒動は「高市総理の失言」問題ではない。
- 本質は、
- 台湾危機が確実に近づきつつある現実。
- 安倍政権期に作った平和安全法制だけでは対処しきれないギャップ。
- それを埋めようとする高市政権の動きに対して、中国が「高市つぶし」の大規模な情報戦を仕掛けてきていること。
- 日本は、
- アメリカ・台湾・フィリピンなどの同盟・友好国との連携を深めつつ、
- 国内の与野党を巻き込んだ建設的な議論を行い、
- 「台湾有事にどう対応するのか」という国家戦略を練り直さなければならない。
- 中国の挑発に乗って感情的にエスカレートするのではなく、
- インテリジェンスを強化し、
- 法制度と外交・軍事・経済・インフラ・難民受け入れまで含めた包括的な準備を進めるべきだ、というところで議論が結ばれていました。
台湾有事が現実となった際の準備が十分なものとなることはないとは思いますが、可能な限りで準備を進めていくのが大事なのでしょう。
私は残念ながら国会にはおりませんが、一方で皆様からの支援(YouTubeチャンネル31万人登録)やこのニッポンジャーナル、虎ノ門ニュース、楽待チャンネルなどに出演させていただいていることもあり、並み程度の国会議員よりもできることは多々あると思います。
引き続き頑張っていきます。
ということで、今回の番組の本編(ライブ配信)。
非核三原則ではなく、実質2.5原則、は重要なご指摘と思います。
番組内で提示された資料もあらかじめ紹介します。
#ニッポンジャーナル
松原美穂子氏が提示した資料
総務省「国際海底ケーブルを巡る現状と課題」よりhttps://t.co/12Ne0sh7L1 pic.twitter.com/UbMIf616PD— 勝田類2 (@OIAMAvpYhJ25899) November 17, 2025
要約は以下の通り。
番組全体としては、
「高市政権をめぐる安全保障・インテリジェンス体制の強化」と
「サイバー/海底ケーブルなどインフラ防護」を軸に、
中国の“高市潰し”や台湾有事をどう読むか、という話が通底しています。
1. 冒頭・出演者・番組の流れ
- 司会:居島一平
- 解説:江崎道朗(情報史学研究家)、松原実穂子(NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト)
- 松原氏は防衛省勤務 → 米ジョンズ・ホプキンスSAIS留学 → 米シンクタンク → 米サイバー企業 → NTT という経歴で、
「サイバーは国防の最前線」という立場から出演。- 視聴者アンケートで最も注目されたニュースは
「自民党インテリジェンス戦略本部が始動(国家情報局構想)」。途中で居島氏のライブ告知や映画告知、有料会員の案内なども挟まるが、
政治・安全保障パートのメインテーマは以下。
- 自民「インテリジェンス戦略本部」と国家情報局構想
- 「非核三原則」見直し(実はすでに「2.5原則」になっているという指摘)
- 無印良品・アスクルのランサム攻撃と日本のサイバー事情
- 中国の「日本留学は慎重に」注意喚起と“高市潰し”の情報戦
- 海底ケーブル防護と電力・AI・台湾有事
2. 自民党「インテリジェンス戦略本部」と国家情報局構想
2-1. 何が決まったのか
- 自民党が「インテリジェンス戦略本部」を新設し初会合。
- 政府が創設を目指す「国家情報局」(内調の格上げ)などの具体像を検討。
- 検討事項:
- 司令塔機能の強化
- 対外情報収集能力の抜本的強化
- 外国勢力の干渉を防ぐ体制の構築
2-2. 江崎氏の評価:近代日本初の大転換
- 戦前から一貫して「政策(政治家・軍の都合)優位/情報軽視」だったと指摘。
- 自分たちに都合の良い情報だけ集め、「不都合な事実」は排除する文化。
- 太平洋戦争でも、戦況の悪化が総理に公式に伝わったのは3ヶ月後…など、
情報共有がバラバラで致命的だった歴史を例示。- 戦後も対外情報部門は占領軍に潰され、インテリジェンスは日陰の存在。
- 今回「国家安全保障会議(NSC)と“同列”にインテリジェンス部門を位置づける」
連立合意文言は、
- 「インテリジェンスを政策と同格に扱う」ことを初めて明示した画期的な出来事
- 日本近代史上初のレベルの変化と評価。
2-3. インテリジェンスの役割(松原氏)
- インテリジェンスは“趣味で集める情報”ではなく、
- **「意思決定のための情報」**であり政策とセットで扱うべきもの。
- サイバー防衛でも、サイバー攻撃単体では終わらず、ミサイル・破壊工作など
他手段と組み合わされるので、総合的インテリジェンスが不可欠。- 今年成立した「動的サイバー防御」関連法を機能させるためにも、
国家全体のインテリジェンス能力の底上げが必要。- 特に「欺瞞(ディセプション)」への理解が重要:
- 相手も意図を持って偽情報を流してくる。
- 海外の安全保障系大学院では、元CIA幹部らが「欺瞞・騙し」を必ず教える。
- 日本も「正直に集める・分析する」だけでなく、
「相手は騙してくる」という前提を理解した上で分析する文化を育てるべき。
3. 「非核三原則」見直し議論 ― 実はもう「2.5原則」だという指摘
3-1. 産経記事への“ツッコミ”
- 産経の記事は「非核三原則の見直しは安全保障政策の“大転換”」と書いているが、
- 江崎氏によれば、
- 2010年の民主党政権・岡田外相答弁で
「非常時には“持ち込ませず”を緩和しうる」という政府解釈が示されており、- 実質的には 「非核2.5原則」 になっている。
- その後、安倍・岸田両政権も国会で「岡田外相答弁を引き継ぐ」と答弁済み。
- しかし、
- 2013年安倍政権の国家安全保障戦略(NSS)も、
- 2022年岸田政権のNSSも、
いずれも「非核三原則を堅持」と書き続けており、
岡田答弁の内容が文書に反映されていないと批判。3-2. 実務上の問題
- NSSに「三原則堅持」と書いてある限り、
- 官僚や防衛省幹部は「いざとなれば持ち込める」という前提で
戦略を設計しにくい(文書が縛る)。- 現場感覚としては、
- すでに「2.5原則」なのだから、
それを前提に対中・対ロ・対北朝鮮戦略を組み直させてほしい、という問題意識。- 江崎氏:
- 本来は「岡田答弁を踏まえ、NSSも書き換えるべき」なのに、
それをしてこなかったことが誤り。- 高市総理はそれを正して、現実に即した形にしたいのだろう。
3-3. 松原氏の視点
- 自身は核政策の専門家ではないが、
- 国際会議などでは「核兵器が実際に使われるシナリオ」も真面目に議論され始めている。
- 日本国内でも、有事における核の位置づけを考えるきっかけになりうる、とコメント。
4. 無印良品・アスクルのランサムウェア被害と日本のサイバー事情
4-1. 事件概要(無印×アスクル)
- アスクルの物流子会社「アスクルロジスト」がランサムウェア被害。
- 無印良品(良品計画)が預けていた顧客情報が流出した可能性。
(住所・氏名・電話番号・注文情報。クレカ情報は含まれず)- 現時点で悪用は確認されていないが、フィッシングやなりすましメールに注意喚起。
- 直前には朝日新聞も同様のランサム攻撃を受けており、
立て続けに大企業が被害に遭っている。4-2. 松原氏の分析
- 大企業だけでなく、そのサプライチェーン全体に甚大な影響:
- 朝日のケースではコンビニや飲食店でサービス停止。
- アスクルでは無印・ロフト・西武などのネットストアに影響。
- 攻撃者は
- システムを暗号化して業務停止させ、
- データを盗んでリークし、
- 「これ以上流出されたくなければ身代金を払え」と二重に脅迫。
→ まさに“人質を見せしめに殺す”のと同じ構造。- 現場のサイバー担当や経営陣は「一か月以上ほとんど寝ていないのでは」というほどの過酷さ。
4-3. 「日本はサイバーに弱い」という決めつけへの反論
- 米サイバー企業Proofpointの国際調査によると:
- 先進国15カ国の中で、ランサム感染率が最も低いのは日本。
- さらに「感染後に身代金を払う割合」も圧倒的に低い。
- 米英仏などは 6〜8割が支払いに応じる年もあるが、
- 日本はかなり低く踏みとどまっている。
- つまり、
- 日本のサイバー防御は「完璧ではないが、世界的にはかなり頑張っている側」。
- 「日本はサイバーがボロボロ」という自己卑下は、
事実に合わないと強調。4-4. それでも必要な対策
- 感染拡大を防ぐためのネットワーク分割・セグメント化:
- 1区画がやられても他区画に広がらない構造にする。
- バックアップ:
- ただ「バックアップを取りました」で終わりではダメ。
- 複数形式・複数世代のバックアップを、
実際にリストアして業務復旧できるかどうかの検証が重要。- 今回の事案をきっかけに、
- **「バックアップと復旧プロセスを現実的に見直す」**ことを
経営層に強く求めたい、と締めくくる。- 江崎氏も、
- 国内だけ見ていると「悲観一辺倒」になるが、
国際比較すると日本はかなり健闘していると再確認。
無力感に落ち込むのは危険で、冷静な自己評価が大事とコメント。
5. 中国の「日本留学は慎重に」注意喚起と“高市潰し”情報戦
5-1. 中国側の対抗措置のラインナップ
- 教育省:
「治安悪化」を理由に “日本留学は慎重に” と注意喚起。
- 日本在住・予定の学生には「最新の注意を払え」と通知。
- それ以外にも、
- 日本渡航の自粛呼びかけ、
- 中国系航空会社が「日本行き無料キャンセル可」措置、
- 尖閣での中国海警局パトロール強調、
- 香港からの「訪日警戒」呼びかけ、
などが高市発言への対抗措置とみられる。- 国内では立憲側が「軽率な発言」「存立危機事態を理解していない」と批判。
5-2. 江崎氏の評価:「高市の発言は妥当だが、中国の反応読みが甘かった」
- 結論:高市総理の発言自体は極めて妥当。
(台湾有事で米軍が攻撃された場合に、存立危機事態になりうるという趣旨)- ただし問題は、
- 中国がここまでエスカレーションすることを
事前にどこまで「織り込んで」いたか。- 高市側・官邸側のインテリジェンス分析・ハレーション対策は不十分だったのでは、という疑問。
- 海外の関係者(米・台湾・日本のインテリジェンス筋)と話した結果:
- 北京は「今回の発言そのものが原因」ではなく、
- 高市が以前から国家安全保障の立て直し(憲法改正、安全保障文書、インテリジェンス強化)を進めてきたこと自体を脅威と見ていた。
- いずれ何かを口実に「高市潰し」を仕掛けるつもりだった。
→ たまたま今回の発言を“材料”に使っただけ。- 北京の目的:
- 高市の政策を「危険」と国内に刷り込み、
- 親中派・財界・穏健派を高市から引き離す、
- 支持基盤を崩すための高度な宣伝戦・情報戦。
5-3. 台湾有事と日本法制の「二つの矛盾」
- 日本の基本立場整理(江崎氏):
- 台湾海峡は「平和的解決を支持」。
- 力による一方的な現状変更に反対。
- 自衛隊の武力行使は「日本の存立が脅かされ、他の手段がない場合」に限定。
- 2015年安保法制で、
「日本と密接な関係にある他国」への武力攻撃で国民に明白な危険がある場合、
存立危機事態として武力行使可能に。- しかし大きな問題が2つ:
①「他国」に台湾が含まれているのか不明確
- 台湾を「国」と認めておらず、公明党との関係もあり条文を「他国」とした。
- 実際は米軍を想定しているが、台湾の位置づけが曖昧なまま。
② 台湾紛争が起きても、それだけで存立危機事態と認定できない法制
- 台湾有事になれば、Cレ・半導体・金融、さらに石垣・宮古などもミサイル射程に入る。
- しかし現行法制では、それ“だけ”では存立危機事態認定の要件を満たさない設計。
- さらに:
- 日本は「台湾有事で米軍を支援する」と言っている一方、
- 米側は「共に戦う」ことを期待している。
- 「支援はするが一緒には戦わない」という姿勢だと、米側は強く反発しうる。
- 江崎氏の見立て:
- 高市総理は、この二つの矛盾を何とかしないといけないという問題意識から
今回の踏み込んだ答弁を行った。- しかし、永田町全体が同じ問題意識を共有しているわけではなく、
その“差”を北京は巧みに突き、国内分断を煽り、高市孤立化を狙っている。5-4. 日本が本当に決めなければならないこと
- 単に「立民が馬鹿だ」「朝日が悪い」と言っても何も解決しない。
- 問いは二つ:
- 台湾有事の際、日本は本当にどう動くのか?
- 今の安保法制では対応しきれない。
- より具体的なシナリオ詰めが必要。
- 米軍と“共に戦う”のか、それともポーランドのように“戦闘はしないが全面支援”路線を取るのか?
- 江崎氏自身は後者(ポーランド型)を支持:
- 日本の自衛隊が長期戦で並んで戦う能力・人員は限られている。
- むしろ経済・外交・通信インフラ復旧・避難民受け入れなどで
台湾を全面的に支える役割が現実的ではないか、という意見。- いずれにせよ、
- 「どちらの戦略を取るのか、国家として方針を定めること」が今回突きつけられている課題。
- 中国の挑発に乗ってエスカレーションするのは論外だが、
その背後で冷静な戦略議論を深める必要がある。- 松原氏は、
- こうした状況ほど「ダム(外交)・インテリジェンス・ミリタリー・エコノミー」という
江崎氏が唱える四本柱で多様なシナリオを用意する必要性を強調。- 文化的背景も含めて相手を理解できるインテリジェンス人材育成が急務と述べた。
6. 海底ケーブル防護、有識者会議、電力とAIと台湾有事
6-1. 有識者会議の立ち上げと日本の“海底ケーブル依存”
- 総務省が「海底ケーブル防護」の有識者会議を初開催。
- 日本の国際通信の 99%が海底ケーブル に依存。
- 世界で毎年100〜200件ほど切断・故障が発生し、
漁業活動・海賊・意図的破壊なども原因。- 台湾近海・バルト海での切断事案では、中国・ロシア関与が疑われるケースも。
6-2. 松原氏のポイント
- 会議資料の地図では、
- 日本周辺の海底ケーブル修理頻度が世界でも突出して高い(色が濃い)。
- 海底ケーブルは
- 経済・社会活動維持の要であり、
- AI活用に伴うデータ爆発で重要性はさらに増している。
- ゴールドマンサックスの試算:
- データセンターの電力需要は
- 2027年までに +50%
- 2030年までに +165%
という“激増”予測。- しかし世界的にエネルギー危機・電力高騰で、
- データセンターは建てたいが電力が供給できない、という状況も発生。
- 結論:
- 通信インフラ(海底ケーブル)と電力インフラは不可分。
- 海底ケーブル防護と同時に「どう電力を確保するか」が国策課題。
6-3. 法制度と船の問題
- 海底ケーブルの保守・修理は極めて高コストで、
- 日本企業(KDDI・NTTなど)が保有する敷設船もあるが、
- コストや税制の問題で外国船籍とせざるを得ないことが多い。
- 外国船籍の船が日本周辺で作業するには、
- **「外国船舶による作業は国交大臣の許可が必要」**という法制(第3条)の制約あり。
- 広大な海域で迅速に修理する必要があるのに、
- 毎回許可取得が必要なのは負担が大きく、
今後の見直し議題にしてほしいと要望。6-4. 台湾側との情報共有の必要性(江崎氏)
- 台湾はすでに自国周辺の海底ケーブル切断を多く経験し、
- どの船が、どの機材で、どれくらいの時間をかけて破壊しているか、
- 船の所有者や運営企業、北京政府との関係などを
かなり詳しく追跡している。- 本来は、その情報を日本と台湾で共有し、
- 沖縄周辺などに危険な船が来ていないかを
事前に把握・警戒したいところ。- しかし日本は台湾と国交がなく、
- 生命線に関わる情報共有が制度上やりにくいというジレンマ。
- これを解消するためにも、
- 国家情報局創設などインテリジェンス部門強化と合わせて、
水面下の情報共有ルート構築が必要だと訴える。- こうした動き(海底ケーブル防護、原発・火力への投資、米国とのエネルギー協力など)は、
- 高市政権・木原官房長官らが中心となって進めており、
- だからこそ北京は一層警戒している、という構図を示す。
7. 書籍紹介と全体メッセージ
- 松原氏の新著『ウクライナ企業の指導(仮)』を紹介:
- ウクライナ戦争で「軍事」だけでなく、
- 通信・電力・金融などインフラ企業や一般企業が
どうサイバー攻撃やミサイル攻撃を受けながらも業務を継続し、
国民生活を支えたかを描いた内容。- 台湾有事を考える上でも、
「普通の企業」がどう備えるかという視点が不可欠と強調。- 番組無料部分の最後に、
- 本当のディープな台湾有事×インフラ×サイバーの話は
この後の有料部分で続く、という案内で締め。
まとめ(要点の再整理)
- インテリジェンス戦略本部と国家情報局構想
- 政策とインテリジェンスを“同格”に扱う初の試みであり、
戦前から続く「情報軽視」からの大転換だと江崎氏は評価。- 非核三原則は実務的には「2.5原則」
- 民主党政権時代の岡田外相答弁で実質緩和済み。
- にもかかわらずNSSに反映してこなかったのは誤りで、
高市政権はそこを是正しようとしている。- サイバー攻撃(ランサム)への日本の実力
- 日本は感染率・身代金支払率とも国際的に最も低いレベルで「意外と強い」。
- ただし大規模被害も起きており、ネットワーク分割とバックアップ運用の見直しが急務。
- 中国の「日本留学は慎重に」など一連の対抗措置は“高市潰し”の情報戦の一環
- 高市個人の発言がたまたまトリガーになっただけで、
以前から安全保障路線そのものを潰す意図があったと分析。- 台湾有事に対する日本の戦略選択が問われている
- 「米軍と共に戦うのか」「ポーランド型で戦闘には参加せず全面支援か」。
- その国家戦略を決めずに、中国の挑発だけ批判しても意味がない。
- 海底ケーブルと電力・AI・台湾有事
- 日本は国際通信の99%を海底ケーブルに依存し、修理頻度も世界屈指。
- データ・AIの時代には電力と通信がセットで国家安全保障の核心となる。
- 台湾との情報共有や法制度の見直しが不可欠。
- 全体を通じたメッセージ
- 高市政権周辺は、インテリジェンス・サイバー・インフラ・台湾有事を
「一体の問題」として捉え、体制強化に動いている。- 中国はそれを敏感に察知し“高市潰し”で日本国内の分断を狙っている。
- だからこそ日本側は、感情論ではなく、
冷静なインテリジェンスと現実的な戦略議論 を進める必要がある――
というのが番組の主たるトーンでした。
広く、かつ深いニュース解説、大変参考になりました。