「官営ビジネス」が失敗する構造的理由──クールジャパン機構の540億円赤字とINCJの比較から考える市場と政府の役割

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今回は(も)減税TVの動画から。

共有いただいた動画(「【540億円赤字】クールジャパン機構ついに廃止へ!巨額の税金はどこへ消えた?」 / 減税TV)の主な論点・ポイントのまとめです。
動画内では、巨額赤字を出して廃止に向かう「クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)」について、税金の使途や官民ファンドの構造的欠陥が厳しく批判されています。

主なポイント

  • 約540億円の赤字と「そもそも不要」という指摘 [00:09]
    • クールジャパン機構は約540億円の赤字を抱えて廃止に向かう方針となったが、出演者は「最初から全く不要だった事業」と批判しています。
  • クールジャパンの趣旨から乖離した投資先
    • 蜘蛛の糸バイオベンチャー(Spiber) [00:52]:巨額(約140億円規模)の資金が投じられたが、実用化・応用が追いついておらず、そもそも「クールジャパン」の文化発信とは掛け離れたバイオ事業だったと指摘。
    • 飲食の中東展開(シファー日本) [03:36]:銀だこや牛角の中東展開に約3億円支援したが、代表が行方不明になり事業が立ち消え。
    • 吉本興業関連(MCホールディングス) [04:54]:アジア住みます芸人企画などに15億円支援するも、後に関連株を譲渡。
    • 元首相の親族が関わるブランド [05:58]:宮澤喜一元首相の孫娘がCEOを務めるNY発ファッションブランドに約23億円を出資しており、利権・情実投資の疑念を呈しています。
    • 配信プラットフォーム(ラフ&マザー) [07:44]:約100億円を投じてアジア向け教育コンテンツ配信を目指したものの、一度も配信を行えずに終了。
  • 官民ファンドと官僚システムの構造的欠陥
    • 「単年度会計」と一括巨額出資の甘さ [08:41]:民間のベンチャーキャピタルのように段階的(シード・シリーズごとの実績評価)に出資せず、官僚が見栄えの良いプレゼンで初手から巨額を一括拠出してしまう。
    • 責任感・インセンティブの欠如 [09:13]:自分のお金ではなく国民の税金であるため、投資先が失敗しても役人自身がリスクを負わない。
    • 「ギャンブラーの誤謬(サンクコスト効果)」 [10:01]:赤字が膨らんでも「取り返す」とお金を注ぎ足し続け、損失を540億円まで拡大させた。
  • 官民の「成功基準」の決定的なズレ [12:21]
    • 一般国民から見れば「巨額赤字の大失敗」だが、官僚側は「今まで予算がつかなかった文化・コンテンツ産業に予算を確保・執行できたこと自体が成功」と認識しているのではないかという認識の乖離を指摘。
  • 日本のコンテンツ成長と政府支援の無関係性 [15:00]
    • アニメやマンガ(『鬼滅の刃』『呪術廻戦』など)が世界で伸びたのは、ネット配信の普及と作品自体の純粋な力によるもので、政府のクールジャパン政策は無関係。
    • 予算の多くは現場のクリエイターではなく中間業者に流れ、むしろ政府や補助金の介入は作品の自由度や魅力を損なうリスクがあると結んでいます。

政府(政治家)が民間に任せずに余計なことをして国民全体に被害が出た典型例でしょう。

少し解像度を上げるために、クールジャパン機構と同様に官民ファンドで逆に評価されている?INCJと比較します。

INCJ vs クールジャパン

官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)が、投資収益1兆円近くを稼ぎ出して歴史に幕を下ろしてから1年以上が経ちました。

政治の要請や企業救済といった「政府の財布」としての批判やJDIなどの大失敗を抱えつつも、ルネサスなどの大勝ちでトータル黒字を達成した軌跡は見事でした。

これほどの成果を残したINCJと、累積損失が拡大し存続の危機にあるクールジャパン機構との違いを改めてまとめました。

【INCJとクールジャパン機構の違い】

■ 投資対象の性質

INCJは半導体や液晶といった製造業のハードウェア技術や特許など、市場価値を客観的に測定しやすい目に見える資産を対象としました。

一方、クールジャパン機構はアニメや食、伝統文化といったソフトパワーを対象としたため、流行や現地の好みに激しく左右され、客観的なバリュエーションが非常に困難でした。

■ 出口戦略(イグジット)への執念

INCJは厳しい企業リストラや海外M&Aを主導できる経営陣を据え、最終的に企業価値を高めて市場に売却するというプロの冷徹さを持っていました。

クールジャパン機構は文化発信やPRという抽象的な政策目標が先行し、ビジネスとしての出口戦略が極めて曖昧なまま赤字案件の損切りが遅れました。

■ 一発逆転を狙える投資規模

INCJはルネサスエレクトロニクスに対して1300億円を超える巨額の資金を一気に集中投下し、JDIなどの大失敗を帳消しにする1兆2000億円超のリターンを叩き出しました。

クールジャパン機構は数十億から百億円規模の中途半端な投資を多くの案件に分散させたため、全体を牽引して黒字化させるような大勝ち案件が生まれませんでした。

■ 当事者意識と民間の巻き込み方

INCJはリーマン・ショック後のリスクマネー供給という明確な危機感のもと、民間企業やサプライチェーン全体の切実な要請と連動して動いていました。

クールジャパン機構は出資の9割以上を政府が占め、民間は付き合い程度の出資にとどまったため、誰も本気で経営責任を負わない構造になってしまいました。

以上のように、ハードウェアや知財という実物資産を軸に冷徹な出口戦略を取ったINCJに対し、クールジャパン機構は「文化発信」という曖昧な大義名分のもと、市場の選別を受けないまま血税をばらまき続けた結果、540億円もの巨額赤字を残して幕を閉じることになりました。

そもそも、世界を熱狂させている日本の優れたマンガやアニメ、食文化といったコンテンツは、民間の自由な競争とクリエイターたちの現場の創意工夫によって切り拓かれたものです。役人が税金を使って「上から目線」で後押ししようとすれば、利権の温床や無責任な投資を生み出すだけで、かえって民間の活力や自由を阻害してしまいます。

「政府が民間に任せず余計なことをするな」──このクールジャパン機構の失敗は、官営ファンドや補助金行政の限界を雄弁に物語っています。政府がやるべきは、特定産業への税金投入や選別ではなく、規制緩和と徹底した減税によって、民間の挑戦者が自らリスクを取って伸び伸びと挑戦できる市場環境を整えることです。

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