今回はスパイ防止法について。
救国シンクタンク(チャンネルくらら)の番組で提示されたスパイ防止法の要点を復習。
【スパイ防止法の論点】
国民民主党・参政党が主張。自民党・維新も前向き。
ただし「自由主義国型のスパイ防止法」でなければ危険。政府批判を取り締まるような先制国家型はNG。
現在、日本ではスパイ防止法に関する学術的研究が非常に不足。
まずは国際標準の法制度研究や法案要綱づくりが必要。
今回、アベプラでスパイ防止法がテーマとなりましたのでその動画を紹介します。
要約は以下の通り。
概要(番組の前提)
- 連立合意に「国家情報局」創設や対外情報庁(日本版CIA)構想、そして「スパイ防止法」検討が明記。
- テーマは「日本はスパイ天国か/現行法で足りるか/新法が要るなら何を足すか」。
主要論点
- 何を“スパイ”と定義するか
- 日本法に「スパイ」の明確定義はない。
- 現行では特定秘密保護法(漏えい・取得側双方を処罰)、経済安保関連法、破壊活動防止法、国家公務員法などの組合せで対処。
- “最後のピース”は何か
- 竹田氏:破防法→特定秘密保護法→経済安保→セキュリティ・クリアランスと積み上がったが、抑止力としての「スパイ防止法(刑罰の明確化・重罰化等)」が最後のピース。
- 小西氏:既存枠組みで相当守れてきた。何が具体的に足りないのかの提示が曖昧。理念法(基本法)レベルでの提起が多く、実体法の設計論が未成熟。
- 刑罰水準(抑止力)の是非
- 竹田氏:国家の根幹を揺るがす行為には長期禁錮〜無期、場合により死刑を含むほどの重罰が国際標準。抑止のため明確化・重罰化を。
- 小西氏:特定秘密保護法でも最長10年。実効性が本当に不足か、政府側の立証が乏しい。外患誘致等の極刑規定も既に存在。
- 外国代理人登録(Foreign Agents Registration的な制度)
- 外国政府・影響下の個人・法人が国内で情報収集・影響工作をする際は登録義務化する案。
- 透明化・抑止の効果を期待する一方、適用範囲と運用の線引きが課題。
- 中国「国家情報法」リスクへの対応
- 中国人・中国企業に情報活動協力義務を課す同法が脅威。
- 監視カメラ、清掃ロボ、充電器等の機器経由の盗聴・バックドア懸念。
- 小西氏は「政府要人の通信は特別対策済み」と述べつつ、竹田氏はサプライチェーンの“見えない回路”まで含む実効的対策と違法化・重罰化を主張。
- 権利侵害・乱用の歯止め
- 最大の懸念は“国内の異論封じ”に流用されること。
- 米国:議会の特別委員会監督+FISA的な特別裁判所で令状審査。
- 英国:内閣・司法の二重チェック+議会監督。
- 日本でも強力な監視・審査装置(独立性の高い第三者監督、厳格な令状主義、対象限定、時限条項等)が不可欠。
出演者の立場(ざっくり)
- 竹田恒泰さん:
- 日本は実質“だだ漏れ”側面がある。重罰化とスパイ行為の明確化、外国代理人登録など“最後のピース”を急ぐべき。
- 中国の国家情報法を踏まえ、機器・インフラ由来のリスクも違法化+厳罰で抑止。
- 小西ひろゆき議員:
- 現行法での保全は大きく前進しており、「不足の具体」が未提示のままでは新法の必要性は弱い。
- ただし実効性に“本当に欠陥”がある領域は強化に賛成。
- 最大の焦点は乱用防止設計(定義の明確化、監視・審査、権利保護)。
具体例・素材
- 既存法の流れ:破壊活動防止法(1952)→特定秘密保護法(2013)→経済安保推進法(2022)→セキュリティ・クリアランス(2024)。
- 事例言及:海底通信ケーブルの軍事転用疑惑、北朝鮮関連の摘発件数など。
- デバイス・周辺機器(監視カメラ、清掃ロボ、充電器)からの情報漏えい懸念。
合意点
- 外国勢力による情報窃取・影響工作に対し、日本の防御力をさらに高める必要はある。
- 乱用防止と人権・民主主義のバランス設計が不可欠。
- 海外の監督・令状モデル(米英)から学ぶべき。
相違点
- 「足りない具体」の提示と、それを埋める“最後のピース”の実体(重罰化、何を犯罪化するか、登録制度の範囲)。
- 「日本はスパイ天国か」評価の温度差。
- 技術・物品起点のリスクへの対処の深度。
政策オプション(番組議論から読み取れる設計論)
- 定義:スパイ行為の限定列挙(対象=安全保障・外交・重要インフラ・経済安保の“特定領域”)。
- 刑罰:重大結果や有事誘発リスクに応じた段階的加重(長期刑〜無期)。
- 外国代理人登録:活動の透明化、資金・指示系統の申告義務、違反時の制裁。
- サプライチェーン安全保障:政府・重要施設での調達基準・禁止指定・認証制度、検査権限。
- 監督と救済:独立監督機関、国会監督、令状審査(特別裁判所的枠組み)、時限条項・再評価規定、恣意抑止のための厳格な運用指針と公開統計。
まとめ(番組の結論イメージ)
- “必要ならやるべき”は一致。ただし、
- 何が足りないのかの具体化、
- スパイの定義と対象範囲の明確化、
- 重罰化を含む抑止強化と、
- 乱用防止の監督・令状・透明性装置、
この4点セットを丁寧に設計することが条件。- 海外モデルを参照しつつ、日本の技術・調達事情(機器リスク)に即した“守りの仕組み+越権防止”の二重設計が鍵。
国際標準の法制度研究など、スパイ防止法に関する調査研究を要するという点については、冒頭に紹介した救国シンクタンクの動画での論点と共通するように思います。
中国やロシアにおいて、スパイ防止法は人権侵害に悪用されている点からは難しい法律です。かといってこのままなくていい、とは言えない以上、調査が進むことを期待します。