今回は食料自給率について。
結論から言うと、本当に必要なのは「自由貿易体制」と輸入の安定確保、ということです。
これまで何度か当ブログでも扱ってきました。
今回は減税TVでの渡瀬裕哉さんの見解を紹介します。
要約は以下の通り。
この動画のポイントを、流れに沿って詳しめに整理します。
1.「食料安全保障」は単なる予算取りキーワード化している
- 首相の初心表明演説で、「5番目の大きなテーマ」として食料安全保障が掲げられたが、
中身は「地域活性化」「稼げる農林水産業」「植物工場・AI解析などの先端技術」「輸出促進」といったお決まりワードを並べた程度だと批判。- 農水省は今、「安全保障に絡めれば予算が取れる」と見て、「食料安全保障」を口実にした予算よこせキャンペーンを展開している、という見立て。
- 「輸出を拡大すること」と「食料安全保障を高めること」は、本来別問題なのに、
そこをごちゃまぜにしている点を問題視している。
2.コメ政策=ソ連型の統制経済で、消費者は無視されている
- 農水大臣(農水官僚上がり)が「農家に安心感を与えた」と評価されているが、
中身は**「米価を上げて農家を守る」=農家優先・消費者軽視**の政策だと指摘。- 消費者には「お米を配ります」と言うが、その財源は結局税金=大多数の消費者が払っているお金であり、
「自分の払った税金が回ってくるだけ。だったら減税して、米以外も自由に買わせろ」という主張。- 2026年産米の生産目安を対前年比2%減の711万トンと政府が決めていることを取り上げ、
「こんなふうに政府が生産量を決めるのはまさにソ連のソフホーズ・コルホーズ型の統制だ」と強く批判。- 本来は「消費者がどれだけ米を食べたいか」「いくらなら買いたいか」という需要に応じて生産が決まるべきなのに、
農家が向いているのはマーケットではなく「農林水産省の顔」になってしまっていると指摘。
3.政治と生産者団体の癒着構造
- 政治の世界で強いのは常に**生産者団体(業界団体)**であり、消費者ではない。
- 生産者団体は票もカネ(政治献金・補助金の利権)も集中している。
- そのため政治家は「消費者」ではなく「生産者団体」と組むインセンティブが強い。
- 農業政策もその典型で、農水省+農家団体+政治家が一体となり、
「消費者の利益」はほとんど考慮されていないと批判。- 農水省は口では「マーケット重視」「需要に応じた生産」と言いながら、
実際には生産調整、予算要求の増額など、市場原理を無視した統制を続けていると指摘。
4.食料自給率という指標のインチキさ
- 「コメの自給率はほぼ100%」だが、これは
- 関税や輸入枠で外国産米の輸入を実質的に止めているからであり、
- 100%に近づくほど「保護・統制が強い」という意味で、むしろおかしい状態だと説明。
- よく言われる「カロリーベース自給率30〜40%で危ない」という議論も、
- そもそもカロリーベース自給率を使っている国はほぼ日本だけで、
- 指標として国際的にみて特殊かつ意味が薄いと批判。
- 戦後直後の**1946年には自給率88%**だったが、みんな「飢えていた」時期。
一方、現在は自給率39%でも、国内には食料があふれている。
- つまり、自給率が高い=国民が食べられる、という話では全くない。
- 「自給率」という数字を安全保障の物差しとしてありがたがるのは誤りだと断じている。
5.本当に必要なのは「自由貿易体制」と輸入の安定確保
- 農業生産には、
- 肥料
- 燃料・エネルギー
- 機械
- 技能実習生・特定技能などの外国人労働力
といった多くの輸入資源が不可欠。- 日本国内だけに頼って農業を回すのは現実的に不可能であり、
「食料自給率100%」を目指すような発想は、かえって飢餓を招きかねないと警告。- 真の食料安全保障とは、
- 食料そのものの輸入だけでなく、
- 農産物を生産するための資源を安定的に輸入できる体制を守ること。
- したがって、日本にとって一番重要なのは、
- 自由貿易体制を維持し、国際的な資源調達ルートを確保することであり、
- 「自給率を上げろ」という議論よりも、
「どうやって自由貿易体制を守るか」を考えるべきだと主張。
6.農業現場の現実:高齢化と農地集約の課題
- 日本の農業従事者の多くは65歳以上の高齢者であり、
現場は「引退待ち」のような状態になっていると説明。- その中で、実務レベルでは、
- 大規模化を目指す農業法人などが
- 毎朝高齢農家の家を訪ねて関係をつくり
- 「お前にならこの土地を任せてもいい」と言われるよう、地道な営業と信頼づくりを続けている。
- 政策として本当に必要なのは、
- 農地の集約・機械化を進めること
- 高齢農家が納得して引退・土地移転できる仕組みをつくること
- そして今後は労働力の中心になるであろう外国人労働者をどう位置付けるかという現実的な議論だ、と強調。
- こうした地に足のついた農政こそが、「強い輸出産業としての農業」をつくる上でも重要だとまとめている。
7.結論:自給率神話を捨て、農水省の「社会主義的統制」をやめよ
- 動画のまとめとして、
- 「食料自給率が大事」という議論は本質を外しており、
- 大事なのは自由貿易を守り、輸入を安定させることだと再三強調。
- そのうえで、
- 農水省のような社会主義的な統制政策(生産調整・保護・補助金漬け)をやめること
- 農家が政府ではなく消費者とマーケットを見て動く環境を整えること
- 長期的な視点で、農業を「今だけ・自分だけ」ではなく、持続可能な産業として設計し直すこと
を提案している。- 最後に、農業は「国家百年の計」と言いながら、官僚は3年ごとに異動し、
実際は毎年の予算を取ることしか考えていないと痛烈に批判し、
「自給率の数字遊びではなく、自由貿易と現実的な農業構造改革を議論すべきだ」と締めくくっている。
食料自給率という言葉を用いた政策議論の際、大事なのは自由貿易を守り、輸入を安定させること を改めて確認しておきたいと思います。