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2017年12月6日 最高裁判決 受信契約締結承諾等請求事件 その3 木内道祥裁判官の反対意見

NHK党(旧NHKから国民を守る党、現在は「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」)は、時代遅れのNHK受信料制度を改めるべく日々活動しております。最終的な目標は、NHKのスクランブル放送を実現することであり、そのためには放送法の改正が必要と考えます。これまで70年以上続いてきたこの受信料制度を改革することは、多くの既得権益層からの抵抗があるために、容易ではありませんが、少しずつ世論を動かしていきたいものです。

さて、そんなNHK党にとって、NHKに関連する裁判は重要です。特に重要な判例はその内容を押さえておく必要があります。

先日、2014年の判例を紹介しました。

さらに2017年12月の判例も紹介しました。

放送法64条1項が憲法違反になるかどうかについては、憲法違反にならない、ということで決着がついてしまいました。

N国党台頭で話題沸騰する「NHK受信料」の現実 なぜ今「NHKをぶっ壊す」が票を集めるのか 東洋経済 田上 嘉一 : 弁護士、弁護士ドットコム取締役 2019/08/10 8:20

民法には、両当事者双方の合意があって契約が成立するという、契約自由の原則があるが、当事者の意思なく契約を成立させる放送法64条1項の規定は、この原則の例外となる。そこで、こうした契約締結を強制するような条項がそもそも憲法に反していないのか。こうした問題を正面から議論したのが平成29(2017)年の最高裁判決だった。

また、2017年12月の裁判での鬼丸かおる裁判官の補足意見を紹介しました。

鬼丸かおる裁判官の補足意見の一部を紹介します。

任意に受信契約が締結される場合は別であるが,受信契約の締結が強制される場合には,締結義務を負う者を明文で特定していないことには問題があろう。家族のあり方や居住態様が多様化している今日,世帯が受信契約の単位であるとの規定は,直ちに1戸の家屋に所在する誰かを締結義務者であると確定することにならない場合もあると思われる。受信契約の締結を求められる側からみても,その義務を負う者が法令上一義的に特定できなければ,締結義務を負っていることの自覚も困難であろう。

この補足意見で指摘された点は、今後の記事でも取り上げていきたいと思います。

今回は2017年12月の裁判に関してさらに別の裁判官の意見を取り上げていこうと思います。

以下、最高裁の情報を記載していきます。

最高裁判所判例集 事件名 受信契約締結承諾等請求事件

判示事項

1 放送法64条1項の意義
2 放送法64条1項の合憲性
3 日本放送協会の放送の受信についての契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合に発生する受信料債権の範囲
4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権の消滅時効の起算点

裁判要旨

1 放送法64条1項は,日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に対しその放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの上記契約の申込みに対して上記の者が承諾をしない場合には,日本放送協会がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって上記契約が成立する。
2 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の,日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない。
3 日本放送協会の放送の受信についての契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項を含む上記契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。
4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(上記契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,上記契約成立時から進行する。
(1につき補足意見,1,2につき補足意見,1,3につき補足意見,1~4につき反対意見がある。)

参照法条

(1~4につき) 放送法1条,放送法第3章 日本放送協会,放送法64条1項
(1,3につき) 民法414条2項ただし書,民事執行法174条1項本文
(2につき) 憲法13条,憲法21条,憲法29条
(4につき) 民法166条1項

↑の民法166条と414条は、2017年の時点でのものであり、現在では改正されていることにご注意ください。ちなみに、民法は2020年4月1日より改正民法が施行されています。

判決文全文はこちら↓。

全文

今回とりあげるのは、この裁判に関わった木内道祥裁判官の反対意見です。長いですが、せっかくなので全文を以下に掲載しておきます。

掲載の前に私の感想を端的に述べておきます。

NHKの放送をスクランブル化(受信料を払っている者のみが放送を見ることができるようにすること)すれば、問題は概ね解決するように思います。スクランブル化されていないがゆえに数多くの裁判などで多くの人間があーだこーだ考える労力が本当に無駄に思えてなりません。

以上、私の端的(過ぎる?)感想でした。

以下、木内裁判官の反対意見です。

裁判官木内道祥の反対意見は,次のとおりである。

私は,放送法64条1項が定める契約締結義務については,多数意見と異なり,意思表示を命ずる判決を求めることのできる性質のものではないと解する。以下,その理由を述べる。

1 意思表示を命ずる判決をなしうる要件
(1) 意思表示の内容の特定
判決によって意思表示をすべきことを債務者に命ずるには,その意思表示の内容が特定されていることを要する。契約の承諾を命ずる判決が確定すると,承諾の意思表示がなされたものとみなされて契約が成立することになるが,1回の履行で終わらない継続的な契約においては,承諾を命じられた債務者は判決によってその契約関係に入っていくのであるから,承諾によって成立する契約の内容が特定していないまま,判決が債務者の意思表示の代行をなしうるものではない。
(2) 意思表示の効力発生時期
判決が命じた意思表示の効力発生時期が判決の確定時であることは,民事執行法174条が定めており,これと異なる効力発生時期を意思表示を命ずる判決に求めることはできない。

2 放送受信規約の定める受信契約の内容
放送法は受信契約の内容を定めておらず,原告の定める放送受信規約がその内容を定めている。そのことの当否は別として,放送受信規約の定める受信契約の内容は,次のようなものである。
(1) 受信契約の種別と受信料(第1条第1項,第5条)
受信契約には,3つの種別があり,1の受信契約につき,その種別ごとの受信料が定められている。
(2) 受信契約の単位(第2条)
受信設備が設置されるのが住居であれば,世帯が契約単位であり,1世帯で複数住居なら,住居ごとが単位となる。世帯とは,住居および生計をともにする者の集まり,または,独立して住居もしくは生計を維持する単身者である。
事務所等の住居以外の場所に設置される受信設備については,設置場所が契約単位であり,設置場所の単位は,部屋,自動車などである。
同一世帯の1の住居に受信設備が何台あっても,契約は1,受信料も1であり,住居以外の場所では1の設置場所に受信設備が何台あっても,契約は1,受信料も1である。
(3) 受信契約書の提出義務(第3条)
受信設備を設置した者は,遅滞なく,①設置者の氏名及び住所,②設置の日,③受信契約の種別,④受信できる放送の種類及び受信設備の数などを記載した受信契約書を原告に提出しなければならない。
(4) 受信契約の成立(第4条第1項)
受信契約は受信設備の設置の日に成立するものとする。
(5) 受信契約の種別の変更(第4条第2項)
受信契約の種別の変更については,受信設備の設置による変更は設置の日に,受信設備の廃止による変更は,その旨を記載した受信契約書の提出の日に,原告の確認を条件として,変更される。
(6) 受信料支払義務の始期と終期(第5条第1項)
受信契約者は,受信設備の設置の月から解約となった月の前月まで,受信料を支払わなければならない。
(7) 受信契約の解約(第9条第1項,第2項)
受信設備を廃止すると,受信契約者は,その旨の届出をしなければならない。原告が廃止を確認できると,届出があった日に解約されたものとする。

3 放送受信規約の定めと意思表示を命ずる判決をなしうる要件の関係
(1) 放送受信規約による契約内容の特定
受信契約の承諾を命ずる判決には,承諾の対象となる契約の内容の特定が必要なところ,判決主文において明示するか否かを問わず,判決の時点における放送受信規約を内容とする受信契約の承諾を命ずることになる。そこで,放送受信規約の定めが,それ自体として,契約内容を特定するものとなっているのか否かが問題となる。
(2) 放送受信規約による契約内容
放送受信規約は,受信設備設置者が設置後遅滞なく前記2(3)の事項が記載され
た受信契約書を提出して受信契約が成立することを前提としている。そのようにして受信契約が締結される限り,受信契約が受信設備設置時に遡って成立すると合意することは可能であり,1世帯に複数の受信設備があり,受信設備の種類が異なっていても,提出された受信契約書の記載によって,契約主体,契約の種別を特定することは可能である。
他方,以下の①~③で示されるとおり,判決によって受信契約を成立させようとしても,契約成立時点を受信設備設置時に遡及させること,また,判決が承諾を命ずるのに必要とされる契約内容(契約主体,契約の種別等)の特定を行うことはできず,受信設備を廃止した受信設備設置者に適切な対応をすることも不可能である。
① 契約の成立時点と受信料支払義務の始点
意思表示を命ずる判決によって意思表示が効力を生ずるのは,民事執行法174条1項により,その判決の確定時と定められている。承諾を命ずる判決は過去の時点における承諾を命ずることはできないのであり,承諾が効力を生じ契約が成立するのは判決の確定時である。したがって,放送受信規約第4条第1項にいう受信設備設置の時点での受信契約の成立はありえない。
受信料債権は定期給付債権である(最高裁平成25年(受)第2024号同26年9月5日第二小法廷判決・裁判集民事247号159頁)が,定期給付債権としての受信料債権を生ぜしめる定期金債権としての受信料債権は,受信契約によって生じ,その発生時点は判決の確定時である。受信契約が成立していなければ定期金債権としての受信料債権は存在せず,支分権としての受信料債権も生じない。したがって,放送受信規約第5条にいう受信設備の設置の月からの受信料支払義務の負担はありえない。
② 契約の主体と受信契約の種別の変更
同一の世帯に夫婦と子がいる場合,放送受信規約第2条は,住居が1である限
り,受信設備が複数設置されても受信契約は1とするが,夫婦と子のそれぞれが受信設備を設置しあるいは廃止すると,判決が承諾を命ずるべき者が誰なのかは,不明である。それぞれが設置した受信設備の種類が異なる場合,判決が承諾を命ずる契約の種別が何なのかも,不明である。
③ 受信設備を廃止した受信設備設置者との関係
承諾を命ずる判決は,過去の時点における承諾を命ずることはできないのであるから,現時点で契約締結義務を負っていない者に対して承諾を命ずることはできない。受信契約を締結している受信設備設置者でも,受信設備を廃止してその届出をすれば,届出時点で受信契約は解約となり契約が終了する(放送受信規約第9条)ことと対比すると,既に受信設備を廃止した受信設備設置者が廃止の後の受信料支払義務を負うことはありえない。仮に,既に受信設備を廃止した受信設備設置者に対して判決が承諾を命ずるとすれば,受信設備の設置の時点からその廃止の時点までという過去の一定の期間に存在するべきであった受信契約の承諾を命ずることになる。これは,過去の事実を判決が創作するに等しく,到底,判決がなしうることではない。
原告が受信設備設置者に対して承諾を求める訴訟を提起しても,口頭弁論終結の前に受信設備の廃止がなされると判決によって承諾を命ずることはできず,訴訟は受信設備の廃止によって無意味となるおそれがある。

4 財源としての受信料の必要性と放送法64条の関係
放送法の制定当時においても民事訴訟法736条が現行の民事執行法174条と同様の意思表示を命ずる判決を定めていたのであるから,放送法の制定にあたって,同法に定める受信契約の締結義務を,意思表示を命ずる判決によって受信契約が成立するものとし,それによって受信料を確保するものとする動機付けは存したかもしれないが,そのことと,実際に制定された放送法の定めが,受信契約の締結を判決により強制しうるものとされているか否かは,別問題である。
受信契約の内容は放送受信規約によって定められ,その規約による受信契約の条項は電波監理審議会の諮問を経た総務大臣の認可を経ているのであるから,放送受信規約は放送法64条1項の趣旨を具体化したものとなっていると解されるが,その規約の内容が,判決によって承諾を命ずることができるものにはなっておらず,かえって,任意の契約締結を前提とするものとなっていることは,前項で述べたとおりであり,放送法64条1項は判決により受信契約の承諾を命じうる義務の定め方をしていないのである。

5 判決によって成立する受信契約が発生させる受信料債権の範囲
多数意見は,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する理由を,受信契約の締結を速やかに行った者と遅延した者の間の公平性に求めるが,これは,受信契約が任意に締結される限り受信料支払義務の始点を受信設備設置の月からとすることの合理性の理由にはなるものの,放送法の定めが判決が承諾を命じうる要件を備えたものとなっていることの理由になるものではない。
契約の成立時を遡及させることができない以上,判決が契約前の時期の受信料の支払義務を生じさせるとすれば,それは,承諾の意思表示を命ずるのではなく義務負担を命ずることになる。これは,放送法が契約締結の義務を定めたものではあるが受信料支払義務を定めたものではないことに矛盾するものである。

6 受信料債権の消滅時効の起算点
多数意見は,判決により成立した受信契約による受信料債権の消滅時効の起算点を判決確定による受信契約成立時とし,任意の受信契約の締結に応じず,判決により承諾を命じられた者は受信料債権が時効消滅する余地がないものであってもやむを得ないとする。
受信設備設置者は,多数意見のいうように,受信契約の締結義務を負いながらそれを履行していない者であるが,不法行為による損害賠償義務であっても行為時から20年の経過により,債権者の知不知にかかわらず消滅し,不当利得による返還義務であっても発生から10年の経過により,債権者の知不知にかかわらず消滅することと比較すると,およそ消滅時効により消滅することのない債務を負担するべき理由はない。

7 放送法の契約締結義務の私法的意味
放送法64条1項の定める受信契約の締結義務が判決により強制できないものであることは,なんら法的効力を有しないということではない。
受信契約により生ずる受信料が原告の運営を支える財源であり,これが,原告について定める放送法の趣旨に由来することから契約締結義務が定められているのであるから,受信設備を設置する者に受信契約の締結義務が課せられていることは,「受信契約を締結せずに受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態が生じない」ことを原告の利益として法が認めているのであり,この原告の利益は「法律上保護される利益」(民法709条)ということができる。受信契約の締結なく受信設備を設置することは,この利益を侵害することになり,それに故意過失があれば,不法行為が成立し,それによって原告に生ずる損害については,受信設備設置者に損害賠償責任が認められると解される。
同様に「受信設備を設置し原告の放送を受信しうる状態となること」は,受信設備設置者にとって,原告の役務による利益であり,受信契約という法律上の原因を欠くものである。それによって原告に及ぼされる損失については,受信設備設置者の不当利得返還義務が認められると解される。
(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 岡部喜代子 裁判官 小貫芳信 裁判官
鬼丸かおる 裁判官 木内道祥 裁判官 山本庸幸 裁判官 山崎敏充 裁判官
池上政幸 裁判官 大谷直人 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官
菅野博之 裁判官 山口 厚 裁判官 戸倉三郎 裁判官 林 景一)

今後も引き続き、NHK受信料裁判のうち、重要なものを記事として取り上げていきます。

ところで、今後のNHK党の選挙方針である「諸派党構想」に関する書籍が発売予定となりました。NHK党をよく取材いただいているライターさん(立花孝志かく闘えり、のライターさん)が書かれたものです。もしよければ書店や図書館などで手に取ってみてください。

書籍「立花孝志かく闘えり」の紹介です

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