今回は株式市場で企業評価の基本的な指標であるPER、PBR、ROEについて。
普段、株式投資をされない方は気にする必要のない数字ではありますが…。
田端信太郎さんの動画を紹介します。※要約を示しますが、動画での解説を見る方が理解は進むと思います。
要約は以下の通り。
超ざっくり結論
- **株価=利益 × 評価(PER)**で決まる。
- PERは「その会社の利益の何年分を前払いして買ってるか」の目安。
- 同じ“黒字”でも業種や金利でPERの「普通」が違う。
- 迷ったらインデックス積立。個別をやるなら、上がる理由を利益かPERかで言語化する。
まずは“ものさし”
- 時価総額=株価×発行株数
→ 株価だけで「高い/安い」は決められない。会社の大きさは時価総額で見る。- PER(株価収益率)=株価 ÷ EPS(1株利益)=時価総額 ÷ 年間利益
→ 回収年数の感覚:PER 10倍=10年で元が取れるイメージ。例
- トヨタ:PER 20倍、日産:PER 30倍
→ 同じ“黒字”前提ならトヨタの方が割安に見える(※単純比較は後述の注意あり)。
何で上がるの?(2つのルート)
- 利益(E)が増える:新製品ヒット、円安追い風、コスト改善 など
- PER(評価)が上がる:主に金利低下や将来の確度UPで“割引率↓→評価↑”
個別株を買うときは、自分はどっちが効くと思って買うのかを必ず言語化。
金利との関係(超重要)
- 長期金利↑ → PER↓(株の相対魅力が落ちる)
- 金利は利益にも効く:
- 不動産・借入多い企業:金利↑で利益↓
- 銀行:金利↑で利ざや拡大→利益↑
→ 金利はPERだけじゃなく利益も動かすことがある。
業種で“普通のPER”が違う
- ディフェンシブ(日用品・医薬・オムツ):業績が安定 → 高めPERでも許容されやすい
- 景気敏感(海運・鉄鋼・高級品・ゲーム):ブレが大 → PERも上下しやすい
だから、業種違いのPERを横並び比較するのは危険。
初心者の落とし穴
- 赤字企業はPERが出ない/薄利だとPERが異常に高く見えて判断不能。
→ はじめは黒字常態の会社から。- 「PERが低い=必ずお得」ではない
→ 低い理由(利益の持続性不安など)があることが多い。
バブル比較の感覚
- 1989年バブル時:日経平均のPERは約50倍。
- 今はPER水準が当時より低い=利益の裏付けが相対的に強い、という見方ができる(短期の上下は別)。
実務の目安(ざっくり)
- PERの“よくある帯”:10〜20倍(金利次第で上下)
- 10倍割れは「安すぎ」サインのこともあるが、**ワナ(利益の持続性なし)**の可能性も。
期待と決算(価格は“期待差”で動く)
- 株価は毎日動くが、会社が公式に利益を出すのは四半期に一度。
- **結果が良くても“期待より低い”**と下がる、逆も然り。
→ “期待とのギャップ”が価格を動かすゲーム。
チェックリスト(個別株を触る前に)
- その会社、黒字が続いてる?(赤字は避ける)
- 業種の文脈は?(ディフェンシブ/景気敏感)
- 今のPERは業種平均や過去平均と比べてどう?
- 自分の仮説はEが上がる?それともPERが上がる?
- 金利の方向感は?(自分の仮説に追い風/逆風?)
迷ったらこれ
- インデックス積立(S&P500/オルカン/TOPIX等)を土台に。
- 個別をやるなら、**「利益 or PER どっちで上がるか」**を書き出してから買う。
- それが言えない銘柄は、“たまたま上がっただけ”の危険信号。
必要なら、気になる銘柄を挙げてもらえれば、この型で一緒に分解します!
別の動画。
要約は以下の通り。
今日のテーマ
- 3/27は「権利付き最終日」:この日までに株を保有していると期末配当がもらえる日。
- 日本企業の株主還元(配当+自社株買い)が急拡大しており、それが株高の追い風に。
まず配当の現在地
- 日本全体の配当総額は約16兆円(10年前の6〜7兆円から倍増)。
- 個人にも約3兆円流入。
- 例)株価4,000円・年間配当100円 ⇒ 利回り2.5%。
- 配当が増えれば、同じ利回り水準なら理論株価も上がる(300円→900円に増配なら、1万円→3万円に上がって不思議じゃない、という考え方)。
PBR(株価純資産倍率)とは?なぜいま熱い?
- 定義:PBR=株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)。
- 直感:会社を1株ぶんに割ったとき、「中身(純資産)」に対して株価が高いか低いか。
- たとえば、現金100億円しかない会社の時価総額が80億円(PBR0.8)なら、
“8,000円の財布に1万円入ってる”状態=理屈の上では解散すれば儲かる。- だからPBR1倍割れは原則アウトという空気に。東京証券取引所は1倍割れ企業に改善計画の開示を要請。
何が起きている?(アクティビストと資産の“棚卸し”)
- **アクティビスト(物言う株主)**が、眠っている資産に光を当てる。
- 例① 京成電鉄:保有する**オリエンタルランド株(TDR運営)**が巨額で、
「鉄道に関係薄い資産を売って株主還元を」と主張 → 売却割合が小さく市場は失望、などの攻防。- 例② 札幌ホールディングス:本業のビールより恵比寿ガーデンプレイス等の不動産が稼ぐ。
「不動産を売って本業に集中 or 還元せよ」という圧力がかかりやすい。- 背景:持ち合い株の解体、社外取締役の拡充、当局・取引所の圧力で、
企業が「余剰資産の売却・増配・自社株買い」に動きやすくなった。ただしPBRは“機械的”に使うと危険
- 簿価と時価のズレ:不動産などは帳簿より時価が高いことが多い。
- 本業との相性:資産を売れば短期利益は出るが、長期の競争力が落ちる可能性も。
- コングロマリット・ディスカウント:事業の“詰め合わせ”は割安に見られがち。
→ スピンオフや資産売却が評価されやすい。PER vs PBR(超ざっくり)
- PER=「毎年いくら稼ぐ会社か?」(フローの視点=利益)
- PBR=「会社の中身はいくらか?」(ストックの視点=純資産)
- どちらも**低いほど割安“に見える”**が、低い理由(成長性・資産の質・産業構造)を必ず確認。
これからの肝:ROEとのつながり
- **ROE(自己資本利益率)**が高い=少ない資本で大きく稼ぐ会社。
- PBRを上げたいなら、結局ROEを上げるのが王道(配当や自社株買いで資本を絞る+稼ぐ力を上げる)。
- バフェットも重視。目安として日本は8〜10%が“合格ライン”、一流は15%超。
投資での使い方(実践チェック)
- 権利付き最終日を把握(配当狙いの売買は逆日歩や株価調整も意識)。
- PBR1倍割れは“割安サイン”になり得るが、資産の質と**収益力(ROE)**を必ず確認。
- 資産の棚卸し(売却・スピンオフ)余地や、自社株買い・増配の姿勢をIRでチェック。
- PERは業種平均・自社過去と比較、金利動向も頭に入れる。
- 結論:配当・自社株買いが増えやすい地合い。ただし「PBR低い=買い」ではなく、なぜ低いかを見極める。
また別の動画。
要約は以下の通り。
今日の結論
- **ROE(自己資本利益率)**は「株主のお金(自己資本)でどれだけ利益を出したか」。
- 企業が外に約束しやすい“本命KPI”。PBRやPERよりも経営目標に向いてる。
- 3兄弟の関係は超重要:PBR = PER × ROE(常に成り立つ算数の式)。
基本のき:用語の意味
- ROE = 当期利益 ÷ 株主資本(=自己資本)
例)自己資本500万で利益50万 → ROE=10%- PER = 株価 ÷ 1株利益(EPS)=「何年分の利益で買われてるか」
- PBR = 株価 ÷ 1株純資産(BPS)=「会社の中身(純資産)に対して株価が高いか低いか」
数式のつながり
EPS/BPS = ROE(利益÷純資産)→ 置き換えると PBR = PER × ROE
ROEが大事な理由(経営・投資の両面)
- 会社はPERを直接コントロールできない(株価は市場が決める)。
- でも利益(E)と資本の使い方は自分で決められる → ROEは上げられる。
- 取引所・投資家の視線:PBRを上げたければ、結局ROEを上げよが王道。
目安感
- 日本企業の平均:8〜10%が合格ライン(長期の株主資本コストの感覚値)。
- 一流は15%超も。業種で差はある。
具体例で腑に落とす
- 同じ「売上1000万・利益50万」のレンタカー会社でも…
- 自己資本500万で回す → ROE=10%
- 自己資本100万+借入900万で回す → ROE=50%
→ 少ない元手で稼ぐほどROEは高い(=資本効率が良い)。ただし注意
- 借入(レバレッジ)でROEは“数字だけ”上げられる。やりすぎるとショック時に脆い。
- **ROA(総資産利益率)**はビジネスそのものの稼ぐ力。
- 借入でROEが上がっても、ROAは変わらない(構造が強くなったわけではない)。
事例のヒント
- ZOZOのROEが極端に高い理由:在庫を“預かり”に近い形で持ち、運転資金=資本を膨らませない仕組み(軽いBS)。
- コメダのROEが高い理由:**FC(フランチャイズ)**中心で重い資産を本部に載せない。
- 鉄道・重厚長大型:資産が重くROA/ROEは低くなりがち(規制・インフラ特性)。
現場でROEを上げるには?
利益を増やす or 資本を減らす/軽くする(ただし健全に)の両輪。
- 利益UP(Eを上げる)
- 粗利改善、値付け見直し、ムダ削減(固定費・原価・在庫)。
- 繁忙期だけは**借りる(レンタル/シェア)**で対応し、資産を買い増さない。
- 売掛サイト短縮(例:締め後3か月→翌月払い)=運転資金圧縮。
- 資本効率UP(分母を抑える)
- 不要資産の売却、クラウド活用(サーバー“買わない”)、FC/外部委託の活用。
- 余剰資本は配当・自社株買いで戻す(行き過ぎたレバレッジはNG)。
- M&A/スピンオフで“重い事業”と“軽い事業”を切り分ける。
実務ワザ
- 営業で入金サイト短縮を勝ち取るだけでもROE改善に効く。
- 決算セールは利益率を落としすぎない(Eが削れると逆効果)。
投資家目線での使い方
- PBR1倍割れはチャンス“になり得る”が、
①資産の質/時価と簿価の差、②ROEの低さの理由、③改善策(資産売却・自社株買い等)の現実味をセットで確認。- PER×ROEでPBRを分解して、何が低い原因かを突き止める。
- **ROEの上げ方の“質”**を見抜く(レバレッジ頼みか、事業の稼ぐ力か)。
まとめ(覚えておけばOK)
- **ROEは「少ない元手でどれだけ儲けるか」**の指標。
- 企業も投資家も、PBRを上げたい=ROEを上げるに行き着く。
- PBR = PER × ROEを常に頭の片隅に。
- 高ROEは良いが、レバレッジ過多は危険。ROAも合わせて見る。
今回紹介した動画内容から敢えて教訓を示すと、以下の通り。※伝わりにくいかも。
結論:会社の“おサイフの使い方(ROE)”が上手いほど、株価の評価(PBR)は上がりやすい。
- ROE=少ない元手でドンだけ稼げるか。
同じ利益でも、少ない資本で稼げる会社ほど“効率が良い会社”として高く評価される。- PBRはその評価の表れ。
数式で言うと PBR=PER×ROE。ROEが上がれば、PBR(=割安/割高の物差し)も押し上げられやすい。- 何をすればROEは上がる?(超ざっくり)
- 利益を増やす(売上↑・コスト↓・値上げ・高粗利商品へ)
- ムダな資産を減らす(遊休不動産売却、在庫や現金の持ち過ぎをやめる、自社株買い等)
- 借りられる所は賢く借りる(安全範囲でレバレッジ活用)
※“レバレッジやり過ぎ”は事故のもと。バランス大事。- たとえ話
1万円入った財布を8,000円で買えたら得だよね(=PBR1倍割れ)。
でも本質は“その財布にどうお金を増やして戻すか”(=ROE)。ここが上手い会社が、長い目で株価も評価も上がる。