今回はレイテ沖海戦です。
レイテ沖海戦(1944年10月23日~26日)は、第二次世界大戦中の太平洋戦争で行われた、
史上最大規模の海戦の一つです。以下、概要を整理します。
1. 背景
- 1944年、米軍はフィリピン奪還作戦を開始し、レイテ島に上陸(10月20日)。
- 日本はフィリピン喪失を防ぐため、残存艦隊を総動員する「捷一号作戦」を発動。
- 目的は米軍輸送船団と上陸部隊の撃滅。
2. 戦闘の構成
レイテ沖海戦は複数の海戦が連続して行われた総称で、主に4つの戦場に分かれます。
- シブヤン海海戦(10月24日)
- 栗田健男中将率いる主力艦隊が米機動部隊の空襲を受け、戦艦「武蔵」沈没。
- スリガオ海峡海戦(10月25日未明)
- 西村祥治中将の艦隊が米第7艦隊の待ち伏せを受け、全滅。
- 世界最後の戦艦同士の砲撃戦。
- サマール沖海戦(10月25日)
- 栗田艦隊が米護衛空母群を急襲。小型艦の米艦隊が必死の反撃で撃退(「ティーキャップの奇跡」)。
- シブヤン沖・カミカゼ初出撃
- 日本は特攻作戦を本格化。神風特攻隊が初めて実戦投入される。
3. 結果
- 日本海軍は航空戦力をほぼ喪失し、戦艦・巡洋艦など多くを失う。
- 米軍のフィリピン奪還を阻止できず、以後日本は制海権・制空権を完全に喪失。
- 実質的に日本海軍の組織的海上決戦能力は壊滅。
4. 意義
- 世界史的にも最大規模の艦隊決戦(参加艦艇200隻以上)。
- 太平洋戦争の転換点の一つで、日本の敗戦を決定づけた戦い。
- 神風特攻作戦の象徴的始まり。
チャンネルくららの動画を紹介します。
要約は以下の通り。
この動画の要約をかみ砕くと、レイテ沖海戦を題材に作戦目的の不徹底と統合作戦の欠如を批判的に分析しています。
主なポイントは以下の通りです。
1. 戦略的背景
- 1944年、フィリピンは南方資源(特にインドネシアの石油)の輸送ルート上にあり、死守すべき拠点だった。
- レイテ沖海戦は本来「レイテ島の上陸米軍の補給線を断つ」ことが目的。
- 海戦は「捷一号作戦」の一部で、陸軍支援が本来任務だった。
2. 作戦構想と実行のズレ
- 連合艦隊は補給部隊攻撃を命令したが、現場の栗田艦隊などは「華々しく艦隊決戦で散る」ことを志向。
- 指揮官層に「国益や任務達成」より「艦隊美学」が優先され、目的が形骸化。
- 栗田艦隊は米護衛空母群を圧倒する機会があったが、北方の米機動部隊を追うため反転(有名な“栗田艦隊の謎の反転”)。
- 実際は謎ではなく、上層部も黙認していたという構造的問題。
3. 戦術・統合作戦上の問題
- 海軍は陸軍との連携が極めて不十分で、突入後に陸戦支援や持久戦体制を取る意識が希薄。
- 艦砲射撃で上陸部隊を弱らせる能力も乏しく、突入自体が目的化していた。
- 作戦計画で「何を達成するのか」の擦り合わせがなく、陸軍から見ても意味の薄い行動になった。
- 戦術原則(陣地確保、支援部隊配置など)を海軍は十分理解しておらず、敵艦発見で目標変更する傾向が強い。
4. 作戦経過の概要
- シブヤン海で戦艦「武蔵」が撃沈。
- スリガオ海峡では西村艦隊が全滅。
- 小沢艦隊が囮となり、米主力を北方に誘引。
- サマール沖で護衛空母群と交戦、ここで神風特攻隊が初出撃。
- しかし補給線攻撃には至らず栗田艦隊は反転撤退。
5. 政治的・戦略的含意
- フィリピンは大東亜共栄圏構想で守るべき国だったが、日本は現地民衆の支持を得られず、結果的に反感を招いた。
- 自存自衛か大東亜共栄圏かという国家方針もあいまいになり、戦略の一貫性を欠いた。
- 陸軍も中国大陸の戦力を有効活用せず、国家総力戦の統合が機能していなかった。
6. 総括的教訓
- 目的と手段の乖離が敗因の本質。
- 統合作戦・戦略目的の共有がないと、局地戦の勝敗以前に全体戦略が崩壊する。
- 「突入」や「艦隊決戦」など形式的行動ではなく、実質的成果に直結する行動が必要だった。
この要約をさらに簡略化すると、
レイテ沖海戦は、日本海軍が本来の「補給線遮断」という目的を忘れ、艦隊美学や場当たり的判断に走った結果、陸軍支援にも国家戦略にも寄与しないまま終わった戦いだった。
最大の教訓は「統合作戦の欠如と目的の逸脱」である。
後編の動画もあります。
要約は以下の通り。
この後編動画の要約をかみ砕くと、前編で扱ったレイテ沖海戦の話をさらに広げ、
日本軍組織文化の欠陥・教育の問題・戦略目的の逸脱を深掘りしています。
ポイントは以下の通りです。
1. 神風特攻と海軍美化の偏り
- レイテ沖海戦後に神風特攻隊が初登場し、海軍は「悲壮美」として称賛されがち。
- しかし陸軍は孤立無援で過酷な持久戦を強いられ、評価されにくい。
- 陸軍は兵を一平卒扱いし酷使、海軍は階級を民間地位に準じて与えるなど扱いが異なった。
2. 民間企業(金棒)の衰退と日本軍の共通構造
- 経営拡大期は勢いで拡大、負債を抱えた防御期には戦略欠如で混乱。
- 台湾沖航空戦やミッドウェー後と似ており、戦略なき行動・現場の逸脱が負債(損害)を増やす構造。
- 「どこまで維持できるか」を考えずに版図(戦線)を広げすぎた点が共通。
3. 知性の3段階と組織の硬直(ロバート・キーガン理論)
- 環境順応型(指示待ち・前例踏襲)が8割、自己主導型が10%、自己変容型は1%。
- 日本軍の幹部は環境順応型が多く、現状追随・前例踏襲ばかりで目的を自ら設定できない。
- 試験秀才(丸暗記型)を重用し、自立思考力や変革能力を養わない教育構造が背景。
- 課長や幹部になると勉強をやめる風潮が強く、上位層が組織変革を主導しない。
4. 教育の欠陥とリーダー育成不足
- 問題解決型・アクティブラーニングの不足により、答えのある課題処理に偏重。
- 戦史教育でも政策や戦略目的からの逆算がなく、局地戦経過だけを教える傾向。
- 米海軍大学では戦史を大量に読ませた上で議論し、次戦への応用を考えさせるが、日本は暗記中心。
5. 国家戦略と戦術の断絶
- サイパン陥落後の「絶対国防圏」構想は、地理的・兵站的に無理があり、防衛線設定自体が誤り。
- 大東亜共栄圏という理念は現場に浸透せず、軍は自存自衛路線に回帰。
- 国家政策(例:フィリピン防衛)と現場戦術(レイテ島守備)が結び付かず、結果的に目的逸脱。
6. レイテ沖海戦の本質的評価
- 世界史的には「空母対空母の最後の大規模海戦」だが、日本側の本来任務はレイテ島防衛支援。
- 実際は艦隊決戦に傾倒し、補給線防衛や資源輸送護衛には力を割かず、艦隊を私物化的に運用。
- 所有概念の歪み(公的資産を私物のように扱う)も戦力浪費を招いた。
7. 総括的教訓
- 戦略目的の現場浸透と、目的に沿った兵力運用が欠けていた。
- 組織が変革型知性を持つ人材を育成しなければ、戦争でも経営でも同じ失敗を繰り返す。
- 公的資産(艦隊・兵器)を合理的に運用する資本主義的発想の欠如が敗因の一因。
一言でまとめると、
レイテ沖海戦は、国家戦略と現場戦術の断絶、目的逸脱、組織文化の硬直が複合して敗北した事例であり、日本型組織運営の欠陥を象徴する戦いだった。
前後編からの教訓(の一部)は以下の通り。
教訓(一言)
目的と手段を結び付ける戦略思考と、変化を導ける人材育成がなければ、組織は規模や武器に関わらず敗れる。
補足ポイント
- 戦略目的の共有不足:国家政策・作戦目的が現場に浸透せず、行動が逸脱した。
- 統合作戦の欠如:陸海軍間で目的・役割分担が曖昧なまま作戦を進行。
- 現場判断の私物化:指揮官が公的資産(艦隊)を自己裁量で使い、組織全体の利益を軽視。
- 環境順応型人材の過多:指示待ち・前例踏襲が組織上層部を支配し、変革型人材が不足。
- 教育構造の欠陥:丸暗記型・答えのある問題中心で、自立思考力・創造的判断力を養わない。
- 資源運用の非合理性:兵力や補給を長期的視野で運用せず、戦力を消耗戦に投じた。
- 理念の形骸化:大東亜共栄圏の理念が現場運用や住民対応に反映されず、支持を失った。
コメント
昨年の被害者のシリーズは保存版ですが、大戦では、どれほどの無理をしていたのか、改めて考えるのは、国を司るリーダーとしては不可欠な知識です。
昔話ですから、専門家の先生方にしても、あまりに雑でも良いのでしょうが、つい細かなことで口を挟みたくなるのはやめておきます。
命を捨ててまでしても、公共の福祉という目的の設定がなされていなければ、綺麗事を言おうと悪口を言おうと結果など出るはずはない。手法の問題ですらない。目的に沿った行動。その一言に尽きる。