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有罪が確定するまで実名報道をさせない制度について参議院法制局の見解

先日、私は参議院法制局にとある法案について相談しておりました。

その法案内容はというと、「裁判で有罪が確定するまで逮捕された人の名前を公表してはいけない制度を実現するための法案」です。

「何人(なんびと)も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という、近代法の基本原則である推定無罪の原則を前提として報道されるべきではないか、という問題意識からこのような法案を考えてみました。

bBearさんによる写真ACからの写真

このような法案について、参議院法制局に相談しておりました。

法制局は法案作成において、国会議員のサポートをしてくれるのですが、その際に作成予定の法案の趣旨や意義、その他背景知識など調査したうえで教えていただけるので、私にとって大変勉強になります。

これまで、幾度となく法案作成について法制局に相談してきて、法制局からの回答は、多くの方にとっても勉強になるであろうと思い、このブログでは適宜公表してきております。

こちら↓が法制局に作っていただいた資料です。

裁判で有罪が確定するまで逮捕された人の名前を公表してはいけない制度を実現するための法案(PDF 156KB)

法制局にご指摘いただいたポイントを抜粋します。

御依頼内容については、以下の論点が問題となる。

1 無罪の推定の原則について

⑵ 御依頼の背景に記載されている「推定無罪の原則」は、「被疑者・被告人も、有罪判決を受けるまでは無辜の市民として扱われるべきだという政策的観念」を指すものと考えられるが、これについては、「被疑者・被告人を自由な市民とまったく同一に取り扱うわけにゆかないことは自明の理であり、かれの「自由」は、刑事手続の進展に応じて制約を受ける。したがって、「無罪の推定」は、被疑者・被告人の処遇の原理としてみるときは、その自由をできるだけ尊重し、制約を必要最小限に止めるべきだという――立法者を含めてすべての関係者に対する、むしろ訓示的な――規範にすぎない」との指摘がある。

2 報道の自由について

⑵ 報道の自由と実名報道の関係については、「事件が公共の利害に関する事
実であれば、基本的には犯罪の実名報道は憲法二一条で保障された表現の自由というべきである。それゆえ、実名報道はおよそ違法であるとか、被疑者・被告人の保護のため政府は実名報道を禁止すべきだとはいえないし、また実名報道をすべて禁止することは憲法二一条違反と考えざるをえまい」との指摘がある。

3 知る権利について

⑵ 知る権利と報道の関係については、東京地裁昭和62年11月20日判決は、「一般に犯罪に関する事実(捜査の状況や裁判の状況についてのもので、被疑者・被告人が誰であるかということをも含む。)は社会秩序に関する事柄であるから、公共の利益に関する事実というべきであり、また、報道の自由は国民の知る権利を保障するために重要である」としている。

5 裁判の公開について

⑵ 裁判の公開と実名報道の関係については、「憲法 82 条により裁判が公開されるべきである以上、裁判で知りえた情報もしくは裁判記録から得られた情報を公表することに制裁が加えられるべきではない」との指摘がある。

このように、推定無罪の原則を報道において盲目的に適用するわけにはいかない理由をいくつか挙げていただきました。なるほど、と思います。

ただ一方で、やはり推定無罪を適用すべき報道もあるように思います。報道各局が上手に調整すれば理想的なのでしょうが、なかなかそうはいかないように思います。

法案とするには、もう少し考える必要があるかもしれません。

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コメント

  1. 仲村智 より:

    支持します。
    被害の度合いを天秤にかけて判断すべき。知る権利を行使しなければ誰かが被害を受けるのでなければ、実害を受ける被告の保護が優先されるべきとい切り口ではどうでしょうか?